のいん 百合デートって聞いたんですけど
Neun――Dates zwischen Mädchen……
さて、リリィと服屋に入った。
まぁ、無地の方がいいだろう。模様があるとしてもパターンかロゴにした方がいいと思う。
「白兎、私に似合うの……お願い」
「分かってるけどさぁ」
リリィはあれからずっと、少し悪戯そうに微笑んでいる。何かを期待したような眼で、チラチラと僕の方を見ている。
さっきチラチラ見てただろ(やめなって! ○夢ごっこは恥ずかしいんだよ!)!
「あ、届かないなら、肩車するよ」
「出来るだけ自分で取るから……」
肩車は恥ずかしいのだ。他人の目がとかそういった理由じゃなくて、自分がリリィに肩車されるという事実が恥ずかしい。
……リリィは蚊の鳴くような声で、何かを呟いた。……不愉快ではないぞ、絶対に。
「(……肩車したかったのに)」
「? 何か言った……?」
「な、なにも……?」
その声は僕に聞こえなかったが……。
リリィは目を逸らして、口笛を吹こうとしている。全く吹けていないのだが。一体何を言ったのだろう。
さて、まずは夏用に真っ白なTシャツを選ぶことにした。なんでも夏服冬服どちらも入りにくいというのだ。
僕の手に取れる位置にあったため、肩車はされなかった。
「肩車……」
リリィは落ち込んだように俯いて、僕の方を見ている。肩車……と呟いているが、恥ずかしいからやられたくない……助けてください。
さて、冬用には白色のパーカーを選ぶことにした。こちらは取れなかったので肩車をされてしまった。滅茶苦茶恥ずかしい。
だが今度はリリィがとても満足そうだ。嬉しそうな顔で、どこかポワポワしている。
「白兎を肩車しちゃった……むへへ……」
頬はとても緩み、リリィにほとんど無かったはずの感情を感じる。いやあったのだろうが、起伏が分かりやすくなっている。笑みを見れたけども、肩車されたから複雑ぅ……。
さて、白一色なのはそこまでオシャレじゃないと思う。知らないけども。また春や秋などの際には少し寒かったりするだろう。
というわけで、カーディガンも買うことにする。全身真っ白は僕的にはオシャレではないと思うので、他の色にするのだが……赤色や茶色、灰色の物が多い。
「そういえば、スカートとかズボンとかそういうのはいいの?」
「家に沢山ある。姉のせいで、ほぼ赤色だけど」
「あー……なるほど。ローゼさんが……」
リリィには姉がいる。
ローゼ・プフラオメ・シュテルン。しかしリリィとは対照的にドイツ語ができる。当然だが、にわかな僕よりもできる。見た目は黒髪で青っぽい瞳の色。リリィとはあまり似ていない。胸はかなり小さく、身長も高くはない。
好きな色は赤らしく、持っている物の大抵は赤色だという。なんならその大半がスカートなのだという。おかしいだろう。
だから赤い服は却下されたのだ。
「姉っていっつも……カ○レーザーさん……みたいな服だし……」
「は、ははは……」
カ○レーザーさんみたいな服……。まぁ、悪いとかダサいとかはなんとも言えはしないけれど、確かに目立つだろうし変わった服ではあると思う。
……はっきり言うとあの人に似合わない。もっともっといい服があるだろうとか、全身赤色にするにしても濃淡は変えてくれと思う。
「これにしていい?」
「茶色のカーディガン?」
「キャラメル色だよ」
リリィはキャラメル色のカーディガンを手に取っていた。右胸に当たる部分に、可愛らしい星のマークがあったからだろうか。
さて。これでもう買うものは無いだろう。結構買っているし。レジへと向かu……
「白兎、もしかして忘れてる? 下着見に行くよ……
なんで離れようとするの」
「い、いや……女性物の下着には抵抗が……」
「ムッツリスケベ」
酷い言われようだ。……というか無表情でなんて事を言うのだろうか。いつもの事かも……。
「わかったよ。見に行けばいいんでしょ、見に行けば」
「ありがと。……オープンスケベ?」
「やめてください」
「事実だもんね。言わない方がいいか」
事実じゃないよ? 決して僕はスケベではないよ? 本当だよ? むしろ今すぐさっさとここから離れたいよ?
