今はまだ……
戦いが終わった後、サザンカ達はルークの提案により、パーティー会場で使われていた大広間でおもてなしを受けながら体を休めていた。
捕らわれていた人たちも、ルークが呼んだ街の医者達に状態を見てもらい、アフターケアを受けている様子だ。
『皆……無事でよかったやんすね~』
「そうだねぇ……。
って……ザクロはどうしてまだここにいるの?! そしてどうしてアイテムボックスにいたの?!」
『そんなにいっぺんに質問しないでくだせぇ……。
順を追って説明しやす』
ザクロは咳ばらいを一つして、サザンカ達に事の詳細を説明した。
ザクロがアイテムボックス内にいた理由は、神界にある食糧庫の中身が不自然に減っており、不思議に思ったザクロが見張りをしていたところ、見慣れない通路が出来たため調査しようと足を踏み入れた。
そうしたら見慣れない空間に入ってしまい、しばらくすると通路が閉じ、出られなくなってしまったとの事だ。
『……嬢ちゃん……食料のあの減り方は異常でやす……。
いったい、何をしたでやんす?』
「……え~っと……誤解があって警備隊に捕らわれた時に、地下牢でご飯を作った時かな……。
いっぱい作るつもりだったから、大量に食材を使ったんだよね」
『……嬢ちゃん……下界でいったい、どんな生活をしてるでやんす?
それに、その姿……』
「ん~……普通だよ?」
『どこがだよ!』
今まで静かに二人の話を聞いていたオミが、勢いよく話に入ってきた。
そのオミのツッコミにザクロは、やっぱりと言いたげに息を吐いた。
サザンカは、苦笑いを浮かべながらもこれまでの出来事を大まかに説明した。
『……いろいろあったようでやんすね……。
とにかく、嬢ちゃんが元気に生活してるみたいでよかったでさぁ……。
嬢ちゃんが追放された後、皆心配してたでやんすよ……。
兄さんもアマノ様に詰め寄って……。
今の神界は……以前のような覇気がないでやんす……』
「……」
『……神界に……帰ってこないんですかい?』
ザクロの言葉に注目を集めるサザンカ。
サザンカは目閉じ、少し考えてから力強い瞳をザクロに向けた。
「……今はまだ……帰らないよ。
下界でやりたい事があるの……。
皆と一緒に……」
『……そうでやんすか……。
わかりやした! それにしても……嬢ちゃんは変わらないでやんすね……』
サザンカの言葉に安心したように笑うザクロ。
その傍らではオミ達も安心したように微笑んでいる。
『さて! 嬢ちゃんの顔も見れたところで、あっしはこの辺で帰るでやんす!』
「わかった! それじゃぁ、また通路造るからアイテムボックスに入って!」
そう言うとサザンカは、アイテムボックスを出現させ、その中に神界への通路を造った。
『それじゃ、皆さん、サザンカ嬢ちゃんをよろしく頼みやす!』
『お任せください!』
『ま、なんだかんだ楽しいしな』
『あげは様がいないと、困る事がありますから』
『……うん……もっと一緒に旅をしたい……』
『……皆さん……ありがとうございやす……』
オミ達の言葉にうっすらと涙を浮かべ、頭を下げたザクロは、羽を振って挨拶したのち、アイテムボックスに入って神界に帰って行ったのだった。
サザンカ達がザクロを見送ってしばらく経つと、医者の確認が終わったのか、ルークとともにリアナとロゼッタがやってきた。
ルークはサザンカ達の前で立ち止まるなり、深々と頭を下げた。
「皆さん、この度は本当にありがとうございました……。
そして申し訳ない事をした……」
「そんな! 先ほども謝って頂きました! それでもう、十分ですよ!」
「……だが……」
『俺たちはもう平気だから……。
他の客人達の接待もあるだろ……そっちに気をまわしてくれよ』
『オミの言う通りですよ。
これからが大変なのですから……』
「……皆さん……ありがとうございます……。
お言葉に甘えさせて頂くとしよう……。
ところで、神獣様は……お礼を言いたかったんだが……」
「えっと~……気がついたらいなくなってました! 神獣様の事なので、きっと声が届いてると思います!」
「そうだといいな……。
それじゃ、僕はこの辺で……」
ルークは軽く手を挙げてサザンカ達に別れの挨拶をして他の招待客のもとへと行ってしまった。
リアナとロゼッタは、サザンカの手を引きながら嬉しそうにはしゃいだ。
「お姉ちゃんとまた会えた!」
「うん……嬉しい……」
「ふふっ、私も嬉しい! 街に帰ったらいっぱい遊ぼう!」
「やったぁ!」
「約束……覚えていてくれた……」
「それじゃ、今日はそろそろ帰ろう! アリアさん、心配しているから……」
サザンカ提案に頷く二人。
皆はルークに一言声を掛けてその場を後にした。
ルークに声を掛けた際、サザンカはルークに、屋敷の修繕について提案を持ち掛けた。
それは、ルーベルの街にいる大工、ハインツの手を借りる事だ。
詳しい事は彼らで決めるとして、いい腕利きの大工を紹介する事を伝えた。
ルークは遠慮がちな様子だったが、今現状、他人の手を借りる時だと判断し、サザンカの提案に賛同した。
「それじゃぁ……よろしく頼むよ」
「はい! お任せください!」
「……何かあれば……伯爵家で申し訳ないが、力になるよ」
「家柄なんて関係ありませんよ。
何か困ったら頼らせて頂きますね! それでは、これで!」
サザンカは改めてルークに挨拶をしたのち、ウィスタード家を後にした。
そうして一行は、リアナとロゼッタを母であるアリアのもとに送り届けるため、ルーベルの街を目指したのだった。




