異世界恋愛でよくある馬車の距離には気を使うけど情報伝達能力は現代並のナーロッパ世界の舞台裏的な作品。
「婚約破棄だ。エリザベーター!」
「殿下、理由は・・・」
「真実の愛に目覚めたのだ!ア~ハハハ!・・・・」
☆☆☆王都某貴族邸宅
「奥様、大変ですわ!学園付の侍従から速報ですわ。王宮で婚約破棄が起きましたわ!」
「ハンス、早速魔道ハトを飛ばして!」
「はい、奥様」
「ポポポポー!」
「頼むぞ。家門の者に伝えてくれ!」
「ポポー!」
☆☆☆某男爵家
「奥様!寄親から魔道伝書鳩です!」
「何ですって、婚約破棄!伝書犬で皆に伝達だわ!」
「ワン!ワン!」
「頼むぞ。リキ、この手紙を皆に届けてくれよ」
「ワン!」
「奥様は陽気で話題が豊富ってね。評判になるぜ」
☆☆☆王都某吟遊詩人ギルド
「おお~い。ジミー、贔屓の男爵夫人より伝書犬が来たぜ。学園で婚約破棄だ。とりあえず速報版を刷るから愉快に踊って売ってくれ!」
「はい、ギルマス!」
・・・・・・・
「あ~♪王宮で婚約破棄だ~。ヨイヨイっと。殿下は真実の愛に目覚めたよ~♪速報版に詳細よろ~!」
☆☆☆某劇場
「おい、吟遊詩人に負けてられない。即興で婚約破棄の台本を書け」
「ええ、支配人、詳しいこと分かりません」
「良いから!速さが命だ」
☆☆☆某貴族邸宅幼女の部屋
「ねえ。マリー、婚約破棄ごっこしよう・・・」
「お嬢様、どうしてそれを・・・」
「皆、言っているの~」
「皆?これはまた・・・否定しづらいわ・・・」
☆☆☆公爵家タウンハウス
「エリザベーターよ。学園を休学し領地で休養したらどうか?」
「ええ、そうよ。騒がしくなるわね」
「お父様、お母様、分かりましたわ」
私はメイドのケリーと護衛騎士のリヒターと一緒にお忍びで領地に戻った。
領地まで馬車で十日というところかしら・・・・
旅から三日目ぐらいかしら。
「ヒ、ヒヒン」
「お嬢様、馬がバテています。少し休みましょう」
「ええ、そうね。暑いですものね」
村に寄り水を頂こう。
「あの、少しお休みさせて下さいませ」
農家の方にお願いしたら・・・
「ヒィ、婚約破棄された・・・エリザベーター様がうちに?」
農夫が騒ぎ出した。
何故、知っているのかしら・・・
家から奥様と子供が出てきた。遅れてお婆さまも出てきたわ。
「エリザベーター様、気をしっかりもたなくてはいけませんよ」
「何か分からないけど、自慢出来る~」
「まあ、エリザベーター様、アメちゃんをどうぞ・・・」
えっ?何故知っているの?
「オホホホホホ、皆様、私はアグリッタですわ・・・」
寄子の学友の名を名乗った。
「「「嘘!」」」
「この時期、ほっつき歩いている貴族令嬢はエリザベーター様しかいないよ!」
馬鹿なようで妙に勘がするどいわ。
それからも行く先々で・・・・
平民達から・・・
「あ、婚約破棄された女だ!」
「無礼だぞ!平民!」
後ろ指を指されたり。
「頑張りなよ!」
「ええ・・・」
知らないおじ様に励まされたり・・・・
リヒターの提言で街をさけることにした。
「お嬢様、怪しいです。街道を避けましょう」
「ええ、そうして」
森の中を通るようにしたわ。
予定だと馬車で10日だけど、15日になるのかしら・・・・
「ケリー、食料を買ってきてね」
「はい、お嬢様」
しかし、ケリーも。
「あ、悪役令嬢のメイドだ!サインして!」
「ヒィ、違います!」
更に事態は悪化した。
これは何なのかしら・・・
ケリーも怯えている。
「グスン、ウワ~ン、お嬢様、怖いです」
「森を進みましょう」
「小生が狩りをします」
「お願いします」
森で野宿をすることになった。
森・・・・や平原では黒瞳族が出るかもしれない。
黒髪と黒い瞳の不吉な一族だわ。
彼らが現われると不思議に盗賊が現われて助けられて恩を着せられるわ。
「ヒ、ヒヒ~ン!」
「どうしたの?リヒター」
「馬車がはまってしまいました」
「まあ・・・」
今は夜、どうしたら良いかしら。馬車で後三日はかかる。
あら、何故、私は馬車の日数にこだわっているのかしら。
「お嬢様、隠れて下さい」
物思いにふけっていると、昼間のように明るい光に灯された。
ガタゴト音がする。
「誰か!」
リヒターが誰何するわ。
近づいたら分かった。魔道車に乗った黒瞳族だわ・・・
「あ、どうも、ササキです。実は転移してしまって」
「エリザベーター・スヒンです」
「馬車はまっちゃいましたね。今、クレーンでつり上げますから」
ササキという女子だ。鉄兜を被っている。
「あ、これ、ヘルメットです。この車は不整地運搬車です。この世界道が悪くて狭いからこの子を召喚しました」
「そう・・・」
疑問に思った。
「おっと、ほら、もう大丈夫ですよ」
だから聞いた。
「あのササキ様、私のことをご存じですか?」
「ええ、12日前に転移したばっかりですよ。知りませんね」
12日前、婚約破棄された日だわ。
「では、お気をつけて」
お礼もさせずに去ろうとした。
だから。
「あのお待ち下さい」
呼び止めて相談をした。
すると、ササキ様はしばらく腕組みをして考えた後。
「これはあれですよ。ネット小説の感想欄にも流行があるのですよ。馬車の日数を気にする読者の方々多くいますが、情報伝達に関しては皆無ですよ」
「意味が分かりませんわ・・・」
「まあ、良いです。あまり人目に付かない方法を教えます。なろうファンタジーにはもう一つ特徴があって・・・」
・・・私はササキと一緒に領地に向かったわ。ササキは馬車の前を先導する。
ガタゴト、ガタゴト~
と音が鳴りササキの服も目立つけど・・・・
「「「・・・・・」」」
街道ですれ違う平民達は何も言わない・・・・
何故?
「それは私でも分かりません。何故か、現代日本人が異世界転移をしてもその姿はスルーです」
「そう・・・」
領地に戻った。屋敷の前で使用人達が整列してお出迎えしてくれたわ。
「「「「お嬢様、お帰りなさいませ!」」」」
「爺、久しぶりですわ・・・」
「はい、お嬢様、お荷物を持ちます・・・おや、その方は?変わった方ですね」
「どーも、ササキです」
「爺、分かるの?この異形が?」
「ええ、当たり前ですが・・・」
「なら、爺、私は婚約破棄されましたわ」
「ええ、旦那様から早馬で届きました。私らにとってお嬢様はお嬢様です」
「皆様・・・」
王都を出てから初めて人間に出会った気持になったわ。
「さあ、やるわ!馬鹿王子対策!負けてられないわ!」
「お嬢様、その意気でございます!」
・・・ナーロッパの住民、もしかして、全力で情報を伝達する使命があるのかもしれない。
最後までお読み頂き有難うございました。




