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否定しないのですか?

 お疲れ様です。

 ヘルプデスクです。


 昨夜、仕事からの帰宅時に、あられに降られました。

 そんな強風とあられの攻撃を喰らいながらも、考えていたのはヘルプデスクのネタでした。

 自分でネタを考えて、一人でニヤニヤして仕事の疲れを忘れていました。


 そんなわけで明日からもがんばれるよう、一笑に付していただければ幸いです。

「我が社の【情報システム室】は、ITを活用しません」


「何を言っているのか、まったくわかりません」


 皆藤の説明を夢子が真っ向から潰します。


「なんでIT部情報システム室が、ITを活用しないんですか?」


「それは、彼らが忍者だからです」


「ああ、バカなんですね」


 夢子は、忍者だって容赦なく斬って捨てます。


「まあ、それは否定しませんが――」


 否定しないそうです。


「――彼ら情シスは、伊賀流忍者の末裔で構成されていて、独自の情報収集システムを構築しています」


「独自?」


「足で稼ぐ」


「ああ、バカなんですね」


「否定はしません」


 あくまで否定しないそうです。


「彼らは電子機器をあまり信用しておらず、eメールも使わずに手紙を直接届けたり、伝書鳩を使ったりしています。だから、『コンピューターウイルスに関係なくセキュリティも高い』と豪語しています」


「……なんでうちの会社は、そんなの許してるんですか?」


「いや、まあ、彼らはライバル会社の情報とかすっぱぬいてくるんで、役に立っているんですよ」


「それ、スパイ行為ですよね!?」


「否定はしません」


 そこはしておきましょう。


「まあ、ともかく、それで彼らは、IT部であることを嫌悪し、さらに私にもよく突っかかってくるのです」


「……ん? 皆藤部長に突っかかるのはなぜですか? ヘルプデスクが部だから?」


「それもありますが、私が昔、甲賀流忍者だったからです」


「甲賀流忍者!?」


「ええ。仕事の関係で」


「仕事の関係!? なんの!?」


「まあ、高校も私立忍○者(しのび○もの)高校でしたし」


「さすが○猿飛!? ネタが古すぎますよ!」


「それでも反応してくれる、あなたの年齢の方が気になって仕方ありません」


 夢子の年齢不詳説が、ヘルプデスクではホットな話題です。


「そういえば高校生の頃、胃の笛の術を体得したかったですねぇ……」


「神風の術ではなく、そちらを選ぶとは、皆藤部長は変態ですね」


「女子の服をひきちぎるように脱がせたい……それは男子高校生ならば、誰もが必ず持っているロマンです。持っていない人などいないと断言しましょう」


「それなら、男子は高校生になったらみんな牢獄に入れるべきですね……」


 皆藤のせいで、全国の男子高校生の自由が奪われるかもしれません。


「まあ、それは置いといてですね。IT部って、そもそもどういう構成なんですか? IT部にユーザーサポートチームみたいなのがあって、普通はそこがヘルプデスクになりますよね?」


 夢子はずっと気になっていたことをこの機会に聞いてみました。


 なにしろ夢子は最初、こここそがIT部のユーザーサポートチームだとばかり思っていたのです。


 ところが入ってみれば、ほとんど何でも屋です。


「構成ですか。……IT部は、山下室長の率いる情シスの他に、ITプロジェクト室、サーバーチーム、インフラチーム、電子模型クラブ、基幹システムチーム、アイドルメディア研究室、ユーザーサポートチーム、VRMMORPG愛好会、Webコンテンツチームがあります」


「……気のせいか、なんか無駄なものが混ざってませんか?」


「否定はしません」


 しきれませんね。


「それにユーザーサポートチームってあるじゃないですか。なんでそこがやらないのです?」


「人数不足で、ユーザーサポートチームは1名なんですよ」


「そんなに人数不足なら、無駄なクラブとか愛好会とか潰しましょうよ!」


「ごもっとも。……ともかく今は1名だけなので、一次受付をヘルプデスクがやって、二次受付をユーザーサポートチームがやるわけです」


「二次受付に回したことありませんけどね……」


「うちのメンバーは優秀ですから」


「否定はしません」


 夢子は、胸よりも鼻高々です。


――ポーン!


 皆藤のパソコンからチャイムが鳴ります。


 皆藤は自分のパソコンを操作すると、「あ」と一声だけあげました。


 ちょうど問い合わせの電話が終わった悠が、横から皆藤に尋ねます。


「どうなさいましたか?」


「……菊池さんがくるそうです」


「あら……」


 悠が驚きを表すように口を押えます。


「誰なんですか?」


 夢子は初めて聞く名前です。


「菊池さんは、今話題にでたIT部の部長です」


「ということは……」


 夢子が、ガタッと椅子を後ろに押しながら、勢いよく立ちあがります。


「この話、まだ引っぱるということですか! しつこいですね!」


 ……すいません。


■用語説明


●「【情報システム室】は、ITを活用しません」

 自分で書いておいてなんですが、「そんなわけあるか」と思っていました。


●伊賀流

 ハットリ君や、カバ丸が有名です。


●甲賀流

 猿飛佐助や、霧隠才蔵とかでしょうか。

 猿飛佐助は、実在じゃありませんが。


●私立忍○者(しのび○もの)高校

 肉○君と魔○ちゃんが通っていた学校です。


●さすが○猿飛

 アニメ版はグタグタでしたね。

 漫画版は面白かったです。


●胃の笛の術

 女の子の衣服だけを脱がす恐ろしい術です。

 たぶん、世の中の男性はみんな使いたいはずです。


●神風の術

 女の子のスカートをめくる恐ろしい術です。

 たぶん、世の中の男性はみんな使いたいはずです。


●電子模型クラブ/アイドルメディア研究室/VRMMORPG愛好会

 これらがすべて余計です。

 このほかに「親指シフトを守る会」などがあるようです。


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