弱者男性
ティラノサウルスを皆はご存知だろうか。
白亜紀に存在した全長13m、最大体重9トンの大型の恐竜である。また、餌食となったとみられる恐竜の骨の多くが噛み砕かれていたことから、驚異的な咬合力をもっており、様々な恐竜をその強力さでねじ伏せていった…。
そんなティラノサウルスと22歳フリーターの僕とのマッチアップが決まった。
ー時は20XX年
人類は遂に恐竜の複製に成功し、自然の摂理とは逆らうように様々な恐竜を白亜紀から呼び起こしたのだ。
そしてその恐竜達は人類に管理され、数を増やされていった…
そんな世界でコンビニでレジを売っているのは僕だ。
22歳フリーター、彼女なんていた事がない。趣味はアイドル『らぶらぶえんじぇるぷりてぃ』のライブに行くこと。その握手会で人の温もりを感じる。
今日もあらゆるクレーマーを相手に接客をこなす。
毎日毎日僕も飽きないもんだ。同じコンビニに一日中朝から晩まで時には晩から朝まで…
高校を卒業し、コンビニ店員になりはや4年。他のバイトには慕われているが、裏ではコンビニ社畜人造人間と呼ばれていることは知っている。店長が教えてくれた。そんなことは教えなくてもいい。
「いっそ世界なんて隕石が落ちて滅ぼされてしまえばいいのに…」
そんなことを考えても隕石は落ちないし、その代わりなのかコンビニ勤務の帰り肩に鳥の糞が落ちた。
「なんで何も上手くいかないんだよ…」
ちょっと涙が出たが、それがどうした。これから何年も続いていく人生に比べると刹那の悲劇である。
ーそんな日ポストを見るとそこには真っ赤な封筒が。
送られてきたことのない色封筒に恐怖を抱く。光熱費などのライフラインに関わるものはしっかり払っている…こんな便りがくる覚えがない。
唾を飲み、僕は封筒を開いた。
『おめでとうございます!!
貴方がティラノサウルスチャレンジに選ばれました!
人類初でティラノサウルスと戦う権利を得ました!
拒否権はありません!
存分に人類の強さを見せつけてください!
場所は新東京都○○○○○-○○○です。日にちはーーー』
なにかのイタズラだろう…
人間がティラノサウルスと戦う?そんな馬鹿なことがあってたまるか。
イタズラだということの安堵感の中、苛立ちと共に封筒ごとゴミ箱に捨てる。
そして割引の惣菜を食べ、眠りについた。
ー数日後
今日もいつもと変わらずコンビニへ行く、何も変わらないいつもの朝。
一昨日買った賞味期限切れのパンを食べて、仕事に向かう。
家を出た時「あれ…視界が…」
視界は霞み、僕は玄関に倒れ込む…