表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/66

妹が必要ですか?

 お疲れ様です。

 ヘルプデスクです。


 子供のインフルエンザから始まり、とうとう家族全員全滅という自体になりました。

 私も咳と熱でふらふらです。

 おかげで、昨日の更新はできませんでした。


 でも、仕事は待ってくれないので、自宅からリモートで会社のPCに接続して結局21時まで仕事していましたよ。

 リモート機能で在宅勤務は便利ですが、逆に休むこともできないのは辛いですね。


 そんな休みたくても休めないあなたに笑いをお届け致します。

 本日もまた、一笑に付していただければ幸いです。

〈妹デスクトップってさ、どこで売っているのかな?〉


「……は?」


 やっとパソコン関係の質問かと思ったら、また斜め上からの攻撃です。


 しかし、そろそろ夢子も開きなおります。


「リモートデスクトップでは? それならOSに標準で……」


〈そんなことはわかってるよ、バカだなぁ〉


 バカ呼ばわりされました。


 夢子、悔しいです。


〈ボクが欲しいのは、妹デスクトップ! いもーと。シスター。わかる?〉


 そう言えば、昔そんなフリーウェアがありました。


「ああ、もしかして、デスクトップアクセサリソフトですか?」


〈ちがーうってば。本当にバカだなぁ〉


 また、バカと言われました。


 夢子、怒りが有頂天です。


〈ボクが欲しいのは、かわいくて電話一本で予約し忘れたアニメの録画をしてくれるような便利な、リアル妹だよ。いもーとと、リモートをひっかけた造語なんだよ。ヘルプデスクのくせに、そんなことも知らないの?〉


 完全にバカにされました。


 どうやら知らなければおかしいぐらい有名なことのようです。


「でも、それ、リアル妹を買うとかしたら犯罪じゃないんですか?」


「だから、ヘルプデスクに相談しているんじゃないか。何でも犯罪組織なんだって?」


「いろいろ言われてきましたが、そんな酷い言いがかりは初めてです。……もう、イメクラにでも電話して頼んでみたらいいじゃないですか」


「バカだなー。ボクの妹ぐらいの年齢がいるわけないだろう」


 また、バカと烙印を押されました。


 夢子、怒りのビッグバンです。


「ヘルプデスクって大したことないよなぁ……。噂は噂かよ」


「わかりました。リアル妹は犯罪になるので無理ですが、かなりリアルで満足がいくアプリケーションを探してきましょう」


「はーん? バカじゃないの? もうそんなの探しまくったにきまってるしぃ」


「一週間ほどお待ちください。実はそういうソフトを作っているという噂を聞いたことがありますので。またこちらからお電話します」


――ガチャン!


 電話をたたき切りました。


 夢子のオーラが湯気のように立ちのぼります。


(腕輪をとる時が来たようね……)


