26話「シャルロット王女の企み」シャルロット視点
――シャルロット王女視点――
同日、ノーブルグラント王国――
わたくしの名前はシャルロット・ノーブルグラント、十六歳。
金色の髪にサファイアブルーの瞳の、国一番の美しさを誇る王女よ。
わたくしは、なんでも一番になるのが好き。
このわたくしが、二番手なんて許されない。
だから、愛人の子でありながら「第一王女」と呼ばれる、異母姉のアリアベルタが嫌い。
お父様の愛人が亡くなったあと、異母姉がメイド達に虐待されているのは知っていた。
でも、わたくしはそれを止めなかった。
だって、止める理由がないもの。
お父様の愛人の子など、やせ細って死んでしまえばいいのよ。
だけど、あの女は……アリアベルタはしぶとく生き残っていた。
でも、異母姉にも一つだけ役に立つことがあったわ。
一つは、わたくしの汚名を被ってくれたこと。
使用人に暴力を振るっていたことと、散財していた汚名を異母姉に着せたわ。
二つ目は、わたくしの代わりに隣国の殺戮王太子に嫁いでくれたこと。
このときだけは、異母姉が餓死していなかったことに感謝したわ。
ヴォルフハート王国の王太子は、殺戮の王太子と呼ばれている。
そう呼ばれているくらいだから、きっと筋肉ムキムキで頭の悪い不細工な大男に決まってるわ。
もしくは根暗で冴えない死神みたいな陰気な男ね。
そんな男にわたくしが嫁ぐなんてあり得ない。
わたくしの代わりに異母姉を嫁がせて本当に良かったわ。
わたくしの理想は高いのよ。
わたくしが嫁ぐ相手は、文武両道で、ちょっと影のある、長身の美男子と幼少の頃から決めているの。
あの女はわたくしの汚名を被って嫁いだあと、王太子に相手にされず、惨めに死ななくてはいけない。
だから、異母姉に監視のメイドを付けたわ。
異母姉に付けたメイドは、彼女の初夜の様子を見届けたあと帰国した。
メイドと一緒に、異母姉の監視に付いていた兵士も帰国したわ。
兵士からは大した話は聞けなかったけど、メイドから面白い話が聞けたわ。
帰国したメイドの報告によれば、異母姉は国境まで出迎えに来た騎士団に罵詈雑言を吐かれたみたい。
結婚式には国王も王妃も参列せず、王太子に誓いの口付けも拒否されたみたい。
結婚式に参列した貴族は、異母姉を酷評したそうよ。
初夜に新郎に相手にされず、「いずれ離縁する」と言われたらしいわ。
メイドの報告を聞いて、私の口角は自然に上がっていた。
異母姉は隣国でそんな待遇を受けていたのね。いい気分だわ。
そこまで酷い待遇を受けたら、わたくしなら自害しますわ。
異母姉は、ほっといても皆に蔑まれ孤独の中で死ぬでしょう。
異母姉の監視のために、もう一度メイドをヴォルフハート王国に送らなくてもよさそうね。
愛人の娘の分際で「第一王女」と呼ばれていた報いですわ。
それにしても……隣国から帰国したメイドも騎士も、果物の皮で滑って転んだり、植物の種を喉につっかえさせたり、そそっかしいですわ。
二人共、こんな粗忽者だったかしら?
それに、二人共マスクで顔を隠しています。
理由を尋ねたら、「朝起きたら鼻毛が蝶結びになっていて……」と意味不明なことを答える始末。
下々の話はよく分かりませんわ。
誰かに呪いをかけられたわけでもあるまいし、そのような現象が自然に起きるとは思えませんもの。
普段ならそのような与太話をしたら、罰を与えるところです。
ですが今日わたくしは、異母姉が隣国で惨めな暮らしをしてると知ってとても機嫌がいいの。
二人の無作法も許してあげるわ。
「ホーホッホッホッホッ!
お姉様なんて隣国で邪険にされて、惨めに泣きべそをかいて、自害すればいいんだわ!」
この日わたくしは上機嫌でした。
……まさかその三カ月後、とんでもない報告を聞くことになるなんて思いもよりませんでしたわ……。
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