プロフェッショナルですか?
おはようございます。
ヘルプデスクです。
本日は休日ですが、働いていらっしゃる方も多いかと思います。
今日も、そんなあなたの気分転換になればとお贈り致します。
ただし、目玉の話は、次回です(笑)。
ちなみにいつもより1時間遅れなのは、寝坊したからではありませんよ。
本当ですよ!
本日もかるく読んで、一笑に付してください。
※2016/02/14:タイトル修正
「本日の夕方より、新人さんがきます」
始業時のヘルプデスクで、皆籐がみんなには説明します。
どうやら産休で休んでいる人の代わりのようです。
「皆籐部長。午後からってパートさんなんですか?」
夢子の質問に、皆籐は相変わらずの面相で首を横にふり「いいえ」と答えます。
「時間は短いですが、一応派遣社員としてきます。ただ、学生さんなので……」
「学生さんなのに派遣社員なんですか!? いいんですか、それ?」
「ええ。どうやら、歴戦のプロ派遣社員らしいですから」
「……はあ」
学生と言っても大学生は、何歳でもなれます。
そう考えれば、不思議はないのかも知れません。
「えー。ヘルプデスクでは、みなさんもご存じの通り、多種におよぶ質問に対応するため、ある分野のプロフェッショナルな特技や知識がある方を招いています」
「……皆籐部長。それ、始めて聞きました」
「……そう言えばそうかも知れませんね」
皆籐は、意外にアバウトです。
「たとえば、花氏さんはキレやすいですが、コンピューター関係の専門家として雇いました」
「……その『キレやすい』という修飾語は必要でしたか?」
「それから、上空さんは経理の専門家」
「……え? 経理?」
「経理」
「…………」
夢子は思わず悠を睨みます。
しかし、悠は視線を合わさずそっぽを向いたままです。
「上空さん、心理学を学んでいるとか何とか……」
その夢子の疑問に、悠は反応しません。
答えたのは、皆籐でした。
「ああ。またそう言ったんですか。なんか『経理は地味だから嫌。心理学のがカッコイイ』と、いつも言っているんですよ」
「じゃあ、本当は心理学なんてやっぱりやってないんですか?」
「いえ。彼女も少しは学んでいますよ……趣味で」
「趣味なのかよ!」
思わず夢子は突っこみます。
「しかも、うわべだけですね。たぶん、心理学のマンガとか読んでいるだけだと思います」
「そ、そんなことありませんわ、皆籐さん!」
やっとふりむいた悠が、我慢できず反論します。
「ちゃんと普通の本も読んでいますわよ! 『はじめての基礎心理学』とか『サルでもわかるゲシュタルト崩壊』とか!」
「あなた、2年前から読んでいる本が変わっていませんね……」
「サル以下なんだ」
「ウッキーィ!!!」
ご丁寧に夢子に猿まねで反応する悠は、もしかしたら律儀な子なのかもしれません。
「まあ、お馬鹿な変態女のことは放置して……」
「お、お馬鹿ですって! そのうえ、このわたくしをへ、変態女呼ばわり……。しかも、放置プレイ…………はぁ、はぁ……。なんて冷たい目で……」
なぜか身震いさせながら、うっとり目になる悠を本当に完璧に放置して、何事もなかったように皆籐は言葉を続けます。
餌を与えながら、その後は歯牙にもかけずに無視する皆籐は、もしかしたら真性のSなのかもしれません。
「話がそれましたが、本日から来る子もすごいですよ。医学方面のプロフェッショナルです」
それを聞いて夢子は、「ああ。医大の学生さんかな」と思いました。
しかし、皆籐が妙なことを言いだします。
「とにかく、新人さんは部活もたまにでなくてはならないし、中間テスト、期末テストなどの学校行事もあるのであまり出てこられませんが、きっと戦力になってくれることでしょう」
「なんで、そんなわざわざ出勤時間が少ない人を……というか、大学生じゃなく高校生なんですか?」
「ふふふ……。花氏さん、よい質問です。ですが、その答えは会ってからのお楽しみと言うことで」
棒読みの笑い声をだしますが、もちろん皆籐の顔はまったく変わっていません。
暗闇でしたからライトを照らして、このような笑い方をされたら、かなり不気味で怖いことでしょう。
「……ところで、皆籐部長」
話を聞いていて、夢子はある疑問が生まれました。
「さっきプロフェッショナルを雇っていると仰っていましたが、皆籐部長はなんのプロフェッショナルなんですか?」
「……ふふふ。私ですか」
皆籐は思わせぶりに、無表情で笑ってから背中を向けます。
「実は私は――」
「ああ、言わないでください! ちょっと当ててみますから!」
「……え?」
ふりむいて開口しようとしていた皆籐は、そのまま表情を固めます。
まあ、もともと変わっていませんが。
「きっとなんかすごい業種のプロフェッショナルなんでしょうね!」
「…………」
「法律とか、実は物理学とか。STAP細胞ぐらい見つけていそうですよね!」
「いや……ないものを見つけるのは……」
「とにかく部長なんですから、きっとすごいものですよね! ちょっと待ってください。考えてみますから!」
「…………」
皆籐は、冗談のつもりで思わせぶりな態度をとったことを後悔しました。
おかげで「私はただ、この部署を押しつけられているだけなの管理者なんです。マネージメント業務だから、特に専門分野とかないのです」と、本当のことが言いにくくなってしまったのでした。
■用語説明
●パートさん
パートさんは、基本的に社員扱いなんです。
●「歴戦のプロ派遣社員」
前、派遣社員のドラマがありましたが、なんかブームにのっただけの内容があまりないコメディでしたね。
●プロフェッショナル
プロでフェッショでナルな感じです。
●経理
実は悠は、数字に強いです。
経済学の大学を出ていますし、簿記の資格ももっています。
経理系業務歴もあります。
でも、本人は「経理は地味」だと思っているようです。
●ゲシュタルト崩壊
歯車一つでは意味がないけど、組み合わさって動作することで意味が生まれるみたいな?
よくある台詞で「お前なんて歯車の一つに過ぎない!」と言われると、「その小さな歯車1つなくなっても、機械は正常に動かなくなるんだ!」と反論するシーンなどもありますが、実際は社会なんて「精密機械」ではなく「ボールプール」みたいな物かもしれないので、そうなるとボール1つなくなったところで痛くも痒くもなかったりします。
●「ウッキーィ!!!」
女性が言うと意外にかわいかったりします。
●真性のS
真性はすごいです。
●「医学方面のプロフェッショナル」
次回登場予定(仮)の新キャラクターにご期待ください。
●「実は私は」
同名の漫画は関係ありません。
●STAP細胞
本当にあるんです!
証拠はありませんが!
ちなみに、今だと「SMAP最高」とか時事的に良いかもしれません。
それよりは、「STOP!ひばりくん」とか面白かったと思います。
……どうでもいいですね。
 




