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第1話 トリップ
「白澤さん、ちょっとこれ、持って行っといてくれないかしら。教室まで」
私は担任の遠野先生に呼び止められた。
遠野先生は、優しくて美人で評判。
女子なんかは、美肌の秘密だとかなんとかかんとか、休み時間になるといっつも聞いてる。
私は全く興味ないけど。
だけど、押し付けられた学級委員のせいで、こうやって雑用をよく頼まれる。
遠野先生と話したい人が雑用係になればいいのに。
まったく……。
「はい。これ……ですか」
わたしが視線を向けた遠野先生の持っているものは、大量のプリントだった。
何これ、すごく重そうなんだけど。
これを私に持って行けと?
私は嫌な気持ちを顔に出さないようにして、プリントを受け取った。
これ、もしかして全部課題?
宿題ヤバいことになるじゃん。
受け取りたくない。
今すぐごみ箱に捨てたい。
でも、この先生、私の事……。
ちょっと、信頼してるかも?
なんて考えながら、私は階段を降り始めた。
ふぇ~、重いよぉ。
手が痛い。
持ちにくい。
私はつるっぴかの階段をふらふらしながら降りていた。
滑りそうで怖い。
やっと降りたと思ったら、もう一つ下だった。
もう嫌だ、と思いながら、私は階段を降り始めた。
その瞬間、私は誰かに背中を押された。
そして、重いプリントと一緒になって、階段から落ちていった。
一瞬、人影が見えた気がした。




