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小説家でいいんですか?

 こんにちは。

 ヘルプデスクです。


 熊本県の大震災は、本当に大変なことになっています。

 被害に遭われた皆様に、心よりお見舞い申し上げます。


 もし、何かの拍子にこの作品に触れて、少しでも気分を「ニヤリ」にできたら嬉しく思います。

 それでは今回も、一笑に付していただければ幸いです。

「はい、ヘルプデスクです★」


 今回、電話を取ったのは、跳ねるように元気な口調の圭子です。


〈あのぉ……〉


 対して電話の相手は暗いです。


 圭子は努めて明るく声をだします。


「はい、なんでしょう?」


〈僕、漫画家か小説家になりたいんですけど、どうすればいいでしょうか?〉


「えーっと、それはどちらでもいいということなんでしょうか?」


 質問があいまい過ぎて、このままでは答えられません。


〈できたら……漫画家かなぁ。将来的には、僕の作品がアニメ化したりして、印税生活して、かわいい女の子たちに『せんせー』なんて呼ばれたいんです〉


「なるほどです。欲望に忠実ですね!」


〈いやぁ~。それほどでも……〉


 そこは、照れて謙遜するところではありません。


「漫画家さんですか。とりあえず、漫画を描けばいいんじゃないですか?」


〈いや、だからさ、勉強の方法とかあるじゃない。そういうのを知りたいんだよ〉


「うーん。とりあえず、チャレンジしてみる。行動あるのみだと思うんですよ〉


〈でも、何から手を付けたらいいのか……〉


「じゃあ、模写とかどうですか? 私も最初は見様見真似で挑戦しましたよ!」


〈え? 君も漫画を描くの?〉


「いえ。わたしが最初に真似たのは、回盲切除手術です」


〈……え?〉


「いやあ、盲腸が悪化した急患が来たんですけど、父さんがいなかったので見様見真似で、わたしがオペしまして……」


〈いやいやいやいや! 見様見真似でやっちゃだめなやつでしょ!〉


「若気の至りですねぇ」


〈若気って……君もともと若そうだけど、いくつとのとき!?〉


「6歳ですね」


〈若気すぎるわ!〉


 どこかで聞いたことがある話です。


〈……で、それ、成功したの?〉


「はい。問題なく。いつも見ていたおかげですね」


〈どんだけ見てるんだよ、手術!〉


「てへへ★」


〈かわいく笑うな! 赦しちまうやろー!〉


「まあ、そういうわけで、とりあえずは模写からでいいんじゃないでしょうか」


〈う~ん。じゃあ、まずはGペンとかそろえてくるかなぁ〉


「え? 別にまずは鉛筆とかで書き始めれば……」


〈何言ってるんだよ! 雰囲気でないし、それじゃだめだろう!〉


「……そうですかねぇ」


〈でも、考えてみたら、道具をそろえるのが面倒だな……。そうだ、小説家の方にするよ〉


「……え? それでいいんですか?」


〈だって、小説家ならパソコンあればとりあえずできるし。金かからないじゃん。小説家でいいや〉


「はあ……」


 完全になめていますね。


 こういうのを聞くと、殺意の波動に目覚めそうになります。


〈よし。きーめた。小説家なら文字、書くだけだし、国語の延長だろう。国語は得意だったしな〉


「そ、そうですか……」


〈登場人物のかわいい女の子は、素人の絵描きさんに頼めば、タダで描いてくれるだろう〉


「そ、それはどうでしょうか……」


〈うん。方向性はきまった。まずは模写(コピペ)して小説を書く。ありがとう、ヘルプデスク!〉


「あっ! まっ――」


――ツーツーツー……


 電話は切られてしまいました。


「コピペは模写じゃないし、小説は模写できないから、一番練習は難しい気が……」


 圭子は、非常に不安になります。



 後日。


 その不安は的中し、相談者はパクリ疑惑で訴えられたそうです。


 ざまーみろですね。


 …………。


 ――ゴホンッ!


 大変、失礼しました。


■用語説明


●「漫画家か小説家になりたい」

 たまにこういう話を聞きます。

 確かに両方やっている方もいらっしゃいますが、物語作り以外は別の才能なので難しいと思います。


●「かわいい女の子たちに『せんせー』なんて呼ばれたいんです」

 イェス! イェス! イェス!


●「チャレンジしてみる。行動あるのみ」

 圭子がいいことを言いました。


●回盲切除手術

 先日、私の母親が行いました。

 もちろん、手術担当医は6歳の女の子ではありませんでした。


●どこかで聞いたことがある話です。

 夢子も「若気のいたり」と言っていました。


●「Gペンとかそろえてくるかなぁ」

 形から入るダメなタイプです。

 そして、Me too!!


●殺意の波動

 リュウまで目覚めた時には、どうしようかと思いましたよ。

 いや、まあ、別にどうもしないんですけど。


●「国語の延長」

 国語は基本ルールなので確かに必要な知識です。

 でも、延長ではなく、上乗せになる気がします。


●「素人の絵描きさんに頼めば、タダで描いてくれるだろう」

 この思考は、絵描きさんに殺されます。

 やめましょう。


●「模写(コピペ)して小説を書く」

 実際、冗談じゃなく多いわけです。

 文章の語尾や単語を入れ替えるだけ。

 人工知能の方が、よほどうまくオリジナル小説を書きますね。


●「小説は模写できない」

 できますが、大して意味はありません。

 模写は体に覚えさせたり、コツを見いだすための行為です。

 小説の場合は、読んで文章を頭に入れて、いつでも素材として料理できるようにする方がいいかと思います。




※本作のテーマソングをまだ聞いていない方は、下にあるリンクからぜひお聞きください。

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