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あはと ボス戦だぁ

Acht――Waldwahnsinn

フィルスト大樹跡地、そうカタツムリくんが言った場所。そこには日光が差し込んで、草木が生い茂っている。


それなのに、動物は全くいない。四足動物どころか、虫すらもだ。



「動物がいない……?」

『そりゃドライアドが暴れとるからな、近寄るやつなんかおらんわ』

「へぇ……」



カタツムリくんさんは冷静に語っている。



『今のドライアドに近づこうとする奴はな、トレントか余程のアホしかおらんで。見た瞬間、死が目の前に来るんやから』



その後、また何か静かに語り出した。



『なぁ。ワイはな、誰かと旅がしてみたいんや』

「急な自分語り……? はっ……まさか、死亡フラグ!?」

『んな事言わんといてくれや……。そんでな、ドライアドと戦う前に言っとくわ。ワイを仲間に入r』


「白兎、何か来る……!」



カタツムリくんさんが何か話していたというのに、タイミング悪く、ドライアドらしき何かが来た。紫色の長い髪に、真っ赤な瞳。人間の女性のような見た目で、少し微笑んでこちらに向かってきている。


しかし、目に光は全くなく、動きもあまり人間らしさを感じない。ガニ股でふらつきながら、黄色いドロっとしたよだれのような液体を口から垂れ流している。



No065 ドライアド 草属性

Mollisarbores torrens

双子葉植物綱ブナ目トレント科トレント属

トレントの特異な個体。トレントのリーダーのような存在で、基本的に人間の女性のような見た目をしている。また、基本温厚。

生息地:森林の奥地



「これがドライアド……」



そう言った途端、ドライアドの足元から大量に根っこが伸びていき、ムチのようにしなりながら望乃とリリィを吹っ飛ばした。……いやとても温厚そうには見えないのだが……?



「うわぁっ!?」

「はぅぁ……!?」



ドライアドは、僕に興味がない……というより、気づいていないかのように僕を無視して、二人を攻撃している。

無視しないで? 結構傷つくんだけど。



「フレイム!」



それでも少し足止めをと、魔法を放つ。

効果はありそうで、ドライアドの足が焼け焦げた。



しかし、その焦げた足の表面が剥がれ、なんとすぐに修復した。また、剥がれた表面は人と似つかない木目であったが、剥がれたところから血液のように出ていた樹液らしきものは真っ赤であり、とても不気味であった。



