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21話「アリアベルタ、畑の拡大を願い出る」


「……頭を上げろ」


彼に言われ顔を上げると、彼は少し不服そうな顔をしていました。


今は手入れされていないとはいえ、宮殿の庭はお城の顔です。


そこをじゃがいも畑にしたいと言ったので、怒っているのでしょうか?


「君が神妙な面持ちで『お願い』と言うから、もっと俺と一緒にいたいとか、そういう可愛らしい願いを期待していたのだが……」


殿下は口に手を当てボソボソと話していました。


「今なんと……?」


「いや、こちらの話だ。

 君がこの国の民を思ってくれていることをとても嬉しく思う」


そう言った彼は、凛々しく、民を思う王太子の顔をしていました。


「宮殿の庭の使用許可を出す。

 庭の半分をじゃがいも畑にするといい」


「本当に宜しいのですか?」


自分から持ちかけたことですが、お庭の半分もじゃがいも畑にしてしまって、大丈夫なのでしょうか?


「君が言う通り、この国の民は飢えている。

 民の幸せを考えるのも王太子の努め。

 畑の拡張は、むしろこちらからお願いしたいぐらいだ」


王太子殿下は、民の暮らしを第一に考える優しい方のようです。


「ありがとうございます」


私は再度頭を下げました。


「畑を拡大するとなると、私とクレアさんだけでは人手が足りません。

 勝手なお願いだとは思いますが、何人か使用人を貸していただきたいのです。

 できれば農作業の経験のある男性がよいのですが……」


兵士の中には、農家出身の方もいるでしょう。


そういう方に協力していただけると助かります。


「男手はダメだ! 貸せない!」


彼は厳しい表情で言いました。


「なぜですか?」


「いや……その、男を離宮に派遣すると……君に惚れるかもしれないし……」


「はい……?」


「いや、そうではない。

 大半の兵士は城の外でモンスターの退治に当たっている!

 城でじゃがいもを育てる時間などない!」


そうですよね。


この国には食料の問題の他に、モンスターが頻繁に出現するという大きな問題を抱えていました。


兵士の方々はモンスターから民を守るので精一杯ですよね。


「だが、女性はべつだ。女性でいいならこちらに派遣する」


「本当ですか!?」


「元庭師の女性を数人そなたに貸し与える。手足のように使うといい」


「ありがとうございます」


庭師の方なら植物に詳しいですよね。


彼女達なら力になってくれそうです。


これからは、今よりもたくさんじゃがいもを育てられます!


「それからもう一つよろしいですか?」


「まだ何かあるのか?」


「じゃがいもがたくさん収穫できたら、町で炊き出しをしたいのです。その許可をください」


収穫したじゃがいもを生で配ってもいいのですが、出来ればお料理したものを提供したいです。


「いいだろう」


「ありがとうございます」


王太子殿下は、あっさり許可してくれました。


やはり彼は、民を思いやる心を持つ優しい人です。


「ただし、炊き出しの日が決まったら必ず俺に知らせるように」


「はい、もちろんです」


炊き出しは私だけではできません。


宮廷のシェフや、メイドにも手伝ってもらわなくてはいけません。


場所の確保や、警備の兵士も必要です。


それらは、王太子殿下の許可なく動かせません。


庭の拡張や、じゃがいもの収穫、炊き出しなど、やることはたくさんあります。


ですが、なんだかわくわくしています。



 ◇◇◇◇◇



「アリー、王太子は帰ったのだ?」


「フェル、隠れていてくれてありがとう」


王太子殿下が帰ったあと、フェルが私の所に飛んできました。


「あいつがいると、アリーの傍にいれないから嫌なのだ」


フェルが私に抱きついて来ました。


私はフェルの頭を撫で撫でしました。


「そう言わないで、彼はじゃがいものお礼を言いに来てくれたのよ」


自らお礼を言いにくるなんて、律儀な人だわ。


「それにね、畑を拡張する許可をくれたの。

 じゃがいもを今より沢山作れるわ!

 じゃがいもを沢山収穫したら、街で炊き出しをやる予定よ」


「わくわくするのだ!」


フェルも嬉しそうにしていました。


「庭師を数人貸してくれるそうなの。

 フェルには隠れていてもらうことが増えそうだけど、大丈夫?」


「それくらい平気なのだ。

 でも、誰もいないところではアリーと沢山お話したいし、頭もいっぱい撫で撫でして欲しいのだ」


「いいわ。

 沢山撫で撫でしてあげる」


じゃがいもの収穫にはフェルの力が必要不可欠。


その為なら何でもするわ!


「明日から忙しくなるわよ!

 頑張りましょうフェル!」


「おー! なのだ!」



読んで下さりありがとうございます。

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