女神の戯言
第一章:出逢いそして事件へ
若い男は旅をしていた。
荒野を一日掛けて車でひた走り、小さな町へと到着した頃には、日も沈み道路脇の街灯が数十メートル置きに車道と歪な歩道を照らしていた。
男が近くのハイカラな食堂の前に車を停め、ドアを開けた視線の先には、派手なネオンがチカチカと点滅している入り口の階段が見える。男が階段の方へと足を進めると、何やら喚いている声が男の耳に届いてきた。男が横目で視界を移した階段下には、髭面の老人がいた。
声の主はこの老人だ、彼の相手は教会のシスターらしく足元まで隠れる黒のロングワンピースを纏い、頭には白いベールを被っている。察するに、老人が一方的にシスターに喚いているようだった。
しかし、男はその事を気にすること無く、開け放たれた食堂の入り口を潜り中へと足を進めた。そうしたのは、男が宗教がらみに関わると、ろくなことがない事を人生の中で経験済みだったからである。
「いらっしゃいませお客様」
「お一人ですか」
「席へご案内します」
ウエイトレスが早口で男を迎え入れるとそそくさと歩き出し、男はウエイトレスの言うまま、彼女の後を店の奥へと進んだ。客が座るテーブルだけが暖かく柔らかなオレンジ色の照明に照らされ、光が落とす影は通路を歩く男の姿を薄暗く隠し、それはいくつも続く客席との空間を隔てている。男が通された席は、テーブルを挟んで二人がけの席が空いていた。
「こちらにどうぞ」
「直ぐにメニューをお持ちします」
ウエイトレスはそれだけ言うと、これまたそそくさと厨房の方へと消えていった。残された男は、手前の椅子を引いてどかっと腰を下ろした。男が旅の疲れを癒やすためタバコに火を着け煙を吸い込む、そして目を閉じ白い煙を誰もいないテーブルの向かい側へと吹き出した。男には、最初の一服を終えたこのひと時の至福の時間がたまらないのである。
一時の時間が過ぎて無事食事を終えた男は、もう一度食後の一服に火を着けた。これもまた男には至福の時間なのである。
そんな時だ、店に入る前に聞いたうるさい声がまた耳に届いてきた。その音量はどんどん大きくなり、やがて男の直ぐ背後の位置に固定した。
その老人の声は、情緒不安定で内容に関しては理解に苦しむ持論を機関銃のように撒き散らしている。どうやら声の主は、どこぞの科学者であるようだ。彼の持論を分析するに、物理学、化学、数学、生物学、そして天文学、と一通り熟す天才肌の科学者であると本人は言いたいらしい。
しかし、老人の風貌は見窄らしく、白髪に無精髭を生やし白衣もヨレヨレで薄汚い。とても天才科学者には見えない。
しかも、その老人はシスターのことを女神様と呼んでしつこく纏わりついている。
その二人が、こともあろうか男の直ぐ後ろの席に腰を下ろしたのだ。男には、いい迷惑である。
「なあアンタ聴いてくれ!」
慇懃無礼に老人が男の背後から一方的に話し掛けてきた。
「この宇宙は一つじゃないんだと」
「いくつもあってな」
「この女神様は、その遥か先の宇宙から地球にやって来たんだとさ」
「信じられるか?なあアンタ」
老人は酔っ払いの戯言のように言葉を並べる。
うるさいジジイだ。
男は、老人を無視した。第一この手の話には結論が出ない。男にも多少の知識ぐらいは持ち合わせていた。この宇宙がビックバンと云う特異点から始まり、インフレーションという急激な膨張を経て、今の宇宙の大きさまで空間が広がった事を多くの天文学者達は提唱している。そして、今も宇宙の膨張は続き、それは加速しているという事を。しかし、結論が出るのはここまでで、その先は憶測でしか人類には語れない。未だ観測不可能な領域だからである。
