概要~しゃちんとまる秘ちゃん~
「しゃちん!」
ガラリッ。
引き戸の向こうから、ころころした影がとびこんできました。
まる秘ちゃんです。
丸っこくて、かわいい子です。
「これみて、ちょっ!」
まる秘ちゃんが胸にだきかかえていたのは――
きらきら、きらきら。
光をあつめるような絵でした。
「こ、こりはあああ〜〜〜!!」
しゃちんは目をまるくしました。
まる秘ちゃんのお絵かきは、いつだって真っすぐで、
あたたかくて、芯がありました。
しゃちんは、その絵がだいすきです。
「まる秘ちゃん、ほんとうにすごいなぁ。」
しゃちんは、まる秘ちゃんの頭をそっとナデナデしました。
まる秘ちゃんは、ほころんだお顔で「えへん!」と胸をはります。
しゃちんは思います。
痛い日も、つらい瞬間も。
まる秘ちゃんの絵があれば、何度だって立ち上がれました。
◆
ある日。
まる秘ちゃんのお絵かき道具が、ぽきりと壊れてしまいました。
しゅん……。
まるっこい肩が小さくなります。
「だいじょうぶ!」
しゃちんは胸を張りました。
「しゃちんは、お金があるんだ!」
――嘘です。
しゃちんには、お金はあまりありませんでした。
お腹は、ぐーぐーなっていました。蓄えはありましたが、それは何かあった時のためのものでsた。
「まっててね、まる秘ちゃん!」
たたたたたっ!
しゃちんは、走りました。
◆
「よいしょっ……よいしょっ……!」
お仕事は、大変です。
手はひりひり。
体はぐったり。
でも、くじけません。
「しゃちんは、つよいんだ!」
――嘘です。
しゃちんは、つよくありません。
立派なひとでも、すごいひとでもありません。
ただ、まる秘ちゃんを悲しませたくない
その気持ちだけが、しゃちんを動かしていました。
そして、ついに。
「買ってきたお!」
「ほんとに!?」
まる秘ちゃんの目が、きらぁっ!と輝きました。
「たかくなかったのん?」
「やすいもんだよ!しゃちんは、お金もちなのさ!」
そうです。
しゃちんにとっては、本当に「やすい」ものなのです。
まる秘ちゃんの、うれしい声。
ふくらんだほっぺ。
はにかむ笑顔。
それが手に入るなら、どんな値段でも安いのです。
しゃちんには、お金も、才能も、肩書きもありません。
誰にも自慢できるものはありません。
でも、まる秘ちゃんを幸せにしたいと思う気持ちだけは本物でした。




