中2・秋 『ガルちゃん』
舞衣「そういう背景で、あの女性タレントはしょうもない歌手気取りの底辺ユーチューバーと不倫しちゃってたってわけ! 本当にもう、救いようがないわよね! これはもうヤフコメとTwitterで徹底的に叩かれても仕方ないわ!」
結奈「ねえ、ちょっとだけ聞いていい?」
舞衣「どうしたの、結奈?」
結奈「まいちんのそういう情報ってどこから仕入れてるの? 別に女性週刊誌を読んでるってわけでもなさそうだし」
舞衣「ネットよ、ネット。ネットにはね、テレビとかでは放送されない真実が書かれているのよ。デジタルネイティブ世代の女の子なら、ネットで流行の最先端を追っかけるのが正義なんだから」
結奈「女の子がそんなヤフコメで不倫記事を荒らしてるってイメージはないんだけど……」
舞衣「ほら、このサイトを見てよ。サイト名からして、女の子のためのサイトって感じでしょ?」
結奈「『ガールズちゃんねる』……」
舞衣「ここはね、女の子による女の子のための掲示板サイトなの」
結奈「落ち着いてまいちん。普通の女子中学生はガールズちゃんねるなんていうサイトは使わないよ。ガールズちゃんねるなんて名前だけどね、ここには本当の女の子なんていないんだよ? 書き込みの七割が生き遅れの三十路か暇を持て余した主婦で、残りの三割は女の子になりきることで快感を覚えるような変態性癖のおじさんなんだよ?」
舞衣「そんなわけないでしょ! 私と同じ女子中学生とか女子高校生だってたくさんいるもの。そういう子たちとたまに、女の子と同時でしかできないお喋りをしてるんだから」
結奈「女子中学生とか女子高校生の割合ってさ、全体の何割くらい?」
舞衣「え? えーと、だいたい三割くらいかな……」
結奈「……そういうことだよ」
舞衣「そういうことなの!? 私は今まで変態性癖のおじさんたちとムダ毛処理について話してたってこと!?」
結奈「残念ながら」
舞衣「なんでおじさんが腋毛処理とかvioのムダ毛処理に詳しいのよ! おかしいでしょ!!」
結奈「おじさんはネットの至るところ、いや、現実世界のすべてのあらゆるところに潜んでいるんだよ」
舞衣「そんな……。もう誰も信用できない!」
結奈「まいちんの身近な場所に、SNS、至るところにおじさんは潜んでいるんだよ。そして、今こうしている間にも、おじさんは私達の日常を蝕んでいっている……」
舞衣「ということは……もしかして……結奈も」
結奈「私は違うよ! 馬鹿!!」