「ワシは、女神様の御業を目の当たりにして以来」
「アナタが言ってることが、真実か否かわからなくなってしまったんじゃ!」
老人は勢い立ち仁王立ちのままシスターを指差す。
「こんな事、ワシ独りで抱えていては気が変になってしまう!」
そう言うと老人は、今度は両手でクシャクシャな白髪を掻きむしり、背後の自分の席に勢い良く座り込むと、そのまま背もたれを強く押し込み海老反った状態で男の背後から顔を覗かせる。鬱陶しくも男が老人の方に視線を向けると、彼の顔は引きつり、目は充血して真っ赤に腫れ上がり、今にも血の涙を流さんばかりの形相だった。
「ワシの科学者としてのモチベーションはもう無い!」
「なくなってしまった!」
「女神様、いっその事このワシを殺して下さい!」
「このまま科学に身を費やすのは耐えられんのじゃ!」
そう言うと老人は脱力し、水の流れのようにヘナヘナと床にヘタレこんでしまった。
男にこの状況を、どうにかするつもりは無かった。席を立ちこれだけ老人が喚き散らしてるのだから、店の従業員が放っておくはずがないからだ。直ぐに駆けつけ老人をつまみ出してくれるに違いない。
しかし男の当ては見事に外れた。従業員どころか直ぐ隣の席の客でさえ、老人の迷惑極まりない行動に反応しないのだ。この街の人間はこうも他人に無関心なのか。
「アンタ今、何故騒ぎにならんのかと考えっとったじゃろ?」
老人は息を吹き返し、床から立ち上がると男に詰め寄り話を続けた。
「ワシも最初はそうだった」
「この女神様から聴いたこと」
「見せてもらった奇跡の数々を話して回ったが誰も信じてくれんかった」
「他人は誰も耳を貸してくれんかったんじゃ」
「そんなこと当たり前だ!」
ついに男が口を開いた。
「誰がアンタみたいな情緒不安定な老人の戯言をまともに聴くかよ!」
男は、腹立たしい気持ちを抑えきれずに、とうとう老人に干渉してしまった。
グハハハハ!いきなり老人が笑いだした。
「若いの、アンタにはワシの声が聞こえておったんじゃな!」
「喜ばしい限りじゃ」
「だがな・・・アンタの言ってることは的を外しておるぞ」
「何だとっ!」
男は、この癇に障る老人を殴りてぇと思ったが何とか踏みとどまった。
「どういう意味だジイさん?」
平常心を取り繕った男が老人に尋ねる。
「誰もが無視してたんじゃなく、誰もワシに干渉できんかったんじゃ!」
老人が説明した意味を男は理解できなかった。
「なあアンタ、誰でも良いから周りの客をぶっ飛ばしてみろ!」
「そうすれば アンタにも理解できる」
ニヤついた老人が男に向かってとんでもないことをほざいた。
「バカ云うな!」
「そんなっことをしたら警察沙汰になってまうだろうよ!」
男は、焦った。
「出来ませんか?」
今まで沈黙を穿いていたシスターがここに来て初めて声を発した。
男がシスターの方を振り向く。
「では、これをお使い下さい」
そう言うとシスターは、一本のナイフを男に手渡した。
「これを俺にどうしろと?」
思わず男は、彼女に意図を尋ねた。
「そのナイフで、私を刺してみて下さい」
今度は、シスターがとんでもないことを男に提案してきた。やはりそうだ。宗教をやる輩に関わると、ろくなことにならない。理解していたはずなのに、どうしてこうなった?
俺は、お人好しか?
お人好しなのか?