「白兎、私って何カップだと思う? 予想でいいからさ」
「男にする質問じゃないよね!? 恥ずかしいし、分かんないし……言わないよ?」
「答えてくれたら……10揉みは許す……よ?」
ここで飛びついてしまったら男の恥。というより恥ずい。絶対に答えてはいけない。
「やらないからね?」
「……あ、数が足らない……ってこと?」
「そういうことじゃないけど!?」
「なるほど……じゃあもっと激しいことがいいの……? まぁ、白兎なら……」
リリィは恥じらうようにモジモジして、頬を赤らめつつも、どこか満更でもなさそうな顔をする。
「もっと違うよバカ……はぁ……リリィってこんなんだっけ」
「正解」
「何が?」
何が正解なのだろうか。話の流れ的にはカップ数……? いやでもそれらしきこと言ってない……。
「今はぁ……って言った。つまりH……Hカップ。正解。だからわたしのむn」
「いらないから……! 遊ばないでよリリィ……」
「……アソンデナイヨ」
遊ばないでください。……って、デッッッッ!?!? え、リリィってそんなに大きかったの……?
ん? でもその大きさなら下着売ってないんじゃない……?
「そのサイズってここに売ってるの?」
「売ってるらしいよ? まぁ多くはないけど……でも、Iより大きいのは無かった」
「売ってはいるんだ……」
マジかよ。この店すごいな。
でもそのサイズがあるのなら、なんでそれより大きいサイズが無いんだろうか? 需要がないから?
「じゃあ、下着。どれが似合うかファッションチェックして」
「え? ま、待って待って待って」
ファッションチェック? 下着を?
ちょっと何言ってるか分からないですね。
あと元だとしても男がやることじゃないと思う。
「これとこれと……これ」
「話を聞けぃ!」
「やだ」
男が女の子の下着姿をファッションチェックってなんですか。店員さんに変な目で見られるっての。
……あ、今の僕は女の子か……男ほど変な目にはならないか。不審には思われるかもしれないけど……。
「あ、でも白兎に見せる時、他の人に下着姿……見られる……」
「そ、そうだからさリリィ。だからファッションチェックなんかやめて……」
「でも白兎を試着室に連れ込めば……」
「だから完全におかしくなってるって今日のリリィは! 目を覚まして!」
男を試着に連れ込むのは流石にヤバいと思う。僕が社会的に死んじゃうからやめてほしい。
僕がそう思っても、声には出ていなかった。そのため、リリィに無理やり試着室に連れ込まれてしまった。
いや、何してんのリリィ……。
試着室の中で、リリィが目の前で服を脱ぎ始める。僕は急いでそっぽを向き、目を瞑っていた。衣擦れの音が僕の理性を擦り減らせる。
リリィは僕がそっぽを向いていることに気づいたのか、不機嫌そうに僕の耳に呟いた。
「昔は裸の付き合いだったのに……。昔も実はそうやってたんだ……」
「ち、違……っ」
……そんなことは断じてないけど!? とリリィに宣言しようとする。
その時僕は、リリィの方を見ていた。
笑っている桜色の瞳に視界を奪われる。
「いやなんで笑ってるのリl……あっ」
「むへへ、白兎のへんたーい」
着替え中の、下着姿のリリィの方を見てしまった。悪戯そうな笑顔を浮かべ、先程の冷たい視線を放っていそうな声色は無くなっていた。
「誰か僕を殺してくれ。今すぐ」
「そんなこと言わないの」
リリィのせいだよ! とは言えず、僕は悶絶していた。……しかし、幼女になっていて良かった。もっと大変なことにならなくて。
何故かって? 男の股にある息子(意味深)って……知ってる? 知らない人はそのままの君でいてくれ。
目の前のリリィのせいで、男だったなら聞き分けのない海綿体の息子(意味深)が体液を集めて成長(意味深)してしまうから幼女になって良かったということ。
成長(意味深)してしまったらリリィに顔向けが出来なかっただろう。だから本当に。
「あ、今から下着脱ぐから、あっち向いてて。……見たかったr」
「分かったあっち向いてるよ」
見たら死ぬので拒否しておいた。だから様子がおかしくないかなリリィ……。
「着替え終わったよ」
「早いねリl……」
「嘘」
「このばかぁ……!」
あっぶねぇ……。下着を付けていないリリィを見てしまうところだった……。本当の変態になってしまうところだった……。
「白兎、今度こそ着替え終わったよ」
「というか、下着姿は着替えって言うのかな……? まぁいいか……」
リリィの方を見る。僕の理性を消し飛ばしたいのだろうか。下着はこれでもかと谷間を強調させていて、その姿は僕の語彙力が無くなるほどえっちだった。
えっちなのはダメ! しけぇ!(混乱)
「どうかな? 白兎……」
「……う、うん。いいと思うよ」
思わず目を逸らしてしまうが、やはり胸に吸い寄せられてしまう。……勿論、リリィはそれに気づかないわけはない。
胸の谷間を見せつけるように胸の下を支えて、リリィはこう言った。
「おっぱいばっか見て……白兎のえっち」
「……アッ」
吐息が耳の奥底まで入るだろう距離で、リリィはそう呟いた。僕は死んでしまった。
えっちなのはいけないことです。
「あっ……いや待って私何して……っ!?」
死ぬ一瞬で、リリィがそう呟いていた。
本当だよ。
◇
次に僕が目を覚ました時、何故か望乃がいた。そして、望乃の目の前にいたリリィは正座していた。
「いいですか、リリィさん。今の白兎くんは確かに女の子ですが、白兎くんは元々男の子なのですよ。試着室に連れ込まないでくださいね?」
「はい……」
リリィは望乃に滅茶苦茶叱られていた。しょんぼりと落ち込んで、縮こまっている様はさっきのリリィと同一人物とは思えない。
「め、目が覚めましたか白兎くん!? 大丈夫でしたか……!? お顔が血まみれでしたが……?」
「多分……ん? 血まみれ……!?」
何故血が出ているんですかね……!?
