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10.言葉

「あの…俺は救われる必要ないです。」


そう言って逃げようとした。しかし、腕を掴まれてしまい、逃げるに逃げられない。力は負けてないはずだが、女性相手に強気には出られない。


「私、モモタアキラと言います。最近、身近でおかしなこと、起きてますよね?」


モモタアキラと名乗った女性。強い視線で見つめられ、思わず挙動が不審になる。


「お、起きてない…です。…大丈夫です。」


視線を逸らしながら、逃れようとするも、


「いーえ、そんなはずはないです。あなたには救いが必要なはずです。」


なんだか宗教みたいな台詞を吐いたモモタ。腕を掴む手にも力が入っている。結構痛い。顔を顰めるとモモタは少し力を緩めた。にこやか笑いながら聞く。


「死ぬほど苦しい思いはしてませんか?」


「してないですよ…。」


「ニチカという男性と知り合いでは?」


「いや、知らないです…。」


必死に目をそらす。ミズキは今朝のおばさまとのやりとりで俺が注意したため助けていいのかダメなのかがわからず、戸惑っていた。俺も変な動きができず、ミズキに助けを求めることができない。


「では、多少強引ですが…しょうがありません。」


手を強引にひかれ、人通りの少ない路地に引っ張り込まれた。そして、モモタは俺の顔を両手で固定すると、俺の顔に唇を近づける。


「してみたくないですか…?」


「は…?え…なんのつもりなんですか…?!知らない人と…そんな…。」


「これから知ればいいじゃないですか。もっとお互いに…。」


どんどん近づいてくる唇。まずい。皆同じように声をかけられていることを考えると、きっとこの先に待つ展開は美人局のような手口に違いない。怖いお兄さんが出て来て、モモタとの関係は終わり、ミズキのことも忘れてしまう。ニチカの話から推測するにそうなるに違いない。手遅れになる前に俺は声を上げた。


「ミズキ、ンユタ出して!!」


「◎☆♯!☆×φ!」


ミズキが手を合わせて唱えると、モモタの上に水の球体が現れ、バシャリと落ちる。


「きゃっ!!」


モモタが怯んだ隙に俺は足早に先ほどの通りに出た。モモタも俺を追ってやってくる。


「やはり、あなたにはついてますね!!」


狙いは俺というよりもミズキの方なのかもしれない。モモタは妖精の存在は知っているが、見えていないようだった。狙いが俺でないならば、このまま逃げてしまえばきっと大丈夫だ。逃げる俺の背中にモモタは叫ぶ。


「助けてあげると言っているのに!このままでは、あなたはソイツに食べられてしまうんですよ!!」


一瞬、その言葉に足が止まりそうになるが、狙いのミズキを手に入れるための嘘の可能性だってある。止まってはいけない。より歩く速度を上げると、モモタは諦めたかのように、


「この名にかけて必ず救います!待っていてください!!」


そう叫んでいた。そんな捨て台詞を吐かれるとさっきの食べられてしまうというのが本当に思える。確認したいが戻らせるのが目的だろう。俺は頭を振ってほとんど駆け足のような速度で家路を急いだ。






家に帰り着くとカズキはいなかった。言葉がわかるカズキに聞きたかったけど、仕方がない。レンジで温めた焼肉弁当をミズキとつつく。


「なぁ、ミズキ。」


「○※▽?」


「俺は美味しそう?」


わからないとは思いつつも、聞いてみる。


「………?」


「肉、美味しい。俺、美味しい?」


分かりやすいように肉を指差して美味しいといい、俺を指差して聞く。


「ニク、オイシイ。ミズキ、オイシイ、ダメ。」


やっぱりモモタの嘘だったのだろう。


「俺は美味しいわけないよね。もっと肉食べる?」


「ニク。オイシイ。タベル。」


「食べる。覚えたね。肉、分けるから待ってて。」


「マッテテ。」


「その場合は、待ってる、だよ。」


「マッテル。」


ちょこんと座って待つミズキ。こんな子が俺を食べるなんて。本当にありえない。こんな小さい女の子がどうやって俺みたいな男を食べるというんだろう。肉を切ってやるとミズキは美味しそうに肉を食んだ後、


「ゴチソサマデシタ。」


そう言って食事を終えた。


「うん、よくできました。ミズキ、言葉分かるようになってきたね。」


焼肉弁当の残りをかきこみながら俺はミズキにいうと、


「コトバ?ワカル?」


「そう。言葉。俺の喋ってる言葉。」


「コトバ。ワカル。」


「カズキみたくちゃんと分かるようになれば、もっといいね。」


そうミズキにいうと、ミズキは頬を膨らまし、不機嫌になった。どうやらカズキと比べたのはまずかったようだ。


「あぁ…。ごめんなさい。俺の妖精はミズキだったね。」


「ウン、ミズキ、イッショ。」


まだやや不機嫌だったが、謝ったので許してくれたらしい。ミズキにはあまりカズキの話をしない方がいいみたいだ。


「でもちゃんと話せれば、不安にならなくていいのにな…。」


「フアン?」


「ううん、なんでもない。こっちの話。」


食後は買った雑誌の写真でミズキと言葉の練習をして過ごし、シャワーを浴びた。今日もミズキは俺と一緒に入ろうとしていたが、もちろん断った。


「言葉かぁ〜。」


ふと呟く。そういえば、食べるっていうのも食事以外の意味もあったな。女の子が俺を「食べる」。いや、どっちにしろ、あの大きさでは無理があるだろう。しかし、ミズキは大きくなったことがあった。もしかしてそうなんだろうか。


シャワーから上がるとミズキも


「フロ、フロ。」


と騒いでいたので、洗面台にお湯を張ってやり、


「タオルは小さいのを用意したからね。」


ハンドタオルを指し示して、俺は外に出る。そして先ほど気になったことをスマホで調べた。男を食べる妖精。そんなものは存在するのか。検索をかけると該当する単語があった。


【シャナンシー 男の精を喰らう妖精。つかれると才能を得る代わりに短命になる。】


スマホを持つ手が震える。ミズキはシャナンシーなんだろうか。




俺は………死んでしまうんだろうか。

読んでくださってありがとうございます。ちょっと自分の中でもごちゃっとしてきました。とりあえず頑張って完結を目指したいと思います。

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