「もういい!」
「付き合ってられるかよ!」
男は、捨て台詞と共にナイフをテーブルに叩きつけ、踵を返し立ち去ろうとした。
その時、老人が動いた。
「こうやるんだよ!若いの!」
男が止める間もなく老人は、テーブルに置かれた先程のナイフを拾い上げると、逆手にナイフを掴み直し力任せにシスターの胸の谷間を貫いた。
\ドスッ!/
「止めろー!」
男は叫ぶ。
周りの客達は、無関心なままだ。ナイフを刺された衝撃は凄まじく華奢な女性の体ではひとたまりもない。冷たい金属の凶器は、簡単に肋骨の前面を砕き心臓に直撃した。
シスターは、ショック状態で悲鳴すら上げられず硬直したままだ。そんなシスターの胸の谷間からナイフを抜き取る老人の恍惚な表情が男の感情を怒りに変えた。心臓に焼きごてを押し付けられたような激痛と熱い苦しみを感じながら男の胸ぐらから血しぶきが天井まで吹き出した。
刺されたのはシスターのはずじゃなかったか?
何故、俺の体から血が吹き出してるんだ?
男は、朦朧とした意識の中で倒れ込む。シスターは胸元に男の頭を優しく抱きかかへ、そっと彼の体を支えるのだった。
第二章:解決そして別れ
幾許かの時が経った頃、意識を取り戻した男は、診療所の様な場所で白い鉄製のフレームで構成されたベッドに寝かされていた。
「おう、気がついたか」
上半身を起こそうとする男に老人が声を掛けた。シスターでないことが非常に悔やまれる。
「おいおい、ここは美人のシスターが付きっきりで看病してるところだろう?」
「何で、ジイさんなんだ?」
男がボヤく。
「私ならここにいますよ」
男が慌てて声のする方を振り向く。
すると、見舞い用に用意されていた細い金属フレームの椅子に、何食わぬ顔でシスターは座っていた。
どういうことだ?
俺は、さっき体を起こしている時に部屋の隅々まで見渡して確認したはずだ。
その時は、この部屋に俺と老人だけしかいなかった。
この女はどこに隠れていたんだ?
男は、シスター服の女に気付かれないように身構えた。
「アンタ何者だ?」
男は、シスター服の女に尋ねた。
さっきの殺傷事件といい何か人間業ではない怪しい力を使える、何かだ。
人間でも女でもない況してやシスターでもない、何かだ。
「私は、シスターですよ」
シスターは、ニコリと微笑み答える。
この期に及んでまだ白を切るつもりかこの何かは。
「ジイさんは、アンタの事、女神様って呼んでたみたいだが」
「ああっそのことですか」
「私には、女神という概念がどういったものか、解りませんが」
「人間だけでは無いことを、伝えておきましょう」
シスターが何やら、ちぐはぐな事を言う。
「だけではないとは、どういう意味だ?」
人間と何かの融合体とでも言うつもりか。
男は、ここまで訳の分からない事態に関わったのだから、このシスターの格好をした何かの正体を、どうしても暴きたくなった。
「この人間の体は、私のほんの一部に他なりません」
「一部とは?」
「他には、動物だったり鳥だったり、魚とか虫とかもありますね」
「生き物全てが、アンタだって言いたいのか?」
「生き物だけではありません」
「私は、この地球の表面に広く分布しています」
両手を高く広げジェスチャーを交えて説明をするシスター。
「それは、大気や海や大地に満遍なく存在していると?」
「はい、全てに私は存在しています」
「その事を証明する手段はあるのかい?」
何を言ってるんだこの何かは。
男の疑念は更に深まった。
「そうですね~」
「でしたら、今ここに犬の私が駆けつけましょう」
犬を呼んだぐらいで何か証明できるのかよ。
仕方なく、男は枕に頭を置き、それが来るのを待つことにした。
数分が過ぎると、三人が待つ病室に一匹の白い中型犬が現れた。
「ワン」
「わんって、ただ犬が入ってきただけに見えるんだが」
「この犬もアンタだと?」
