16.喋る
「喋れないんじゃ…。」
「オオキクナッタトキ、ノロイ、ナクナッタ。」
「そういやあ、なんで大きくなったの?」
「ワカラナイ…。ナンデ、モドッタ。デモ、ソノオカゲ。」
大きくなることで呪いが解けたということらしい。なんで大きくなったのかはカズキにも原因はわからず、困った顔をしている。でもそのおかげで助かったのはその通りだ。先ほどのカズキによるぼや騒ぎのおかげで人だかりができている。それに紛れながら俺はカズキと話ながらゆっくり現場を離れようとしていた。そこに救急車や消防車がやってくる。人を背負った俺に救急隊は声をかける。
「その方は怪我人ですか?!」
「あ、怪我ではないんですけど。原因はわからないんですけど、倒れちゃって……。」
「ご友人ですか?」
「友人というほどの深い仲ではないんですが。」
ニチカには友人だと言われたが、友人というほど深いことを知った仲ではない。秘密を共有しているというだけで。俺はニチカを救急隊に引渡しながらいう。
「ご家族とか連絡先わかりますか?この方のお名前は?」
「連絡先はわかりません。ニチカ………ノブハルさんだったと思います。」
下の名前すらあやふやで連絡先も知らない。これで友人だと言ったら救急隊の人は不審がるよなと思いながら、テキパキと動く救急隊をぼんやり眺めた。
「ニチカさーん、ニチカさーん。わかりますかー?」
「あ…う…。」
「ニチカさん、わかりますか?倒れてしまったみたいなので、念のため病院に行きます…」
ニチカの意識が戻ったようなので、ホッとしてニチカの顔を見ると、俺を見て不思議そうな顔をして会釈した。救急隊とニチカはやりとりを続けているが、その様子を見た俺はそっと、この場を離れることにした。
「ニチカ、ワスレタ。ワタシタチ。」
少し寂しそうにカズキは俺に言った。
「多分そうだね。」
俺も少し寂しい気分になった。ニチカは面倒くさい人だったけど、ミズキ達が見えた仲間だったから。きっと前のニチカもそんな気持ちだったんだろうな。俺は泣くほどではないけど。ポケットに手を突っ込みながら下を向いてカズキと話す。
「カズキ、さっきの呪いの話なんだけど、呪いをかけたのはモモタなの?」
「ウン。アイツ、ノロイノドウグ、モッテル。イウコト、キカサレテタ。」
「ニチカも囮って言ってたけど。それも?」
「イマノモモタロ、オトコ、アヤツル。オニ、タオス。ニチカ、ミズキアッタトキ、モウ、アヤツラレテタ。」
モモタは自身では鬼が見えないため、鬼がいるところをニチカに探させて鬼を倒していたようだ。それよりも。
「え、モモタって桃太郎なの?朗だけど。」
「アイツ、モモタロ。アキラダケド。」
女だから太郎マズイからかななど呑気なことに思っていたが、
「ミズキ、チカラ、ミセタ。モモタロ、ミズキ、コロス。」
俺を指差しカズキは言った。
「そ、そんな!物騒な……。」
「モモタロ、オニ、コロス。ソノタメニイル。イッテタ。」
確かにそんな台詞言って逃げてった。
「男の鬼って………俺のことだよね?」
「ウン。」
「童貞だと、みんななるのかな?」
「ドウテイ?」
「いや、なんでも。男の鬼って簡単になれるのかなって。」
いちいち説明する単語ではないと判断し、話を変えた。
「オトコノオニ、オオムカシ、コロサレタ。カズ、スクナイ。」
どうやらみんながなるもんではない、ようだ。俺は特殊らしい。でもなんで鬼なんかになったんだろう?それに鬼になったらしいけど、詳しいことも鬼の言葉も理解できない。しかも、俺自身は害もないのに命を狙われている。どうしたものかと思っていたが、俺自身は被害がないため確認し忘れていることがあった。モモタは散々言ってた話だ。話せるようになったカズキに確認する。
「鬼って人間食べるの…か…?」
「ウン。タベル。」
「随分サラッと言うけど、さ。そのせいでモモタロに狙われてるんじゃ…。」
「ミンナ、タベル、チガウ。タベル、スコシ。」
「全員を食べる訳じゃないのか。」
「ウン。」
「じゃあ食べないからモモタに言えばわかってくれるんじゃ…。」
「モモタロ、オニ、コロス。リユウ、ナイ。ハナシ、ムリ。」
話合いはムリだということらしい。確かにスイッチが入ったと思われる時のモモタは話しても無駄感があった。
「とにかく俺はモモタに狙われ続けるってことね…。」
「イマノモモタロ、オンナ。オトコノオニ、カテナイ。」
「なんでだ?」
「モモタロ、オニ、ワカラナイ。ミエナイ。イッショイルオトコ、アヤツル。オニ、コロス。ミズキ、タオセナイ。」
鬼がついてる男を操って鬼を倒すってことはわかったけど、なんで俺は倒せないかがよくわからない。魔法もノーコンだし、策もない、弱っちい鬼なのに。
「まあ、とにかくいいや。ちっちゃい方のミズキは見当たらないから、家に戻ってるのかな。」
「ウン。」
「じゃあごはん買って帰ろう。きっとミズキもお腹を減らして待ってるよね。」
「ニクガイイ!」
「そっか。みんなで今日はたくさん肉、食べよう。モモタに負けないように。」
ステーキなんて弁当で中々売ってないので、牛丼屋で牛丼と別に牛皿を買って帰った。
家の前で心配そうにそわそわ飛ぶミズキが見える。俺の姿が見えるなり、ミズキは俺に抱きついてきた。
「ミズキ!」
小さな身体が俺に飛び込んできた。
「俺も心配してたよ。みんなで肉食べような。」
「ミンナ?」
そう言うとカズキがひょこっとポケットから顔を出した。
「カズキ!○☆▷!!」
「みんな無事だよ。」
そう3人で喋っていると、物陰から視線が。もしやモモタ!と思ってそっと視線をうつすと、そこにいたのは宅配業者だった。
……………俺、1人で何やってるんだろって思われてる………よね………?
読んでくださってありがとうございます。




