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切り裂き女

私は何も悪くない。何も…。


「もう嫌…」


真っ暗な部屋の中で私はつぶやいた。

私は同級生にいじめられている。理由なんて特にない。

私が暗いだとかキモいだとか何かと理由を付けては私を痛めつける。ただ私のことが気に食わないだけなのだろう。



いつものようにパソコンを開いては、ネットに愚痴を書き込む。

私はなんて弱いの?


「あいつらに天罰を、地獄を」


呪いの言葉を書き連ねる。

ふとホームページ上の広告に目が行った。


「魅録屋…何これ?」


そこには

『あなたの妄想が現実に!ご相談は魅録屋に』

と書かれた、いかにも胡散臭そうな広告が載っていた。

何気なくクリックしてみる。


『あなたの考えた都市伝説が現実に!?メールにてあなたの考えた都市伝説を送ってください。初回無料です(^_^)v』


「ますます怪しい…でもいっか。どうせ無料だし」


そう思い、画面を進めていくと注意書きのページに行き着いた。

『都市伝説を考える際には以下の点に注意してください』

何やら細かい字で書き連ねてある。


「読むのめんどくさいなあ…」


下にスクロールして『次に進む』をクリックした。


「…あれ?進まない……」


画面に書き連ねられた文字の一部が赤く変化しているのに気付いた。


「これを読めってこと?」


赤字の部分を要約すると次のような内容だった。

・都市伝説は不特定多数に及ぶものでターゲットを個人には絞れないこと。

・条件を加えることでターゲットを絞ることは可能であること。

・より多くの人に知ってもらうことで都市伝説の持つ力が強くなること。

・人から人へ伝わることで都市伝説の内容が変質する可能性があること。


「随分、詳しく書かれているわね…」


赤字の注意事項を読み終わり、『次に進む』をクリックした。

今度は次の画面に進み、都市伝説の内容を書き込む画面が出てきた。


「どういう仕組みなのかしら…まあいっか」

「どんなのがいいだろう?より直接的にあいつらを苦しめるには…」



「これでよし!」


半信半疑で文章を送信し、その日は寝ることにした。



次の日、例のいじめっ子達はいつも通り登校していた。


「なんだ…あいつら学校来てるじゃん…何ともなってないし…」

「あんた今、こっち見てたよね?」

「きもいからずっと下見てろって言ったじゃん!」

「何その目?マジむかつく」


罵声と暴力が続く中

(いつものことだ。我慢しろ。あんなのを信じた私がバカだったんだ)

心の中でそうつぶやき、じっと堪えた。



(やっぱり嘘じゃん…今日もネットに愚痴を……)

(メールが入っている!誰からだろう?)


差出人の欄には『魅録屋』の文字


『ご利用ありがとうございます。あなたの考えた「切り裂き女」が現実のものとなりました』

『またのご利用お待ちしています』


メールには大きなはさみを持った不気味な女の写真が添付されていた。


「何……これ…」


普通ならただのいたずらだと思うだろう。でも何かとてつもなく恐ろしい感じがしてただのいたずらには思えなかった。



あの不気味な女の姿が頭から離れず、眠れないまま朝を迎えた。


「行ってきます…」


一睡もできずふらふらしながらも学校に行った。



いつも通っている通学路

その時とてつもない悪寒が全身を駆け巡り、はっと息をのんだ。


「ここ…あの写真に写っていた…」


あの不気味な女の写真の背景にうっすらと映っていたのは紛れもなくこの通学路だった。

全身の毛が逆立つのを感じ、恐ろしくなってすぐに学校へ向かった。


(いつも通りの学校…じゃない…あいつらがいない!)

いつも私をいじめてくる彼女たちの姿がなかった。


先生が青い顔をして教室に入って来た。


「皆さんにお知らせがあります」


私の予感は的中した。


「加藤さん、樋口さん、池田さんが昨日帰宅途中に不審者に襲われました。

皆さんも十分注意してください」


先生に聞くと3人とも重体で現在入院しているとのことだった。

私はあのとき送信した都市伝説の内容を思い出していた。



「切り裂き女」

大きなはさみを持った大柄な女。昔、容姿のことでいじめられていた為、いじめっ子に強い怒りを持っている。

帰宅途中の子供に声をかけ、いくつか質問する。嘘の返答をすると指を切り落とされる。

質問の答えからいじめっ子だと分かると腕を切り落とされる。質問の途中で逃げ出すと足を切り落とされる。

容姿を馬鹿にすると口を裂かれる。



お見舞いに行きたいと嘘をついて彼女たちの病室を聞き出そうとしたが、なかなか教えてくれない。

そんなに酷い怪我なのだろうか?

ただただあいつらの哀れな姿が見たい、そう思って必死にお願いし、何とか病室の番号を聞き出した。



(あいつらの哀れな姿を見ながら、ざまあみろって言ってやるんだ!)

そんな風に考えながら病室のドアを開けた。


でもそんな考えもすぐに消え去った。


腕や足の無い彼女たちの姿を見て、絶望した彼女達の目を見て、私は恐ろしくなってすぐに部屋を飛び出した。


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


一心不乱に走った。

ふと何かにぶつかった。


「ごめんなさい前見てなくて……」


言葉を失った。

そこにはあの女が…切り裂き女が立っていた。

彼女は何も言わずにこちらを見ていた。


「喜んでいただけましたか?」


何者かの声がする。


「誰?」


コツコツと後ろからおかしな恰好をした小柄の男が歩いてきた。


「いや〜あなたの作り出したこの子、すごいですねえ。

いじめっ子を3人も病院送りにしちゃいましたよ」

「これなら皆が恐怖していじめっ子もいなくなるんじゃないですか?」


「ほんの冗談のつもりだったのに」


「いえいえあなたが作り出した都市伝説です。あなたの手柄ですよ」


「うるさい!こんな醜い化け物知らない!私は…」



気が付くと目の前には首の無い死体が転がっていた。


「どういうこと…」


「おやおや化け物なんてひどいことを言いますねえ。彼女は容姿を気にしていたのに」


「あなたが悪いんですよ」



嘘の返答をすると指を切り落とされる。質問の答えからいじめっ子だと分かると腕を切り落とされる。

質問の途中で逃げ出すと足を切り落とされる。容姿を馬鹿にすると『首を切り落とされる。』


都市伝説は変化していく。より残酷で救いのない方へと…。


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