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暴食の剣  作者: 結城 からく


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2/2

後編

 名乗りを聞いたマルディンは目を丸くした。

 それから取り巻きを見回し、これ見よがしに大笑いする。


「"暴食"だって? そいつは世界最強の剣士の二つ名だ! てめえみたいな飲んだくれが名乗るもんじゃねえよ」


「つまり偽物だって言いたいのかい?」


「そうに決まってるだろうがッ!」


 マルディンが漆黒の剣を振るう――否、振ろうとした。

 攻撃を仕掛ける寸前、彼の右手と剣が丸ごと消失したのである。

 手首の断面から噴き出す鮮血を見て、マルディンは思考停止する。


「は……?」


「すまんね。隙だらけだから喰わせちまった。恨むなら弱い自分を恨んでくれ」


 エイクが軽い動作で剣を横薙ぎに動かす。

 鞭のようにしなり伸びた刃がマルディンの首を刎ねた。

 さらに切り離された頭部に刃が巻き付くと、溶かすようにして吸収してしまう。

 一瞬の出来事だったので、エイク以外の人間は目視すらできなかったろう。


 取り巻き達は、首を失って倒れるマルディンを目の当たりにしてパニックに陥る。


「うおおおああああああああっ!?」


「頭がやられたっ!」


「やべえぞ、逃げろッ!」


 取り巻き達が酒場の出口へと殺到する。

 そこにエイクの刃が襲いかかった。

 変幻自在に歪み浸食する斬撃は、取り巻き達を薙ぎ払うように解体する。

 そして残骸を啜るように溶かして吸収していく。

 酒場のマスターは頭を抱えて怯えていた。


 致死の剣を振り回すエイクは、平然とした顔で述べる。


「悪いが逃がすつもりはないんだ。こいつが腹を空かせてるもんでね」


 ものの一分足らずで荒くれ者は全滅した。

 彼らは誰一人として酒場から出られず、エイクの剣に捕食されてしまった。

 剣を鞘に戻したエイクは、恐怖で動けないマスターに詫びる。


「騒いじまってすまんね。迷惑料はこいつらの死体から取ってくれ」


「はっ……い、いえ……」


 マスターは震えながら応じる。

 そして酒場を出ていこうとするエイクに恐る恐る問いかけた。


「……あんた、本当に"暴食"のエイクなのか?」


「ああ、そうさ。ただの薄汚れた飲んだくれと思ってたろ」


「えっ!? いや、そ、そんなまさか……」


「ははは、気にしないでいい。周りからどう見えてるか分かってるよ」


 エイクは肩をすくめて笑う。

 そして彼は言った。


「傲慢、強欲、嫉妬、憤怒、色欲、怠惰……もし他の連中が来たら伝言を頼むよ」


「で、伝言……?」


「エイクがお前らを喰いたがってる、ってな」


 獰猛な目で舌なめずりをした後、エイクは酒場を出て行った。

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