中1・夏 『高木くん』
舞衣「ねえ、うちのクラスの高木くんって格好良くない?」
結奈「まあ……顔は整ってるよね。大人しくて、中性的というか」
舞衣「体育の授業の後の汗の臭いとか上履きの臭いなんてたまらなくない?」
結奈「え、あ……うん。嗅いだことないからわかんないけど……」
舞衣「上履きが見つからなかった時にさ、クラスの男子に半泣きになりながら上履きの場所を聞いて回っていたときの表情なんてゾクゾクしなかった?」
結奈「念のために聞くけどまいちんがやったんじゃないよね? 臭いフェチまでは擁護できるけど、こそ泥は無理だからね。ねえ。なんで目を逸らすの。ねえってば」
舞衣「もう最近、高木くんのことしか考えられないの。恋しちゃってるみたい」
結奈「まいちんのそれはまた別のものな気もするけど」
舞衣「私ね、野いちごでいつも自作小説を投稿してるの」
結奈「あ、あそこの作者って実在するんだ」
舞衣「大好きだよって耳元でささやきながら高木くんの指を一本一本ゆっくり折っていくっていう夢小説を投稿したんだけどさ、それをクソ読者がクソ運営にチクって垢バンされたの」
結奈「ええ……」
舞衣「本当、クソ運営よね。私の小説の芸術性が理解できないなんて。表現の自由の侵害だわ」
結奈「いや、そういうことじゃなくて」
舞衣「でも、ちゃんと携帯にはバックアップがあるから、今度家のパソコンで印刷して持ってくるね。読んで感想を聞かせて」
結奈「まいちんのことは大好きなんだけど……素人が書いたクソ小説を読むと蕁麻疹が出ちゃうの。ごめんね」
舞衣「そうなんだ。大変だね」
結奈「うん」
舞衣「……」
結奈「……」
舞衣「えっ、ちょっと待って。それって私の小説がクソ小説だって言ってる?」