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雇ってもらえるのですか?(プロローグ)

机の前の物語が始まります。

よろしくお願い致します。


※2016/02/14:タイトル修正

 彼女は派遣会社の営業と共に、とある会社のヘルプデスクになるため会社説明を聞きに来ています。


 「会社説明」と言っているけど、要するに「面接」であるのは周知の事実。


 表向き、派遣社員を面談して採用・不採用を決めてはいけないので「面接」とは言えないのです。


 まったく、ばからしい話です。


「初めまして。【花氏(はなうじ) 夢子(ゆめこ)】と申します」


 六人ぐらいかけられるテーブルが置いてある会議室で、夢子は正面に座る20代前半に見える男性に挨拶しました。


 すると、彼も無表情で頭をさげます。


「初めまして。ヘルプデスク部の部長をやっています、【皆籐(かいとう)】です」


 多くの人から「何考えているのかわからない」と評される彼は、まったく本当に無表情(ポーカーフェイス)


 それどころか、その目は虚ろで、少し危ない人にも見えて怖い感じです。


 ちなみに若く見られますが、本当は30代前半のオヤジ……ではなく歴戦の猛者。


 つかみどころがない外見ですが、たたき上げで部長になった実力者なのです。


「職歴は見させていただきました。まずは人柄を知りたいのですが、ここに書かれている趣味と特技なのですが……」


「はい! 趣味はインターネット! 特技はパソコン操作です!」


 彼女はない胸を張って、ダメダメなパターンを答えます。


 派遣会社の営業担当者に「修正しろ」と言われていたのに修正しなかった部分です。


「インターネットが趣味って、具体的にはなんでしょうか? ネットサーフィンとか、チャットやっているとか、動画を見ているとかですか?」


「あ、それはですね――」


 あわてて、営業担当者が口を挟みます。


 30代後半でこの仕事も長い彼は、この手の対応などお手のものです。


「――花氏さんは、まだ若いながらも豊富な知識を活かして、動的なコンテンツが豊富なサイトを作ったり、SNSの構築をしたり……」


「え? 違いますよ?」


 しかし、サポートされている本人から否定されてしまいます。


 少し幼さの残る彼女は、握り拳を作りながらも力強く語りはじめます。


「それは趣味ではなく仕事です! 私の趣味は、パケットキャプチャーしてハアハアしたり、インフラ構成を調べてニヤニヤすることです! あとサーバーのセキュリティホールを見つけては、ニヨニヨしたりしています」


「……なるほど、よい趣味ですね」


「えーっ!?」


 営業担当者は、もうこの時点でついていけなくなっています。


「それでは、特技がパソコン操作というのは?」


「はい。パソコン検定を受けていまして……」


「そんな平凡なので特技なのですか?」


「はい! パソコン検定八段です」


「えーっ!? 段位あるの!?」


 また、営業担当社が驚嘆の声をあげますが、二人に無視されます。


「それは失礼しました。段位持ちでしたか。それは平凡ではありませんね」


「紅帯です!」


「紅帯ってなにっ!?」


「ほう。強そうですね」


「強いですよ!」


「強いの!?」


「では、採用と言うことで」


「しちゃうんですかっ!?」


「ありがとうございます!」


 こうして、夢子の仕事は決まりました。

※次回更新予定:同時更新



■用語説明


●パケットキャプチャー

 ネット上に流れる情報を見ることですが、ハアハアするにはかなりの技術が必要です。


●インフラ

 インフラストラクチャー(社会基盤)の意味から来ていますが、ぶっちゃけますと、この場合はネットワークの構成的な、そんな感じのようなものだと思われます。


●セキュリティホール

 見ちゃいけない、触っちゃいけない穴です。

 それよりも、ニヨニヨの意味が知りたいところです。


●パソコン検定八段

 ありません。


●紅帯

 柔道の場合、女子なら八段から、男子なら九段から紅帯です。

 強いです。

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