新たな場所へ
サザンカがリアナとロゼッタとともに遊んでいる頃、オミ達狼組はギルドの依頼をいくつも受けていた。
『……ねぇ……オミ……あとどれくらい依頼を受けるの?』
『数えられるだけでもすでに五つはしてますわね……』
『ほとんど討伐だけど……まだするつもり?』
『へばったんなら休んでていーぞー。
俺はまだ動き足りねぇ。
あーあと……依頼はまとめて受けたから……まだまだあるぞ』
サザンカと離れ、朝から依頼を受けていたオミ達。
場所を移しながら依頼を確実にこなしているものの、終わる気配を見せない依頼の数に、うんざりしたような表情を浮かべるヒスイ。
オウカやレイもまた、呆れた表情を浮かべてオミに視線を向けている。
そんなオミは気にする素振りもなく、懐からさらに依頼の用紙を取り出して得意げな表情で皆に見せた。
その様子にヒスイ達三人はため息を吐き、さらに呆れた表情を見せた。
『……どんだけ暴れ足りないの……』
『ウィスタード家の戦いに不満があった……そんなところだろう』
『あの時の戦いは物足りなかったからな』
『オミ様は時々そういう所がありますわよね』
『いつもじゃねぇけどな。
とりあえず、残りをやって来るからお前等この魔物たち頼む』
『サザンカ様がいなくてアイテムボックスに納められないし……しょうがないな』
『んじゃ、頼んだ!』
サザンカがいない事で、討伐した魔物を風魔法で運んでいた一行。
オミは皆に魔物の管理を託して、残りの依頼を受けるために一人でその場を去って行った。
***
とっぷり日が落ちた頃。
依頼を受けていたオミ達と、街で遊んでいた《あげは》が街の外に作った小屋で合流し、一日の出来事を話し合った。
『そんなに遊んだのでしたら、子ども達もすごく喜んでいたのでは?』
「うん! 家に帰る頃には二人とも眠たそうにウトウトしてたの。
皆は依頼を受けていたんだよね?」
『まぁな。
これ報酬な。
それと、こっちはこの間の人探しの依頼の分』
オミはそう言いながら、ギルドでもらった二つの布袋を懐から取り出し、テーブルの上に置いて指を指しながら説明を加えた。
その重量のある見た目やどちゃっとした金属音にサザンカは驚きの声をあげる。
「すごい! 布袋いっぱい!」
『私たちの依頼分は金貨が数枚と……あとは銀貨や銅貨ですね。
人探しの依頼の分は金貨が30枚ほど……といったところです』
「そうなんだ! それにしても……皆の依頼分、すごいね!
ギルドの依頼でこんなに稼ぐなんて!」
『一度は休憩をはさみましたが……結局オミ様について行って一日中受けましたもの……』
「一日中?!」
『……さすがに疲れた……』
『俺はスッキリしたけどな』
『……はぁ、まったく……。
何はともあれ、次の街へといよいよ出発ですかね』
「うん! 約束も果たしたし、明日には街を出られるよ!
