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12.どんぐりの背比べ

運ばれてきたコーヒーに口をつけた。やはり美味しくはない。先日は病み上がりのせいかと思っていたが、もしかしたら人間でなくなってしまったせいかもしれない。ふっぅとため息をついてからニチカに切り出す。


「ニチカさんは…生死の境目をさまよったんですか?」


「あぁ。小さい時から身体も強くなくてね。少し体調が悪くなってもダメなんだ。」


「大変なんですね…」


「おかげでちゃんとした仕事につくこともできないし、周りには怠け者だと思われてしまっているよ。」


ニチカは小さく笑う。彼は彼なりに苦労をしているのか。そう思うとニチカのめんどくさい性格は許せる気がしてくる。


「僕のことはいいんだ、本当の条件を教えてくれ、ミズキ君。」


ずいっと顔を近づけるニチカ。あまりに近いので、周りの人がヒソヒソし出す。やめて欲しい。カップルの別れ話だと思われたらかなり心外だ。


「ニチカさん、近いです…。」


「すまない。さっき話したことのせいで、友達も少なかったものだから…。距離感もわからなくてな。」


「じゃあ、女性と付き合ったことは…?」


「……。ある……といいたいとこだが、不確かだな。」


つまりないということか。じゃあ、なぜにカズキはニチカの前に現れないのか。


「ニチカさん……その……えっと……女性と、うーん。」


俺が言い淀んでいると、


「経験はあるのかといいたいんだな。僕は童貞ではないよ。」


自慢げに胸を張る。俺は、はぁ…と息を吐き、


「見えるだけなのはそのせいだと……思います。」


「経験があると彼女達はこないのか?!なんと……。」


ニチカが目を丸くする。


「いや、ミズキに聞いた訳ではないんですけど、俺自身が………その、そうなので、そうなのかなと……あとは巷の噂で、そうだと妖精が見えるっていうのがあるんですよ。ニチカさんが特殊なのか、俺が特殊なのかは他の人の話を聞かないとなんとも言えないんですけど。」


俺が言うと、ニチカは遠い目をした。


「僕が先輩達にちゃんと聞いていたら彼女達のことも、もっとわかったんだな。」


「あ、でも、今からでも聞ける方法はあるかもしれません。」


「何!一体どんな方法だ?」


ニチカは、がしっと俺の手を掴む。だからやめて欲しい。


「あの、救ってあげるっていう女なら何か分かるかもしれないです。」


「ミズキ君、君はその女に会ったのか?!」


「会いました。その時言われたんです。『コイツに食べられてしまう』って。そういう言い方するくらいならきっとあの人はミズキ達のこと詳しい気がして。」


さらりと危険なことを言ってしまった気がする。ニチカの前にカズキが現れていないことから推測して、ニチカがカズキに食われる心配はないと俺は勝手に思っているのだが。


「な、食べられる?!」


「らしいです。俺はイマイチ信じきれてませんし、ミズキはそんなことしないって言ってるんですけど。」


ミズキの場合、あくまでも俺には。という条件がつく。外に出てる際、ミズキは基本大人しくしているから大丈夫だと思っている。


「カズキも僕のことを食べるために影から僕狙っているんだろうか…?」


ニチカの顔色が悪くなる。考えてみたらそうだ。ニチカにその事実を告げるのはまずかったか。とりあえずフォローのために俺の持論を展開する。


「…………よくわからないですけど、それはないんじゃないですか?寝てる間とか、いくらでも食べるチャンスはあるじゃないですか。なのに食べてないってことは大丈夫なんじゃないですか?」


それにカズキはニチカに常時ついてないし、日本語が通じるから聞けば分かるんだけど、とは本人には告げられない事実だったなと困りながら言うと、


「それはそうだ…!ミズキ君のいう通りだ。しかし、そうだとしたらその女は信じるにたらないのでは?」


「でも、食べられてしまうから救ってあげたいと言ってくる人が悪い人とは思えないんです。」


「甘いぞ、ミズキ君。女性のことを全然わかっていない!」


お互いにな!とは口にはできなかった。ニチカは付き合ったことはなくても経験済だ、俺に言われたくないというのもあるだろうから俺はちゃんとツッコミを我慢した。


「でも、あの人の知ってる彼女たちの情報を聞くのは、 何もわからないよりはいいかと思うんです。」


ニチカと喋っててそう思ったのだ。さっきまでは迷っていたのだが、もっとミズキ達の事を知るということは俺自身の置かれた状態を知ることになると思ったから。


「しかし、ミズキ君…もし君が……君まで僕を忘れてしまうかもしれないじゃないか…。」


ニチカはプイっと目を逸らしながら言う。だからなんか誤解生まれそうだからやめて欲しい。


「………だったら、明日あたり一緒に探しに行きます?一緒に行けば、ほら、どちらかが歯止めになりそうじゃないですか……。」


俺自身、1人でモモタに会うのは不安だったから、そう提案する。


「そうだな!それなら安心だ!」


「じゃあ、明日同じくらいの時間に駅前で。今日はもう失礼します。」


「あぁ。じゃあ、また明日!」


周りのテーブルにヒソヒソされている気配を感じながら俺はコーヒー代を置いて席をたった。とりあえず、モモタを探すことが決まったから、聞きたい質問は考えておくことといざとなったらミズキが逃げられるようにしておく必要がある。家に帰ったらミズキと作戦会議をしなければ。


家に到着すると、不在票が入っていた。やはり早く帰るべきだったな、と思いながら着替えていると、


【ピンポーン】


呼び鈴がなる。


インターフォンを覗くも誰もいない気がする。


「カズキ。」


ミズキが言うのでドアを開けると本当にカズキがいた。


「今日はもうきっと無理なんだけど、服そろそろ届くからね。明日には受け取る予定だから、取りに来てね。」


そう言うとカズキはコクンと頷いて俺の手に寄り添う。グラマラスな山がまた手にあたるので、なんとも言えない顔をしているとミズキがカズキを引っぺがしにかかっている。

引っぺがし終わった後、カズキがミズキに何やら話をしていた。ミズキの顔が曇るが、カズキが必死に食い下がっているようにも見える。最終的にはミズキはため息をつきながら頷き、俺に言う。


「カズキ、イッショ。」


どうやらカズキもしばらく一緒にいることになったようだ。



…………ニチカになんて言い訳しようか。


読んでくださってありがとうございます。とりあえず、完結することだけが目標になってます…。

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