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「くっ! 殺せ!」ですか?

 お疲れ様です。

 ヘルプデスクです。


 とある、なろうにいる作家さんが、「3人ものが好き」とおっしゃっていました。

 なんでも、「男女女」にこだわるわけではなく、「女女女」「男男男」もありだそうです。

 さすが、売れっ子作家さんは、頭の中も異世界です(笑)。


 今日は、そんな作家さんからのインスピレーションも受けた話。

 一笑に付していただければ幸いです。

 本日の昼休みも、ヘルプデスクは皆藤ひとりです。


 最近、女性3人でよくランチに出ているようです。


 よくわかりませんが、仲良くなったのはいいことです。


 その間、皆藤は必然的にお留守番です。


 昼休みとて、留守にするわけにはいきません。


――プルルルル……


 なにしろ、このようにいつ電話がかかってくるのかわからないのですから。


「はい。ヘルプデスクです」


〈……貴様、魔王だな!〉


「…………」


 一瞬、皆藤はデジャブかと思いますが、今度の電話は女の声です。


〈貴様の魔力が、電話線を伝わってここまであふれている! やはり魔王だな!〉


「……『ここは、東の町。ここから北に行くと、魔物がすむ洞窟があるが、装備をきちんと整えてから行くことをお薦めするね』」


〈な、なんで、いきなり、NPCになりきっている、貴様! 正体はばれているぞ、魔王!〉


「『魔王が現れた! 魔王を仲間に誘う? はい/いいえ』」


〈な、なんだ、その究極の選択肢は!?〉


「『魔王が仲間になった』」


〈自動選択!?〉


「『あなたは魔王の仲間だと認識された。あなたと魔王は、王様から派遣された討伐隊に倒されてしまった』」


〈そ、そんなに強いのか、討伐隊!?〉


「王様『おお。死んでしまうとは何事だ。仕方のない奴だな。お前にもう一度、機会を与えよう』」


〈お前が命じて殺させたんだろうが、王様!〉


「王様『王に向かって無礼な奴め。貴様は罰として、オークに凌辱される刑に処す』」


〈……くっ! 殺せ!〉


「それで、なにかご質問でしょうか、姫騎士様」


〈――なっ!? なぜそれを……〉


「簡単な推理ですよ、ワトソン君。でも、今は説明している時間がありません。詳しくは、ウェブで」


〈何故、ウェブ!? 異世界からは見られんわ!〉


「……なるほど。あなたも召喚されて異世界に行った設定ですか」


〈設定ってなんだ!〉


「え? 厨二病を患っているか、学芸会の練習か何かですよね?」


〈違う! ちゃんと異世界に呼ばれてる!〉


「はいはい。わかってますよ。イタイ子、イタイ子、とんでけー」


〈イタイ子じゃない! ……くっ。さすが魔王。そうやって言葉巧みに眩惑して、勇者リュウをたぶらかしたのか!〉


 どうやら、前に電話をかけてきた【勇者リュウ】こと、【山田 竜太】の友達のようです。


〈貴様の甘言により、たぶらかされたリュウが、大魔王ヌーブラとくっついちゃったではないか! ヒロインたる、私の立場をどーしてくれる!?〉


「あ。うまく言ったんですね。よかったではないですか」


〈よくない!〉


「あれ? 魔族との戦いは終わらなかったのですか?」


〈くっ……終わったわ〉


「どうせそのまま戦っていても勝てなかったですよね?」


〈くっ……〉


「負けてたら、オークに凌辱されていたかもしれませんよね?」


〈くっ……〉


「くっ……」


〈くっ……〉


「くっくっ……」


〈くっくっ……〉


「くっくくっく……」


〈くっくくっく……〉


「〈青い鳥~♪〉」


〈――って、うたわすな!!〉


「……というか、よくこんな古い歌を知っていましたね」


 さすがに皆藤も、1973年リリースの歌を知っているとは思いませんでした。


「まあ、あなたにも青い鳥が訪れますよ。なんなら、あなたも勇者のところに行けばいいのです」


〈……え?〉


「あなたも勇者が好きなら、3人で暮らせばいいではないですか。どうせ異世界ならオールOKなんですよね?」


〈そ、それはそうだが……〉


「大丈夫ですよ。ハーレム物も流行ですから、きっと受け入れてもらえます」


〈そ、そうかな……〉


「そんなあなたに、勇気が出る昔のヒーローの歌を教えましょう」


〈お、おお!〉


「ひとりよりふたりがいいさ、ふたりよりさんにんがいい~♪ 力も夢も~♪ そして勇気も~♪ それだけ強く、でかくなる♪ ……つまり、独り身より、結婚した方が、どうせ結婚するなら妻は2人ぐらいもらった方がいいという歌です」


〈おお! ヒーローがそんなことを……〉


「英雄、色を好むと言いますから」


〈わかった! 行ってみる! ありがとう、異界の魔王!〉


 最後に明るい声で、姫騎士は電話を切りました。


「ただいまもどりました~」


 夢子、悠、圭子が、ランチから戻ってきました。


 その3人を見て、皆藤はふと考えをめぐらせます。


「どうかしましたか、皆藤部長?」


 怪訝な顔で、夢子が訊ねました。


「いえね。どうして、日本は一夫多妻制じゃないのかな……と思いまして」


 その皆藤の問いに、夢子が眉をしかめます。


「まあ、その答えは知りませんけど、皆藤部長は自分を勝ち組に入れて考えていませんか?」


「……え?」


「一夫多妻制になったら、皆藤部長が結婚できる可能性が1%きることになりますよ?」


「……身の程知らずで、本当にすいませんでした」


 どうやら、今は1%はきっていないようで安心する皆藤でした。


■用語説明


●デジャブ

 「デジャ・ブー(デジャ・ブー)♪ あなたとは~♪」(星のデジャ・ブー)

 デジャブと聞くと、必ずこの歌が頭の中に流れます。


●NPC

 ノンプレイヤーキャラクター。

 中の人がいないキャラクター。


●「……くっ! 殺せ!」

 出所不明の名言らしいですね。


●「詳しくは、ウェブで」

 一昔前、ウェブというのがほんの一握りの人たちの物だった時を知っていると、遠くに来たものだと感じてしまう言葉です。


●厨二病

 第3話参照。


●「イタイ子、イタイ子、とんでけー」

 イタイ子に絡まれたときの呪文です。


●「【勇者リュウ】こと、【山田 竜太】」

 第41話参照。


●1973年リリースの歌

 桜田順子さんの「私の青い鳥」という歌です。


●「ひとりよりふたりがいいさ、ふたりよりさんにんがいい~♪ 力も夢も~♪ そして勇気も~♪ それだけ強く、でかくなる♪」

 「太陽戦隊サンバルカン」のEDで「若さはプラズマ」という歌です。


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