ここまで走ってきたらしく、ハーハーと息を荒げバカっぽく舌を出している犬を、男は怪訝そうに見入っている。
「はい私です」
「犬のアンタは何が出来るんだ?」
「人より速く走ることが出来ます」
「他には?」
「嗅覚が人のおよそ一万倍あります」
「あと聴覚も人より高い周波数を聞き取れます」
「他には?」
「噛む力が強いです」
「他には?」
「あとは・・・」
シスターは言葉に詰まり後が続かない。
ネタ切れか、これだけだったらただのバカ犬だろ。
「ありました、これ重要な要素です」
男は、真剣な眼差しに変わり、バカ犬からシスターの方に視線を移した。
やっと本質を話す気になったらしい。
「他の犬と犬としてコミュニケーションが取れます」
「あのさぁ~それらは全部、犬の特徴なんじゃないのかい?」
どんな凄い能力があるのかと期待した分、男のがっかり感は半端なかった。
「はい、よくご存知で」
シスターは、男との他愛のない会話が楽しいのか、終始にこやかに微笑んでいる。
この女は凄いのか、おバカさんなのか、いよいよ持って怪しくなってきたぞ。
「この犬、伏せとか、お座りぐらい出来るのか?」
「出来ますよ」
シスターが得意そうにそう言うと、犬はお座りをして続いて伏せをした。
確かにシスターが犬に合図を送ってる素振りは、男には確認できなかった。
が、何か腑に落ちない。
「なあシスター」
「はい何でしょう?」
「この犬もナイフを刺しても死なないのか?」
バカ犬だが、これで死なないんだったら特殊能力を信じよう。
「死にますよ」
「死ぬの?」
ハハハ~ただのバカ犬でした。
呆れた男は質問を続けた。
「シスターは死ななかったのにか?」
「いいえ、私も本当に刺されたら、この体は死にますよ」
「なんだよアンタも死ぬのかよ」
「じゃあ、食堂でのあのやり取りは、何だったんだ?」
「確かにシスターは、ジイさんに刺されたよな?」
「しかし、血が吹き出して倒れたのは俺の方だった」
「ありゃどういう絡繰だ?」
「アハハハ!!」
「そうか、そういう事だったのか!」
突然、老人が笑いだし何かに納得したような素振りを見せた。
「どうしたジイさん?」
「水を差すなよ!」
男が老人に文句を言う。
「ああ、今のお前さんの疑問には、ワシから説明してやろう」
「どうも女神様は語彙力が乏しく、説明ベタのようじゃからな」
やっと老人が科学者らしい行いをするらしい。
「あの時のお前さんは席を立った後、直ぐに気を失ったんじゃよ」
「ワシは、ただ椅子に座ってそれを見てただけじゃ」
「ワシは、女神様を刺してなどおらん」
「それじゃ俺は・・・」
「ワシが女神様をナイフで刺したことも」
「お前さんが血を吹き出して倒れたことも」
「お前さんが見たただの幻覚じゃ」
「ワシも昔、お前さんと同じような事を体験してたんじゃが」
「しかし、お前さんの事を傍らから見るまでは、理解できんかった」
「この不可解な事象を客観視出来たことで」
「長年解けなかった謎が漸く解明した」
「アハハこれで少し気分が楽になったわい」
老人は、ずっとひかかっていた疑問が解決して満足そうだった。しかし男は納得していなかった。
老人が給湯室の方へ引っ込んでしまったため、男は質問する相手をシスターの方に切り替えた。
「今回の食堂での事件は、シスターが仕組んだ事なのか?」
「いいえ、あれは人間の私ではありません」
「あれをアナタに見せたのは、あの空間を満していた空気の私です」
「何だよ空気の私って?」
ホント、説明ベタな女だぜ。
「空気は空気です」
「空気の私は、アナタの呼吸によって体内に入り込み」
「アナタの脳に幻覚を見せました」
「シスター、もっと他の情報を頼む」
男はシスターから、なんでもいいから多くの情報を引き出そうとした。
「人間の私は、この地球全体を覆っている私のほんの一部にに過ぎません」
「人間に例えるなら、小指の爪先ぐらいの部分です」