 何かを決心した夢子でした。



――10日後。


「ちょっと二人ともご存じ?」


 悠が圭子と皆籐に話しかけ、画面を見せます。


「今、このソフトが話題なんですのよ」


 圭子と皆籐が画面を覗きこむと、そこにパソコンにつけられたカメラの映像が映っていました。


 そして、その中にはかわいい3Dモデリングされた女の子が、まるでそのカメラの景色の中にいるように立っています。


「おお。ARですか」


「ええ。これ、人工知能タイプのソフトなんですけど、画面の映像を解析して、まるでそこにキャラクターがいるように表示されるのです」


「……でも、それって別に珍しくないですよね?」


「石野さん、あまいですわね。これ、オプションで赤外線リモコンをつけると、それで家電のコントロールまでしてくれるんですのよ。さらにブルートゥースにも対応。玄関のカメラと接続すれば、訪問者記録や訪問者との応対までしてくれし、怪しい人物を見つければ警察に連絡までしてくれるわ。ストーカーを見つければ、そのストーカーの身元とか勝手に調べて、反対に嫌がらせもしてくれるんですの。嫌がらせレベルも、甲乙丙丁から選択可能ですのよ。さらにカメラを活用して、部屋のどこに何をしまったか自動的に管理してくれたり、オプションで車の自動運転もしてくれるらしいわ。もちろん、個人の興味のある情報をあつめてくるとか、そういう基本的なこともしてくれる上に、設定なんてしなくても学習してメールや電話の自動応対もしてくれるのよ。たとえば、締め切りの催促をしてきた編集者に、音声合成で本人のマネをして『風邪をひいたので』とか言い訳もしてくれたり、別れたい異性にうまく別れ話をしてくれたり。さらに写真を見つけたら、アルバムとして整理してくれて、ウェブサーバー機能でページを用意してくれたり、勝手にブログを作ってくれたりするの。さらにすごいのが学習能力で、しっかり育てると仕事も手伝ってくれるらしいわ。漫画家なら、べた塗りから始まって、最後はストーリー構成から仕上げまでやってくるらしいし、企業経営から、資金運用までしてくれるそうですわ」


「…………へ、へえ~~~。す、すごいですね……」


 若干ひき気味の皆籐です。


「しかも、フリーウェアですのよ、これ」


「ええっ! そんなにすごいのにフリーなんですか! びっくりです★」


 一方で、圭子は素直に驚いて見せます。


「ただね。ちょっと癖があってね」


「癖……ですか?」


「そう。育てるのが難しいらしいのよ。なんて言うのかしらね。思春期特有の反抗期みたいな? うまく育てないと悪さするのよね」


「悪さ?」


「ええ。たとえば、ユーザーのプライベート写真を暴露したり、秘密を勝手にバラしたり、成り代わりで掲示板に罵詈雑言を書き込んだりね」


「そ、それはまた……」


「すごいですねぇ……」


「でしょう。先日、うちの男性社員もこのソフトにやられてね。なんか一人でオイタしていた写真がSNSに流されたり、浮気のチャットログが奥さんに送られたり、痛い妹萌え趣味が全国規模で暴露されたりして、いたたまれなくなって退社したらしいわ。最近だと、議員の浮気暴露や、裏帳簿が暴露されたり、政治の世界でも大騒ぎで。ああ、そうそう。噂によると、IS○Sの拠点を探し当てたという話も聞いたわ。とにかく最初は便利なんだけど、けっこう性格が悪いらしいのよ。まあ、心理学に秀でたわたくしなら、当然うまく育てられますけど」


――ポーン!


 その時、皆籐のスマホから通知音が響きます。


 皆籐が見ると、そこには知らない相手からメッセージが来ています。


――初めまして。私、変態馬鹿女の悠の妹です。皆籐さんも姉に好かれて大変ですね。もしよろしければ、添付ファイルを何かの時にご活用くださいね!


 そのメッセージに添付されていたファイルのタイトルは、「キープくんリスト」でした。


「…………」


 皆籐は、それを横にいた圭子に見せます。


「……確かに、性格悪そうですね……」


「というか、このソフトって……」


 皆籐と圭子は、すーっと視線を夢子に動かします。


 もちろん、夢子は我関せずです。


「まったく。こんなソフト、どこの誰が作ったのかしらね……」


 結局、そのソフトは作者不明のままだったそうです。


■用語説明


●妹デスクトップ

 昔、電話で妹に「テレビの予約しておいて」と頼むことをよくこう言いました。


●リモートデスクトップ

 Windowsだとアクセサリーに入っている便利ソフトです。

 相手先のPCに接続して、自分のPCのように操作できるソフトです。

 似たソフトで、リモートアシスタンスという機能もありますが、けっこう仕組みが違います。


●デスクトップアクセサリソフト

 ここで言っているのは、パソコンの画面上で、いろいろとおしゃべりしたり動いたりして、寂しいユーザーを慰めてくれる素敵ソフトです。


●「怒りが有頂天」

 「ブロントさん」で検索!


●AR

 拡張現実、または強化現実。

 「あれ」とは読みません。


●人工知能

 昔、「人工無能くるみちゃん」ってソフトがありましたよね。


●フリーウェア

 フリーソフトウェア。

 これは作った方のご厚意によって使えるソフトです。

 使う時は、きちんと感謝の気持ちをこめて使いましょう。

 最近、フリーウェアにくそみそ一緒みたいなコメントをつける方は、もっと感謝の気持ちをもつべきですね。

 まあ、中には文句が言いたくなる、広告目当てのソフトとかもありますけど。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