あ、でも、ルークさんにドレスの弁償金を渡さなきゃ……」
『そうしましたら、明日は街の皆さまにご挨拶周りですわね』
「そうだね! あとは……長旅に必要な物を買ったりかな」
明日の予定も決まり、一行は食事やお風呂を済ませて床に就いたのだった。
翌朝。
目が覚めた一行は出かける支度を済ませて小屋を解体し、挨拶回りをするためにルーベルの街とウィスタードの街へ足を向けた。
一行が先に向かったのはルーベルの街のギルドだった。
そこに着いた一行はギルドマスターのライナーや、魔物を買い取ってくれたジークに街を出る事を伝えた。
「いろいろお世話になりました!」
「いやいや、世話になったのはこっちの方だ。
嬢ちゃん達のおかげで他の冒険者達の士気が高くなってな。
前よりも依頼を受けてくれる冒険者や依頼達成者が増えたんだ」
「俺としては上物の魔物の売り手がいなくなる事が寂しいが……ま、元気でやってくれよな。
またいつでも戻ってきな! 他より高く買い取ってやる」
「いえ、そこは適正価格でお願いします!」
サザンカの言葉に、適わないとでも言うように盛大に笑いを見せたジーク。
そんなやり取りを数分したのち、改めて挨拶を交わしてギルドを出たのだった。
その次に向かったのはリアナとロゼッタの家だった。
『もう街を出られるのですね……』
『寂しい! もう少し遊びたかった!』
『……リアナと同じ……』
「……ごめんね」
『二人とも、お姉ちゃんを困らせたらダメよ。
旅をするのがお仕事なのだから』
『『……はーい……』』
『またこの街にいらしたら、ぜひ寄ってくださいね』
「はい! その時は必ず!」
『じゃぁ、また冒険のお話聞かせてね!』
『……約束……』
「わかった! 約束だよ!」
アリア達親子と挨拶を交わした後は、武器屋と大工の工房に向かった。
先に武器屋に向かったのだが、武器屋にはヴォルフだけではなく、大工のお頭、ハインツまでもいた。
「ハインツさん! ちょうどこの後挨拶に行こうとしてたんです!」
「おぉ、嬢ちゃん。
いい仕事を紹介してくれてありがとうな! おかげでまた株も上がったし、儲けも出たってもんだ」
「ハインツさん達の腕がいいからですよ。
それは妥当な評価だと思います!」
「へへっ。
嬉しい事を言ってくれるぜ」
『ところで、挨拶って言ってたがどうしたんだ?』
「実は今日、新たに旅をするために街を出るんです」
『そっか……それは……寂しいな。
いや、だが、冒険者の嬢ちゃん達を止めるのは野暮だな』
「そうだぜ、ヴォルフの旦那。
商売を成功させて嬢ちゃんを安心させてやらねぇとな。
大口の契約も出来たしな」
「大口? 何かあったんですか?」
『実は、ウィスタードの領主様から街の人達でも扱える武器を作って欲しいと依頼があってな』
「攻められても対抗できるようにしたいらしい」
「前に……進もうとしてるんですね……」
『まぁ、そんなわけで、仕事も安定し始めている。
嬢ちゃんのおかげでな。
ありがとう』
「俺たち大工の皆も感謝してるぜ。
またこの街に来たら顔を出してくれよな」
「はい! もちろんです!」
『気ぃ付けて行ってくるんだぞ』
「はい! 皆さんもお元気で!」
ヴォルフやハインツと挨拶を交わした一行は、旅のための買い物を少ししてルーベルの街を出た。
そして隣街のウィスタードにやって来た。
領主であるルークに会うためだ。
ウィスタード家に着くと、修繕工事がすでに始まっており、慌ただしく人の行き来があった。
そんな忙しい中、ルークは快く応じてくれた。
だが、屋敷内は慌ただしいという事で玄関先での対面になった。
「こんな所で申し訳ない」
「いえ! 街を出る前の挨拶に来ただけですので!
こちらこそ、忙しい中ごめんなさい……」
「それは構わないよ。
兄さんの事……本当にすまなかった……。
こんなんでもよければ、またここに立ち寄って欲しい」
「もちろんです! あ、それと……」
サザンカはアイテムボックスから金貨の入った布袋を取り出し、ドレスの弁償金と言ってルークに手渡した。
だが、ルークは事件の事で迷惑をかけた事で受け取れないと言って首を横に振った。
何度か押し問答を繰り返したが、サザンカの方が折れて、布袋をアイテムボックスに仕舞った。
それをルークは満足そうに頷いた。
その後、サザンカ達は再び挨拶を交わしたのち、ウィスタードの街を出て、新たな旅に出たのだった。
日頃からこの作品に触れて頂き誠にありがとうございます。
私事ながらこの作品、少しの間お休みさせて頂きたく思います。
待っていてくださる皆様には大変申し訳ございませんが、悪しからずご了承くださいませ。