「人間のこの体は、他の人間とコミュニケーションを取るための」
「一感覚器官でしかありません」
「それじゃあ、シスターの本当の姿は何んなんだ?」
「素粒子間空間思考です」
「はい、そこもっと詳しく!」
ソリュウシカンクウカンシコウって、何の呪文だよ。
「物質を構成している素粒子の中の空間振動波を使って思考を実現しています」
「よくわからん」男は匙を投げた。
老人が、給湯室からコーヒーを入れたカップを手に戻って来た。
「つまり、素粒子が一番小さな存在ではなく、更にミクロな空間が存在し」
「そこに振動する波があると云うことか」
「そこに知識と思考する知能の波が拡がる波紋の様に」
「ネットワークを展開しているわけじゃな」
老人は窓際に移動し、独り言のように科学者らしい追加説明をしてくれた。
しかし、男にはこれ以上掘り下げて説明されても理解出来そうもなかった。
「なあシスター」
「はい、何でしょう?」
男は、改めて次のことを尋ねてみた。
「あの時、何故俺にだけに幻覚を見せたんだ?」
「別に俺である必要はなかっただろう?」
「話が長くなりますが、聴いてくれますか?」
シスターの言葉に、男は無言でうなずきそれを了承した。
シスターは、夜景を眺め独り想いにふける老人に視線を移すと、男の問に口を開いた。
「あのご老人、彼は三十年前頃から、この地球に近づく私の事を」
「ずっと観測していた科学を愛する人間でした」
「そんな彼を、私も宇宙からずっと見つめていました」
「最初は、この地球に立ち寄るつもりは無かったのですが」
「彼に遭って、あの時どんな想いで私を見ていたのか」
「確かめてみたくなりました」
「しかし、この地球に来て素粒子のままの姿では」
「コミュニケーションを取るどころか」
「人間に認知してもらうことも、出来ないことが判明しました」
「そこで、私自身が人間になる必要があったんです」
「私は、一人の女性に干渉して一年後」
「人の赤子として、その女性から生まれました」
「そして、月日を重ね自立した大人になった私は、シスターの職につき」
「彼との接触を図ったのです」
「ところが、私の素性を彼に全て開示し、色んな御業を披露すると」
「彼は、精神を病んでしまいました」
「無理もありません」
「彼が、観測から導き出した宇宙の姿と」
「私が語った宇宙の姿が、あまりにも違っていたのですから」
「しかも、その事象を地球からの観測では」
「確かめられないもどかしさが彼を苦しめました」
「そこで、同じ境遇になっても耐えられる強い精神力を持つ人間を」
「私達の近くにいる中から、アナタを選り抜きました」
「アナタのお陰で、彼の精神は安定に向かっています」
「お礼を申し上げます」
何だよそりゃ、何ともシンプルな理由じゃないか。
男は、ベッドに寝そべり、ただ納得するしか無かった。
男は、サイドテーブルの上に置かれていた愛用のタバコを見つけると、そこから一本を取り出し火を着け、深呼吸をするように肺の奥まで煙を吸い込んだ。
「シスターそりゃどうも」
男は、煙を吐いて落ち着いたところでシスターに声を掛けた。
シスターは、何も言わず男の方に顔を向け微笑んだ。
男は、東の空から伸びる眩しくそして優しい陽の光に、目を細め左手で光量を調節する。
男は、病室でのやり取りを思い浮かべながら、愛車のドアに背を向けもたれ掛かった。
「シスター、宇宙ってどんな処なんだ?」
最後に、男は素朴な疑問をシスターに投げかけた。
「そうですね~宇宙空間は、人間の私ではきっと耐えられない厳しい場所です」
「この肉体が朽ちた時、私のこの地球での意義はなくなってしまいます」
「その時が訪れたら、素粒子の姿に戻りまた旅に出ます」
シスターは、遠い空を見つめ心情を語ってくれた。
「そうか」
「俺も、旅の続きを再開しよう」
男は、そう言うとシスターに別れを告げ南方へと車を走らせた。
終