先生と先輩と俺
普段は休みなんて、家で過ごすだけで、外に出ることは無い俺が今日はめずらしく外出した。
まったく、慣れないことはするものでは無い。
これも、桜先輩が俺を無理やりあの部活に入れたために起こったことだ。俺の本意では無い。
この前の部活の時に桜先輩に新入生歓迎会やるからと言われ、仕方なく来ただけのことだ。
もちろん、学校でやると思っていたのだが、部長である彼女の提案により、近所にある、カラオケボックス(そのカラオケボックスは有名なチェーンの店で、こんなど田舎にもあった。そして、休日ともなれば、近所の高校生で賑わっていた。)で開催されることとなり、現在に至る…。
「高林くん、遅いぞ!」
桜先輩にいきなり怒られた。定時についたつもりだったが。
「すいません。先輩、でも時間ちょうどについたはずですが?」
俺は桜先輩に反論するように言った。
「もぅ、だからこまるのよね。5分前行動で動くって常識じゃない?」
はぁ、なるほど。5分前についていた方が良かったのか。反論はそれ以上できなかった。
「それはそうと、高林くん、もうみんな来てるから、さ、中へはいろ。」
先輩に背中を押されながら、中へ向かう。もう受け付けは済ませてあるようで、先輩に連れられて個室へ向かった。
そこには、顧問であるという先生が座っていた。
「初めまして、顧問の高梁です。」
顧問であるその先生は30代くらいの人で、メガネがつよく印象に残る顔立ちをしていた。
「せんせー、緊張しすぎじゃないですか?」
「いや、だってさ、久しぶりの新入部員じゃないか。今まで、門倉君ひとりだったし、そりゃ、緊張するさ。」
「じゃあ、今日は先生のおごりで。」
「え、そんなこと聞いてないぞ。」
とかなんとか、会話を聞いているうちに、あぁ、この先生も桜先輩に引きずり回されてるんだなと、気の毒に思った。