ドライアドは、目からポタポタと桜色のドロっとした液体を垂らす。その液体からは花のような甘い匂いがしていて、辺りは甘い香りが充満する。



『ひぅ……っくしゅ……っ……ぅひゅっ』



ドライアドは、まるで涙声のような鳴き声を放っている。それにしては顔が泣いておらず、むしろ微笑んでいる。



よだれみたいなのを垂らしながら泣いて笑っているのだ。怖い。



その匂いと音に釣られてか、トレントの軍勢が大量にやってきた。さっきのトレント達とは足音が大幅に違い、とても速い。



「フレイム!」



伏字の魔法はまだまだクールタイムが回復していないため、クールタイムの回復したフレイムを放つ。トレントの大半を足止めでき、またドライアドにもダメージを与えた。



ここまで攻撃しているというのに、ドライアドは僕に視線すら向けず、二人を狙っている。ここまで無視されると悲しいんだけど。



『全くこっちに攻撃来やんな……見境なく暴れとるはずやのになんでや……?』



ドライアドにさらに攻撃を続けるが、やはり僕への反応らしき反応はない。なんだか少し悲しい。



「フラッシュ!」



フラッシュを撃った途端、ドライアドは少し怯み、目をつぶった。そして、音のする方に向かって攻撃をするようになった。



僕の足音に反応したか、ドライアドの足元からツルが生えて、僕を叩こうとしている。……思わず身構えて、近くにあった物をドライアドに投げつけてしまった。



『なんでやねんっ!?』



……それが、カタツムリくんさんであることに気づくのは、投げた少し後だった。




カタツムリくんさんがドライアドに当たった瞬間、ドライアドは卒倒し、ついでにカタツムリくんさんの意識もなくなっていた。


カタツムリくんさんはドライアドの胸元に当たっており、衝撃で殻が割れたりはしていなかった。



「あ、助かった……?」

「背中、痛い……」

「ドライアドは……倒してない……ですか。わたくしには勝てる気がしないので、退散しましょうか」



これはドライアドに勝ったということでいいのだろうか。経験値も入ってこないが、とりあえず村に戻ることにした。



……ドライアドの指先が、ほんの少し、動いていた事には誰も気付かずに。



◇◇



『……あれ? ワイ生きとる……?』



彼……カタツムリくんの目が覚めると、先程まで戦っていたフィルスト大樹跡地の光景だった。


そして、その足元にはドライアドがいる。

完全に目を覚ましており、少し指が動いているのだが、襲ってくる気配もない。



『……大丈夫やったんかドライアド? ……いやまだ正気ではないんか……?』



目の前のドライアドはうんともすんとも言わず、ぼーっとしている。相変わらず口からは液体が出ており、生気を感じない。



『……てか、なんで投げたんや。いやまぁ怖いのは分かるんやが、……何故ワイなんや? ……まぁええけどな。多分ワイに悪意があった訳やないやろし』



さてっと、彼は、先程自分を投げた少女を探すことにした。その瞬間、ドライアドはすくっと立った。



『……へ? え? ドライアド……?』



彼はドライアドの顔を見る。すると、何故かドライアドも驚いたような顔をしていた。



『なんであんたも驚いとるんや……!? ドライアド、もしや運んでくれるんか?』



……ドライアドは首を傾げるが、なんの返事もしない。思わず彼は呆れていた。



『少しは反応せぇや……はぁ……』



また、ドライアドも呆れたような表情になる。まるでシンクロしているかのように、同じタイミングでため息をついていた。



『こっちが呆れとんねん。……待てや? 気のせいかもしれんが、なんか……ドライアド……お前……』



彼が右手を上げるよう念じれば、ドライアドは右手を上げる。左手を上げるよう念じれば、左手を上げる。歩くよう念じれば、歩き始める。



『……なんや、こりゃあ……!?』



彼は困惑しつつも、ある少女の元まで歩くこととなった。勿論、その少女の居場所を知っているわけはないのだが……。




◇◇



さて。村に戻ったら、リリィに何か話しかけられた。



「白兎。実は私、持ってる服が入らなくなって……(主に胸辺りが……)だから、服欲しい……でも服、分からないから……明日、一緒に服屋……行かない……?」

「へ? ……現実で?」

Ja(ヤー)……」



リリィから買い物デートを誘われた。でも僕も服とかよくわかんないんだけど……。

いやまぁ確かに最近デッッ……とはなったけども。……どこがとは言わない。リリィが言ってるのだけども。



あ、あとJa(ヤー)(ドイツ語で肯定の意)は覚えたんだ。ジャーとか言わなくて良かったよ本当に。



「他の人の意見、欲しいし……私が選ぶと、変なのになる……」

「そうかな……? そこまでセンス悪くないでしょリリィ……まぁいいけど……」



デートの約束を組んでしまった。もしかして、エスコートした方がいいのかな……?



そう思っていたら、リリィが耳打ちしてきた。



「(あと下着も選んでほしい……流石に、望乃に知られたくない……いい?)」

「ほえ……え?」


「(お願い……?)」



少し涙声になって縋るように言うリリィ。女の子の涙声は男には強いんだよ……。



「まぁ、いいけど……」

「やった……!」



というか男にそんなこと言って……すごくえっちいの選ばれるかもしれないじゃん! 公序良俗に反するような下着!



あ、そんなことする気は……ま、まぁ……無い……よ? 無いので心配しなくていいよ……?



……あと、急に内緒話みたいな事をしたせいか望乃がこっちを睨んできてるのですが……どうすればいいでしょうか?



「えぁ、何も無いから安心してよ望乃」

「変な話なんてしてないよ……?」

「ふぅん……?」



滅茶苦茶怪しんできている。



さて。気づけば九時前。望乃がニコニコと圧をかけてきているので、ログアウトする。



布団に入ると眠くなってきた。じゃ、Gute(グーテ) nacht(ナハト)。おやすみー。





Guten(グーテン) Morgen(モルゲン)。おはよー。朝食は勿論食べるのだが、流石に朝から配達して貰うのも少し申し訳ない。


というわけで僕はパンを食べる。

目玉焼きを乗せていただきます。


……あ、戦争を引き起こしかねないので、目玉焼きに何をかけたかは秘密にしておきます。でもジャムみたいなふざけた物ではないとだけ言っておく。……え? ジャムかける人間いるの? いや嘘つけ……。……え? マーマレードかけると美味いの? ガチ?





