15.鬼はどちら?
「お、鬼?!」
「なんだと思っていたんですか?」
「妖精だと…本人もそう言ってたし…。」
「鬼の幼生ではありますけど…って、話せるんですね?」
「言ってる事は8割わかりませんけど、雰囲気でなんとなく。」
「そうですか。」
モモタは俺をジロジロと見ている。ニチカは大和撫子が急変したせいでまたフェードアウトしているが、きっとさっきみたいに復帰してくるだろう。次に復帰してくる時が逃げるチャンスだ。桃太朗は鬼を退治すると言った。それは俺も退治されてしまう可能性も意味する。俺はミズキたちと一緒。つまり鬼の幼生ということになるのだから。退治なんてされる気はない。
「鬼に食べられるなんてあなたも嫌でしょう?ミズキさん。」
名乗った覚えのない名前を呼ばれた。
「え…ええ。食べられるなんて嫌ですね…。退治って、モモタさん、この子見えてるんですか?」
敢えていないところを見て言う。
「ええ!もちろん。見えてますよ。」
いもしないところを見てモモタは喋っている。この人、見えてない。そう確信しながら、俺はモモタにさぐりを入れる。
「俺は救いを必要かどうか判断するためにも、なんで退治するか、どう退治するか教えて欲しいんですけど。」
「もちろん人を食べる鬼ですから退治する必要があるでしょう?そこは反論の余地はないと思います。どう退治するかは…説明、必要ですか……?」
そう言って俺の顔の側に自身の顔を近づける。柔らかく漂う甘い香り。「説明なんかいらないから続きを…」と言いたくなるような香りだった。そこに響いたのはミズキの声だった。
「ミズキ!!ダメ!!」
その言葉で俺はハッとする。
「……説明…必要ですよ……。」
「………?なんで?きいてませんか?」
「聞いてますよ?どう退治するんです?」
モモタは顔を顰めた。どうやら聞かれたくない内容らしい。
「……俺やっぱり救いは必要なさそうです。食べないって約束してもらってますし、あなたは…やっぱり信用できません。」
「いえ、そんな約束はすぐ破られてしまいますよ!あんなヤツらより、私を信用してください!」
そろそろニチカが復帰してもおかしくないのだが、中々復帰してこない。焦れて、ニチカの方が見るが、何やら様子がおかしいように見える。後ずさるようにしてモモタと距離を取る。
「俺、帰ります。」
そういうと、モモタの様子が変わった。何か別の人のような雰囲気だった。
「いえ、帰しません…。私は鬼を退治しないといけないんですよ…。日火、この人についてる鬼を殺しなさい。」
感情が乗っていないような声でモモタが言う。ニチカはゆらっと俺に近寄ってくる。その目には輝きがない。
「ニチカさん、ニチカさん!しっかりしてください!」
「…………。」
俺の呼びかけには反応がなく、ミズキが顔を出しているポケット手を伸ばす。
「ダメだ!ミズキ!カズキと一緒に逃げろ!!」
「ウン!!」
ミズキはカズキとともに飛んで逃げようとすると、モモタが冷たい声で言う。
「火厨鬼?あんたはコッチでしょう?」
カズキが地面に落ちるように失速する。
「◉▲∂*∃!!」
ミズキに向かってカズキは叫ぶ。まるで逃げろと言っているかのように。ミズキは俺とカズキの方に戻ろうとするので、俺も咄嗟に叫んだ。
「逃げろ、ミズキ!カズキは俺が助けるから!」
昨日あんなに情けないこと言ったのに。それにカズキはコッチっていう意味もわからない。助けられる見込みは多分ないのに。
「ミズキさん、あなたは私に救われるの。抗うことは許さない。」
俺の目の前にいるニチカを押しのけて、モモタが噛み付くようにキスをした。俺の唇からは血が滲む。口内に広がる俺の血の味。俺は思い切り力を込めて、モモタを引き剥がすと魔法を唱える。役立つかはわからない。でも、何もしないよりはマシだ。そう思って手を合わせて、唱える。
「ンユタ!」
「何?!」
モモタに当てるつもりで唱えたが、ニチカに当たった。当たっただけマシか。水に当たったニチカの動きは完全に止まり、その場に倒れる。モモタは俺を見て驚いた顔をしている。もう一度、昨日カズキに習った魔法を唱えた。
「ンキガ!!」
唱えてみたが、カズキが落ちたところあたりで金属粉が舞う。やはり俺の魔法はノーコンのようだ。やはり役立たなかったか。万策尽きた。これしか策がないのも情けないが、そんな急に思いつくわけがない。とりあえず、カズキを連れて走って逃げるしかないかと思い、カズキの方を見ると………
そこには裸体の女性の姿が。大きなふた山とスラリと伸びた足。ボーイッシュな顔。その女性は手を合わせて、唱えた。
「▲▲▱!」
凄まじい勢いの火が放たれる。
「な!何?男の鬼?それに鬼の成体?!もしや火厨鬼が?アイツは封印具をつけたはず!」
ものすごい勢いで火は広がっていく。火災が発生したと思った人たちが集まってくる。
「鬼は退治する…!オマエも退治する…いつか…!」
モモタは煙に紛れて消えていった。俺はニチカを担いで火から避難をしようとすると裸のカズキらしい子が駆け寄ってきた。
「ミズキ!!ヨカッタ!」
「カカカカ、カズ、キなの…か…?」
思わずどもる。現実に見る女性の身体は初めてなのだからしょうがない。人ではないとは言えども、ナイスバディなカズキだ。そしてそのカズキが抱きついて、くるはずだった。くるはずだったのだが、小さいカズキがぺチリと俺の胸元にくっついていた。
「アレ?」
カズキが驚きの声をあげた。俺も同じ気持ちだった。でも野外でそうなってしまっても困ってしまうし、今はそれどころじゃなかったから残念だが、良かったと思うことにした。身体は素直に反応しているけれど。
「カズキ。ミズキが入ってた手袋に入ってくれる?ニチカを病院に連れて行って、ミズキも探さないと。」
「………ウン。」
カズキが手袋に入ると、ニチカを背負った。そう言えば……
「カズキ、喋ってるよね?」
「ウン。」
読んでくださってありがとうございます!そろそろおしまいになる予定です。




