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9話「王太子との結婚式」



ヴォルフハート王国――


アリアベルタとレオニスの結婚式当日――



早朝からジャネットに叩き起こされました。


ジャネットは、私の髪を手荒く梳かし、縦ロールにしました。


顔に原型がわからなくなるほど化粧品を塗り、ケバケバしいメイクを施されました。



 ◇◇◇◇◇



朝食を食べる暇もなく、馬車に乗せられ、教会に連れて行かれました。


ジャネットは、私の手を引っ張り、教会の花嫁控室に連れて行きました。


そして、有無を言わせず、ウェディングドレスに着替えさせたのです。


ジャネットが用意したウェディングドレスは、私の想像の斜め上をいく派手なデザインでした。


金色の布地にビーズが縫い込まれ、見てるだけで目がチカチカします。


「ジャネットに、苺などの果物の種が必ず喉に突っかかる魔法をかけてやりたいのだ!」


フェルは姿を消して私について来てくれました。


彼は、ジャネットに対してとても怒っているようです。


私はジャネットに気付かれないように、フェルを宥めました。



 ◇◇◇◇◇



そうして、式の時間になりました。


私が式場に入ると、参列客からどよめきが起きました。


「清楚な妹王女ではなく、浪費家の姉の方が嫁いで来たというのは本当だったのだな……」

「浪費家の王太子妃など、この国は不要だというのに……」

「……ノーブルブラント王国は、体の良い厄介払いをしたのようだ」

「なんとセンスのないデザインのドレスなのでしょう。眩しくて見ていられないわ」

「見て、あの顔。ノーブルブラント王国の第一王女は、心だけでなく顔も不細工なようね」


会場のあちこちから、ため息が漏れる音が聞こえました。


どうやら、この国の貴族は私が嫁いで来たことに落胆しているようです。


ハデハデなウェディングドレスを着て、厚化粧をしているのです。


嫌われても仕方ないですね。


フェルは今日は離宮でお留守番です。


一人で悪口に耐えなくてはいけません。


祭壇の前で王太子が待っていました。


私はバージンロードをゆっくりと歩き、彼の隣に立ちました。


王太子殿下は、漆黒のフロックコートに身を包んでいました。


長身の彼には、黒の礼服が良く似合っています。


私が隣に立っても、王太子はこちらをちらりとも見ませんでした。


昨日、「化け物」と言われたことをまだ根に持っているようです。


あれはジャネットが言ったとは言えませんし、言っても信じてもらえないでしょう。


彼のこういう態度も甘んじて受け入れましょう。


彼には、庭の使用許可をいただければそれで十分です。


「なんじ病める時も健やかなるときも…………新婦を愛し続けることを誓いますか?」


「誓います」


「なんじ病める時も健やかなるときも…………新郎を愛し続けることを誓いますか?」


「はい、誓います」


祭壇の前で、形だけの誓いの言葉を述べた。


「よろしい、では誓いのキスを」


大神官様に促されました。


はぁ……とうとうこの時が来てしまいました。


私を嫌っている王太子殿下と口付けを交わすときが……。


王太子殿下は、私のヴェールをそっと上げました。


もっと乱暴にされるかと思いましたが、思いの外丁寧にヴェールを外されました。


王太子殿下は、真紅の瞳で私をギロリと睨みました。


やはり彼は、私が嫌いなようです。


こんなゴテゴテしたドレスを着た、厚化粧の女を好きになるはずありませんよね。


それに、王太子殿下は清楚で可憐と評判の妹のシャルロットが嫁いで来ると思っていたのです。


良くない噂がある、姉の私が来てがっかりしていることでしょう。


王太子殿下は顔を近づけてきました。


私は覚悟を決めて、瞳を閉じました。


心臓がドクンドクンと音を立てています。


「安心しろ、本当にキスしたりしない。

 口付けをするフリだけだ」


驚いて目を開けると、彼は冷たい目で私を見ていました。


「君だって、化け物に触れられたくはないだろう?

 俺も君に触れるつもりはない」


やはり彼は「化け物」と言われたことを、根に持っているようでした。


自らを「化け物」と言ったとき、彼が少し悲しそうな顔をした気がしました。


彼は、口づけするふりだけして顔を放しました。


「二人を、ここに夫婦と認めます」


大神官様がそう宣言し、会場からまばらな拍手が起こりました。


口付けをしなくて済んで、ホッとしています。


彼の傷ついた顔を思い出し、少し罪悪感が湧いてきました。


私は、横にいる王太子殿下を見ました。


彼は冷たい顔をして会場を見ています。


関係の修復は難しそうです。


庭園の使用許可を取りたいのですが、どうやって切り出したら良いでしょう?





読んで下さりありがとうございます。

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