一時限目~理科~
先生が教室を出て行って5分。いまだに俺を除いて9人の生徒は口々にしゃべっている。
ときどき聞こえる「趣味は~?」、「え~何月生まれ~?」などの質問を聞きながら、俺は自分の椅子に座りながら窓の外を見ていた。
席が窓側だったのが幸いした。もし廊下側だったら何をしていればいいのだろう。
しかし、そんなことはどーだっていい。
問題は俺の生徒会長の役割と一時限目の理科だ。
生徒会長なんてやったこともないし、小学校にはそんな制度はなかった。あぁ、どーにかやめさせてはくれまいか、神よ。
そんなどこにも届かぬ願いを頭に潜め、俺は窓の外をずっと見ていた。
案外、初めてきたところの景色というのは楽しい。というか・・・・、すごく見たくなる。
わかるだろ?初めてきたところなんだから、そういう感情もあっていい、と俺は思う。
俺が見ている景色には、ビルが立ち並んでいた。ビルと言っても、東京にあるようなでかいビルじゃない。田舎にあるような低いビルだ。
ところどころ茶色にくすんでいる所なんか田舎だろ?。まぁ、こういうところも案外悪くはない、と思った。
すると
ガラガラっ!
いきなり先生が入ってきた。
9人の生徒もいそいで自分の席に座る。
「よーし。じゃーやるよ?いい?」
「ハーイ。」
俺を除いた9人の生徒が声を合わせて返事をした。
「い~い返事だ~。じゃーやるか。理科。うん。」
理科…。何をやるか不安だ。この先生のことだ。なんだかよくわからないものが出てくるに決まっている。
「え~っとね・・・・。じゃ~実験を行う!。」
「実験ですか!」
井口正子が言う。
「そうだ~。あ~っと、じゃぁ、今日実験で使うのはこれ!」
先生から一人一人に配られたものは・・・・・。コンニャク?コンニャクだよねこれ?
「え~っとね・・・・。うん。これでやるんだけどね。」
「先生!これなんですか?なんだかよくわからないのですが?」
え?まじで?コンニャクだよね?
「これは「なんだかよくわからないもの」だ。」
それ名前じゃねーし答えにもなってないよね?
「先生!なんだかよくわからないのですが、先生はなんだかよくわかるのですか?」
「ん~、先生にもなんだかよくわかんないんだよね…?なんだこれ?なんだかよくわかんねーなー?」
俺もなんだかよくわかんなくなってきた…。
「なんだかよくわかんないんだけど、なんだかよくわかるやつ!」
「なんだかよくわかりませ~ん!」
「だよなー!」
だよなー!じゃねーだろ!頭おかしいだろ!オイ!
「なんだかよくわかんねぇ・・・・。なんだろう?なんだかよくわかんねーよ。」
あんたはわかれよ!コンニャクだろ?つかこれは全員わかるだろ!?なんだかよくわかるものだろ!?
「なんだかな~。わかんねぇ。なんかヒジキみたいなのも入ってるよ?なにこれ?ホントなんだかよくわかんねーよ!アハハハハ!」
アハハハハ!?え?マジでわかんねーの?おいおいいおいおいおい!まじか!マジなのかぁ!?
「なんだかよくわかんないんだけど、なんだかよくわかるやつ!いるか!?」
二回目。これは・・・、言った方がいいのか?いやいや、え、KYになるのか!?
しょうがない!
「はい。」
「・・・・。生徒会長ぉぉぉおう。まさか空気読むんだよね・・・?読むよなぁ…?」
「まさかよんでくれるよね・・・?」
「・・・・。」
威圧感。いあつかん。イアツカン。IATSUKAN。IATSUCAN。
「コンニャク・・・・?」
「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ!」
妙な声とともに、理科は終わった。