俺と先生。
気がつくと、俺は母校の校門の前にいた。相変わらずのこのたたずまいには、安心感すら覚える。
俺は、校門をくぐって事務で受け付けを済ませ、あるひとを待った。
「先生、お久しぶりです。」
先生は俺が高校の頃音楽創造部の顧問を務めていた人だ。
「久しぶりだね〜、高林君、元気にしてたかい?」
「はい。先生こそ、元気でなによりです。」
軽く会釈をしながら、会話をかわす。相変わらずこの先生は変わらない。
「ここで話すのもなんだ、音楽室へいかんか?あそこの方が何かと話しやすいだろ。」
先生にそう言われ、音楽室へ向かって歩いた。
「しかし、急になんだね、くるなら連絡よこしてくれればよかったのに。」
歩きながら、そんな話しになった。
「実は、今度結婚することが決まりまして。」
「お、それは、おめでとう、いや、君はしっかりした奴だったし、結婚は早いと思っていたが、ま、驚いたな、どおりで、俺が歳をとってしまったわけだな、」
とかなんとかいいながら、音楽室の鍵を開けてくれる。
「それで、今日ここにきたのは、自分の心にけじめをつけるためなんです。」
先生が用意した、テーブルと椅子に座りながら俺は、先生と話す。
「先生、桜のこと覚えてますか?」
「もちろん覚えているとも…」
先生は少し下にうつむいて答えた。