*承・更*
お父さんの転勤が決まったのは、一年生の時の夏休み前だった。
だから。
僕は、終業式の日にクラスのみんなとお別れして、夏休み中に引っ越して、夏休みが終わってから、新しい学校に通い始めたんだ。
それが、僕の初めての転校だった。
でも。
元々、お父さんの仕事は転勤が多くて、それまでにも何回か引っ越ししてたから、僕は転校するってことがあんまり大事なことだと思ってなかった。
それに、新しいクラスのみんなは僕に優しくしてくれたし、仲良くしてくれたから。
だけど。
教室の後ろに並んでる自由研究とか、観察日記をつけてるアサガオとか、そういうのが僕だけないのは少し寂しかった。
そして。
二年生になる前に、僕はまた転校した。
次の学校は南の方で、言葉とかが分からなくて結構困ったりもした。
それから。
二年生の内にまた転校して、三年生の時には二回も転校した。
だから。
途中から「またすぐに転校しちゃうんだろうな」とか思っちゃって、新しいクラスのみんなとあんまり仲良くできなくなっていった。
僕が結構、人見知りだっていうのもあったし。
それで、大体一か月前。
この町の隣の町に引っ越してきて、僕はそこの学校に通うことになった。
で、やっぱりいつもみたいにうまく仲良くできなくて、クラスで一人ぼっちだった僕に、
「なーなー、昨日の宿題やってきた? やってきてたら見せてくんない?」
「あ、シュウだけずるい。ボクも写させてもらおうと思ってたのに」
って、声を掛けてくれたのがシュウとダイスケだった。
二人は幼稚園からの幼なじみで、クラスの人気者で。
そして――ようやく出来た僕の友達だった。
ちょうどその時、僕たち四年生はバス遠足で、クラスで四人一組の班を組むことになった。
だけど。
僕のクラスは人数が足りなくて、一班だけ三人一組になることになった。
それで僕とシュウとダイスケ、三人で班を組んだ。
そして。
ちゃんと班での役割分担を決めて、前の日には三人でお菓子も買いに行って、いよいよバス遠足の日になった。
目的地は、この町。
そのバスの中で、シュウが言ったんだ。
「オレ、このチームの名前考えてきた」
「チームって、僕たちの班のこと?」
「おぉ、その通り」
「別に、これはチームとかじゃないんだけど……まぁ、いいや。で、どんな名前さ?」
「いやー、それがさっきまでは覚えてたんだけどさ、なんか忘れちゃった」
「ダメじゃん、シュウ」
「いや、なんとなくは覚えてるんだよ、なんとなくは」
「なんとなく何を覚えてるのさ?」
「えーっと……ほら、オレたちだけ三人チームじゃんか? だから、頭が三つある――そうそう! こないだケンタに借りたゲームに出てきたヤツの名前だよ!」
「あぁ。それって、もしかして――」