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5.見えた見えない見ないふり

なんとか説得して俺だけシャワーを浴びた。一緒に入るなんて…ミズキも恥ずかしいだろうし、俺も恥ずかしい。シャワー中、ミズキの入浴シーンをちょっと想像してしまい、シャワーが長引いてしまった。シャワーから出るとミズキはドア前で待っていた。


「わあぁぁあ。ダメだって言っただろう?」


慌てて前を隠すとミズキが首を傾げている。


「ダメ?×○※φ?」


手でバツを作るとなんとなく頷いたけど、なんで?といった顔をしている。パンツを履いてからミズキに尋ねる。


「それとも、ミズキも風呂入りたい?」


「フロ?」


「水浴び…ンユタを浴びるんだよ。」


水をかぶる仕草をしながらミズキに言う。ンユタととなえたら水が出たので、ンユタは水だろうと推察してみたのだが、あっているだろうか。


「ンユタ、アビル?%¥▼♭…。フロ!フロ!」


「入りたいんだね。洗面台にお湯を張ればいいかな?」


それなら一人で入れるだろうし。そう思って呟いていると、ミズキが言う。


「コウオオキクナル!」


…忘れていた。さっきは水を浴びたら大きくなった。まさか水を浴びたら大きくなるの…か…?どっかの漫画みたいだが、可能性はないとは言えない。さっきは実際大きくなっていたんだから。


「困ったな。そのままじゃシャワーは使えないだろうし…。そのままじゃ入れな…あ、そうか!」


浴槽にほんの少しだけためておけば、入れる。考えてみたら、ミズキは飛べる。飛んでお湯に入ればいい。ミズキに風呂の入り方をレクチャーする。


「これ脱いで、ここに置いて。それから飛んで行ってお湯に入る。」


コクコクと頷くミズキ。


「大きくなった場合はこれ。回すと、ここからンユタ出るからね。」


「オォ。ンユタ。」


大きくなった場合は普通にシャワーを浴びればいいだろう。そう思って


「タオルここに置いておくからね?」


そう言って俺は風呂場から出る。ひと通り説明を終えてため息を吐いた。もし…シャワーを浴びてミズキが大きくなったら…大きくなった姿のミズキと一晩を明かさなけれならない。どうしたらいいんだろうか…?


服もあのまま寝るのか、どこに寝るのか、好きな女の子と一晩中一緒になんて…心臓がバクバクいいはじめた。小さいままならまだしも、大きくなられたらまともに顔も見られなそうな気がする。あぁどうしようどうしようなどと考えていると


「ミズキ!ミズキ!」


と呼ぶ声で我に返った。戸を隔てて


「どうした?」


と声をかけると


「タオ…モゴ…♭▼〜!!!」


悲鳴に近い声が聞こえた。どうやら緊急事態のようなので、急いで戸を開けると、なぜかタオルで溺れているミズキの姿が。大きくなりはしなかったんだなと少し安心したようなガッカリしたようななんとも言えない気持ちになったが、そんな場合でなかった。


「今助けるから!大人しくしてて!」


「♭▼〜!!」


言葉が通じないため、じたじたと暴れていてどうしようもできない。そのままタオルをひっぺがした。一瞬だけ、ミズキの裸が見えた…が急いで後ろをむいた。見えてない、見えてない…そう言い聞かせて。


「ミズキ!ミズキ!」


そう呼ぶので、振り向かずに


「なに?」


「タオル?ダメ。」


ダメって何がダメなんだろう?ちらっと後ろを見るとタオルが大きすぎてうまく拭けないみたいだった。


「ミズキ!ミズキ!」


どうやら、手伝えという催促らしい。人形と一緒、人形と一緒。そう言い聞かせてから後ろを向いて、なるべくミズキを直視しないようにタオルを広げてから、ささっとミズキを包んだ。


「オオキク、ダメ。」


大きくなれなかったと嘆いているらしい。どうしてさっきは大きくなったんだろう。ミズキ自体もわかってないみたいだし、謎は深まるばかりだった。


「拭いたら早く服着なよ。」


服を指差すと、こくんと頷いて服を着ようとしていたので、また後ろを向いた。さっき長めに浴びたシャワーのおかげで平静を保っていられるけど、これを毎日かと思うと、自身が心配になってきた。


「熱はよくなったけど…なんか違うことで頭が重い気がする。」


「…?」


「なんでもないよ。」


そう言ってから床についた。そう言えば、妖精は睡眠必要なんだろうか…?疑問を持ちつつ目を瞑った。



翌朝、診断書をもらいに行くべく、病院へ行こうと着替えをした。混んでるんだよな、病院って。考えながらノソノソを支度をする。ミズキは俺の肩に乗ったり、周りを飛び回ったりしている。外を指差して


「俺は出かけるね。ここにいる?」


ミズキに声をかけると


「イッショ!!ミズキ、イッショ。」


そういうので、また手袋にミズキを入れて出かけることにした。そう言えば俺も妖精の仲間入りしたんだ。それでも寒いと思うってことはミズキも寒いだろう。あれ以外の服を買ってやった方がいいんだろうか。しかし、妖精の中には洋服を買ってやると怒る奴もいたはずだ。ミズキのことを調べてみないと本当何も進まないんだ。はぁっと、ため息をついた。


病院について待合室で上着を脱ぐと俺はミズキをポケットから出した。


「飛んでていいよ。」


小さく声をかける。後ろで飛んでる分には見えてようが見えてなかろうが俺に害がないとさっき気がついて、病院では自由にしてもらう事にした。最初からこうすれば見えてるかどうかわかったのに。そう思っていたのだが、昨日の寒さと今のミズキの格好をみて思い直した。寒くて可哀相だ。病院は暖かいからできるんだった。どうも俺は抜けている。昔からそうだからしょうがない。行動してから気づくし、反省しても同じミスをするんだから。息を吐いてから天井を見上げていると、ミズキが飛び回る横にもう一つの影が動いたような気がした。


「ん?」


「…さーん、診察室へどうぞー。」


誰かが呼び出される声が聞こえるとミズキが戻ってきた。ある程度飛び回ったので、俺の肩に休みに来たみたいだった。結果として、みんなにはミズキが見えていないという事が判明したのでそれでいい。これで安心してミズキを連れて歩ける。それにしてもさっきの影。なんだったんだろう。


「ミズキさーん、診察室へどうぞー。」


呼ばれたので、診察室へ向かおとすると、男性とすれ違う。


「貧相な格好をさせておくのはどうかと思うぞ!」


そう声をかけられた。


「はい?」


意味がわからず返事すると、


「彼女のことだ!」


ミズキの方をみて小声で言う男性。


「え…?」


この人、ミズキが見えてる!!

読んで下さってありがとうございます!

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