学校に着くと、昨日と同じ人達にまたセクハラされた。よし訴えよう。



「……だ、だって可愛いし」

「右に同じく」

「左に同じく」

「……そんな理由で許すと思う?」



……三人は冷や汗を浮かべつつ逃げていった。僕の足の速さでは絶対に追いつけない。というか廊下を走るな。



「しろぉ、大変そうだねぇ?」

「本当に訴えようか迷ってる」

「しないくせにぃ?」

「お慈悲を……お慈悲を……」





食堂のBLTバーガーはいつも人気である。


バンズに、園芸部の有機レタス、和牛100%のパティ、ケチャップ、マスタード、園芸部の有機トマト、そしてイベリコ豚のベーコン、目玉焼きが挟まれているハンバーガー。


お値段なんとたった950円+税……いうほどたったかな……?一日限定60食であり、昼食時に三分ほどで売り切れるという。



いつもなら並ぶ前に売り切れるが、なんと食堂のおばさんがサービスでくれた。


……なんか小さくね? まぁ無料でくれているので文句は言えないのだが。



さて、昼食はBLTバーガーとフライドポテト(S)、バニラシェーキ(S)。


フライドポテトとバニラシェーキは、すんごい笑顔で「ありがとうございます!」と言ったらサービスでくれた。


……フライドポテトは食感があんまり好きではなかったけど、美味しかったです。いや貰ったのに文句言うなって話なんだけどね。



さて、リリィはオムライスを、望乃は生姜焼き定食を食べていた。


生姜焼き定食は生姜焼きは勿論、白飯、わかめの吸い物、きゅうりの酢の物が付いている。



「……生姜焼き、辛くない?」

「ええ、とっても辛いですよ。美味しくはないです」

「何で、食べるの……?」



食堂の生姜焼きはバカみたいに生姜を入れている。はっきりと生姜の味がするレベルだ。



あと、食堂のオムライスは卵がバカみたいに固い。それ以外は美味いのだが、卵はガチガチ。



「……望乃、きゅうり残ってる」

「リリィさん、きゅうりあげますよ」

「いらない……好き嫌いしないで」

「う……ぅぐぐ……っ」



望乃は酸っぱいものが大嫌いである。何をどう頑張ろうとも、口に入れる瞬間を見たことがない。食べてと言うと滅茶苦茶嫌そうな顔をするのだ。



「じゃ、じゃあ白兎くん! きゅうり要りますか!?」

「自分で食べてよ。要らないし」

「嫌です……!」



頑なに食べようとしない。食べてよ。ご飯は残したら失礼になるんだぞ。


しかし、昼休みが終わるまで食べようとしていなかった。





学校が終わり、リリィと一緒に服屋へと向かう。後ろを見ると、望乃が静かに尾行してきているのだが、リリィは全く気づいていなそうだ。



「白兎、私……何が似合う?」

「いや僕も服とか知らないからさ……全くわかんない……」

「じゃあ例えば、色とか……」



何が似合うだろうか。本当に分からない。センスが無さすぎて分からない。



「……ない?」

「色とかわかんないよ! く、黒とか?」

「あんまり……他、ない?」



え、黒って駄目かな……? 無難な色だと思うんだけど……。



「赤……?」

「派手すぎるし家に大量にある……もっと普通なのがいい……暖色は派手だし寒色は好きじゃない……」



でも赤の種類にもよるけど……。まぁそうだろうね。あと注文が多いって。もう何が残るの?



「え、えー……じゃあ、白とか?」

「! ……じゃあ、白にする……ふふ、白兎の名前と、おんなじ……」



リリィは僕をチラチラと見ながら微笑んだ。多分最初から白にする気だったろうに。



◇◇



「い、一体お二人は何をされてしまうのでしょうか……」



望乃は何が起こるか滅茶苦茶警戒していた。もしかしたら、服屋の中で男女同士が行う【自主規制】が行われてしまうかもしれないと。



確かに、当人であるリリィや白兎をその方向に進まないと信頼していないわけではない。


だが、もし。もしもの話だが。片方でもそういった雰囲気になってしまったのなら。両方とも、そのまま流されてしまいそうであるのだ。



片方は友達がとても少なく、もう片方に依存気味。もう片方は大きな胸にとても弱い。どちらも、片方がそういった雰囲気になってしまえば絶対に逃れられないだろう。



「大丈夫です。わたくしは……。今、わたくし達は未成年の身。心の準備はできております……。お二人が【自主規制】をやらないよう防がなくては……!」



勿論、望乃の考えていることなど起こるはずもない……まぁ、恐らくだが。


個室があるとはいえ、そんな個室はトイレか試着室のみ。そんなことをやっていれば一瞬でバレる。そして両方ともそんなことをやる勇気はない。

次回:百合デートって聞いたんですけど

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