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水音

作者: 如月衣都花

半分以上実話です。

私に霊感は皆無のはずなのに・・・。

水音を『冷たい視線』に替えるとほぼほぼ体験したとおりの出来事になります。

そして、そのお屋敷は実在します。

ここの御屋敷はおかしい。

と気づいたのは、住み込みで勤めてから一週間ほど経った頃位だった。

最初は小さい子供の笑い声。

それから、姿の見えない人が押す昼間のチャイム。

高級住宅街の学校から距離のあるここで平日の昼間にピンポンダッシュができるーチャイムに手が届くまで成長しているー子供は近所にいないし、何よりお屋敷には小さい子などいない上に、丸見えの位置にチャイムがある。

更には何度もチャイムの不具合が無いか調べた。

それでも時折鳴る不可思議な現象。



異変が私に向いてきたのは、そんなある日の事。

夜、お台所で片づけてる時に不意に

ぴちょん。

水の滴る音が耳に届いた。

咄嗟に蛇口を見たのだが、蛇口はしっかり閉まっている。

何より()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


気づいた瞬間、背中がぞわっとした。

気のせい気のせい。

嫌だなー。


そう、1日だけなら思い過ごしとか気のせいとして忘れられた。

だけどそうならなかったので確信する。

この御屋敷はおかしい。


初めは夜だけの出来事だった。

やがて、ぴちょん、

と水音は私が移動すると自己主張をするかのように耳元でする。

台所と自室を隔てるドアを閉めるとその水音は止む。

トイレがドアの内側に有ってよかった。

夜はなるべく早く片付けるようにしよう。

と思っていたのにとうとう昼夜関係なく与えられた部屋以外の屋敷にいる間中、私の耳元で水音がするようになったのだ。

笑い声とエアーピンポンダッシュは相変わらずだ。

多分こんな話をしても奥様や旦那様はもとより、先輩メイドや親にも信じてもらえないだろう。

そう思うと話し出せずに日々が過ぎていった。


ある夜、片付けが終わってそっと抜け出すと近くの公衆電話で自称ちょっと霊感のある友人に切羽詰まって電話をかけた。

 「この屋敷変だよ。怖い~。なんかいる。ねえ、なんか感じる?」

 「・・・・・・良くないね。心中してるぽい一家が屋敷に憑いてる」

 問いかけに少し間が空いた後にそんな返答が返ってきて震え上がった。

 やめてー。

 帰れなくなる。

 というか、帰りたくない。

 「ええええ~どうしよう~怖い~」

 電話口でそう洩らすと、

 「エスカレートしてなきゃ大丈夫じゃないかな?魔除け送るね」

 そう言って電話は終了した。


 後日、父の名義を使って友人から有り難い手書きの魔除けが届いたんだけど、届く前に夜外に出かけても水音が着いてくるようになってしまっていた。

 後ろを向くと当然ながら誰もいない。

 数度試した。

 もう後ろにいないのを理解してからは極力後ろを見ないようにした。

 尤も居てもそれはそれで怖い。

 送ってもらった魔除けはお仕着せ(メイド服)にポケットが無かったため、自室に置きっぱなしになっていた。

 自室に逃げ込めば安全。

『エスカレートしなきゃ大丈夫じゃないかな?』

思い返せば友人のその言葉はフラグだったのでは?


友人の言葉を裏切ることなく、

1晩で3回金縛りというものを人生で初めて経験した。

3回目の混乱の最中にいる私の耳元に

ぴちゃり。

水音がはっきり聞こえた。


限界を超えた私は、親の縁故であるはずのこの勤め先を半ば強引に辞めた。

父からは『最低でも半年は居るように』と厳命されてたので半年は頑張ったけど、もう無理。


後にわかったのだがこのお屋敷には水子がいるようだ。

あの水音が水子だろうが心中男だろうが最早どうでもよくて、この屋敷と縁が切れた事だけが唯々嬉しかった。

 





拙い文ですが、お読みくださりありがとうございました。

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