そう考えると、鼻腔から鉄の臭いが伝わってくる。そこそこ強めの臭いだ。
「そ、そうでしたよ。傷口らしきものはありませんでしたし、特にお鼻の辺りからとてつもない血が……」
「……じゃあ鼻血じゃん」
いや、そんなギャグ漫画のような事が起こるだろうか。恐らくリリィの下着姿に興奮して鼻血が出たのだ。
え? 医学的には違う? 直接的な因果関係はない? じゃあ良かった……、僕はスケベじゃないみたいで本当に良かった(?)。
……おい! 何で現れるかっこハテナ!
(笑)
なにわろてんねん。まぁ冗談は置いておき。
「ところでさ、リリィ。男の目の前で裸を見せようとするのは良くないと思うよ」
「言わないでよ白兎ぉ……」
今言わない方が良かったのね、ゴメンねリリィ。でも今じっくり反省はしてください。
「え? はだ……え? はい!? 本当ですか白兎くん!?」
「し、白兎の嘘だよ望乃。私がそんな……」
リリィ、嘘をついたら良くないと思うんだよね、僕って。嘘は極力つかないよう生きているんだ。だから……
「リリィがやりました」
「お説教が必要みたいですね……!」
「白兎!?!?!?」
リリィは一時間ほど拘束されて、正座により足がぶっ壊れたと言っていた。でも僕の理性がぶっ壊れそうだったんだから仕返しだよ。
◇
「遅かったねお兄ちゃん。何かあったの?」
「あー……ちょっとリリィと服を買ってて」
「お兄ちゃんがデート!? 赤飯炊いておけば良かった……!」
「やめてくれぇ……! お前の赤飯は血の味がするから本当にやめろぉ……! いやなんで炊飯器で血の味になるのさ……!?」
本当に黒菜の赤飯は血の味がするのだ。口に入れた瞬間、鉄臭さすぎて吐き気がしたくらいには血の味だった。
「血の味って……お兄ちゃん酷くない……? 流石にそんなわけないでしょ……」
「言っておくけどさ、赤飯はもち米を使うんだよ。お前の赤飯はもち米でもいつものお米でもなさそうだけども」
「えっ? そうだったの……? じゃあごめん……いつも入れてたの……
タイ米だったから……」
「イカれてる……」
何で昔の僕はこんなものを食べられたのだろうかと思えて仕方がない。
そんなことよりも、今日の夕飯も出前である。というか多分ずっと出前だろう。ロリコ……篠宮先生にかむさはむにだ。……ところで何語だっけこれ(韓国語です)。
「わぁい、オム焼きそば」
「……デスヨネー」
黒菜はオム焼きそばの弁当。そんなのも売っているんだな……。
一方僕の弁当は当然のようにお子様ランチ感のする弁当。知ってたよ、うん。
中身は五目ごはん、刺身、唐揚げ、きんぴらごぼう、ひじきの煮物。あといちごゼリー。
二日目なのでお子様ランチへの抵抗は少し薄まってしまっていた。……醤油テイストな味(?)を感じて美味しかった。
ねぇ、美味しかったよね? ねぇ? 黒菜。
特にゼリーとか美味しかったよね? ね?
「お兄ちゃん……ごめんって……」
「怒ってないよ? たとえ黒菜がゼリーを平気で盗ってきても、僕はお兄ちゃんだからぜーったいに怒んないよ?」
「……だ、だってつい……もう盗まないから……善処するから……」
怒ってな……ごめんなさい。はい怒ってます。
二度あることは三度あるってよく言うじゃん。絶対また盗むよね、黒菜? 三度目の正直? 知らない子ですね。
「まぁ、百歩譲ってゼリーはいいよ?」
「いいのかよ」
ゼリーってさ、美味しいには美味しいけど……正直プリン程は惹かれなくない? 別に無くてもいいよねくらいじゃない?
「でも、プリンを盗ったら泣き喚くよ?」
「わぁ、尊厳破壊」
尊厳なんて知りませんね。僕はプリンが食べたかったんだから。そもそも女の子になった僕に尊厳はありますかね?
次回:サキュバスが現れた!




