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37話「アリアベルタ、単独行動をする」




お昼ご飯を食べたあと、私達は薬草探しを再開しました。


茹でたてのじゃがいもをフーフーしながら食べるのもよいですが、他の食材とともに調理したじゃがいもを森で食べるのもまた別の良さがあります。


魔物がでなければ、完全にピクニックですね。


また、三人で外でお弁当を食べたいです。



 ◇◇◇◇◇



今回私達がドゥンクラー・ヴァルトに来た目的は、解毒の効果があるエントギフテンデス・グラースと、体力回復の効果があるエアホーレンダス・ブラットを探すことです。


午前中は、他の植物に目を奪われてしまいました。


これからは、目的の薬草を探すことに集中しようと思います。


こうしてる間にも、国王陛下は毒で苦しんでいるのですから。


フェルの話では、エントギフテンデス・グラースは赤紫蘇に似ていて、エアホーレンダス・ブラットはつるも葉も赤いそうです。


ですが、そのような植物は一向に見つかりません。


もっと、奥の方を探した方がいいのかもしれません。


私は目当ての植物を探すために、森の奥へと進みました。


すぐに二人の元に戻れば大丈夫ですよね?


……と思っていたのですが、植物を探すのに夢中になって二人とはぐれてしまいました。


困りました。


帰り道も分かりません。


遠くで獣の鳴く声が聞こえます。


そういえば、この辺りは魔物が多く生息しているんでした。


レオニス様の傍を離れたのは失敗でした。


私がいなくなったことに気づいたら、レオニス様は探してくれるでしょうか?


でもレオニスの目的は、この国を豊かにすること。


それは、フェルがいれば事足ります。


私は、フェルのおまけでしかありません。


使用人に暴力を振るっているという悪い噂がデマであることと、「化け物」と言ったのがジャネットだということは彼に知ってもらえました。


だからといって、まだレオニス様と仲良くなったわけではないのです。


なので、レオニス様が探しに来てくれる可能性は低いです。


フェルは……きっと私のことを探しに来てくれますよね?


お菓子に釣られて、レオニス様に買収されたりしませんよね?


森の奥に一人でいると、どんどん不安な気持ちになってきます。


本で読みました。森で迷ったらじっとしてるのがいいと。


でもじっとしていると、不安でどうにかなってしまいそうです。


やはり、帰り道を探すべきかもしれません。


途中で、薬草を見つけることができるかもしれませんし……。


私が歩き始めた時、しげみの奥からカサカサという音が聞こえました。


もしかしてフェルかしら?


しかし私の期待はすぐに打ち消されました。


茂みの中から出てきたのは、虎の姿に似た魔物でした。


魔物は鋭い目でこちらを見据え、徐々に距離を詰めてきます。


私、ここで死ぬのでしょうか?


最後にフェルに会いたかった……!


フェル、私がいなくなってもこの国の人たちと仲良くしてね……!


そうしている間にも魔物が一歩、また一歩と近づいてきます。


近づいてくる分、私は後ずさりしましたが木にぶつかってしまいました。


もう逃げ場はありません!


私、死ぬのね……。


その時、レオニス様の微笑みが脳裏をよぎりました。


どうして今、レオニス様の顔が浮かんだんでしょう?


彼は政略結婚の相手でしかないのに……?


魔物が唸り声を上げ、牙をむき出しにして襲いかかってきました。


「フェル……! レオニス様……!」


私は二人の名前を叫んでしまいました。


キィーン! ザン……!


という音がして、目を開けると魔物が血を流しながら倒れていました。


「無事でよかった……! アリアベルタ……!」


漆黒の髪に真紅の色の瞳の美青年が、心配そうな顔で私を見つめていました。


レオニス様が助けに来てくれた。


胸の中が助かった安堵感と、彼に会えた喜びでいっぱいになりました。


私、生きてるのね……!


生きてレオニス様に会えたのね。


そのとき、彼の剣と手には血がついていることに気が付きました。


「レオニス様、お怪我を……!」


「魔物を攻撃する時、少し爪がかすっただけだ。

 あの魔物には毒はないので問題ない」


「駄目です!

 少しの傷も体に障ります!

 待ってください先ほど採取した薬草が……」


私はポーチの中からハイレンデス・クラウトを取り出しました。


回復ポーションの材料になるのであれば、そのままでも怪我の治療に使えるはずです。


私はハイレンデス・クラウトを彼の体に貼り付け、その上からハンカチで結びました。


「これで大丈夫なはずです」


「ありがとう」


レオニス様ははにかみながらそう言いました。


「お礼を言うなら、こちらの方です。

 危ないところを助けてくださり、ありがとうございます。

 ですが無理はしないでくださいね。

 あなたはこの国の王太子、国王陛下と王妃様がお倒れになった今、この国の唯一の希望なのですから」


本当は、私などの護衛をしていていい方ではないのです。


「それを言うなら君だって、王太子妃だろう?

 妖精の加護を受けている君の方が民の希望で、俺なんかより遥かに尊い存在だ」


レオニス様が真っ直ぐに私の瞳を見据えました。





読んで下さりありがとうございます。

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