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崩壊

 戦いを終わらせるための作戦。

それは、オウカ(桜華)の土魔法でいくつも壁を造り、オミ()ザクロ(雀鷺)がその土の壁を風魔法で天井に向けて投げ飛ばして亀裂をつくる。

さらに、その亀裂が入った所にオミ()オウカ(桜華)が爪にエネルギーを溜め、波動として力を投げ放つというものだ。


 その波動攻撃を何度か繰り返すうちに、亀裂は広がり、天井がボロボロと崩れ出し、瓦礫がノエルやジラルド、ベルナール子爵の上に落ち始めたのだった。


 そこへすかさずザクロ(雀鷺)が強力な風魔法を放ち、ノエル達三人の体制を崩し、さらには瓦礫を受け止めるのだが、重しとして彼らの上に瓦礫を積み重ねた。


 サザンカ(あげは)達の作戦を見たルークは、目の前の光景に唖然と立ち尽くした。


「こ……こんな戦いかた……」


「すみません……少し強引にさせて頂きました」


「……まぁ、いいさ。

これでやっと兄さんと話が出来る」


 そう言ってルークは、地面に伏せているノエルのもとにゆっくりと近づいた。


「兄さん……なんでこんな事……」


「ふふっ……哀れだろう?

あんなに強がっていた人物がこんな姿……」


「そういう事を言っているんじゃない! 僕の知っている兄さんらしくないよ!」


「……僕らしいって何かな……。

君は……僕の何を知っているんだい?」


「僕の知っている兄さんは……何事も卒なくこなして、街の運営もスマートにこなして……社交的で……僕の憧れの兄さんなんだよ!」


「ふふっ……君も……やっぱりそうなんだね……。

僕は……この街のためにした事……間違いだなんて思わないよ」


「兄さん! 考え直してよ! これだけの被害を負ったんだよ!

この街は……兄さんが思うほど……弱くないよ。

皆……心や体に傷を負っても、立ち上がる強さを持っているんだ!」


「……僕には……君みたいに澄んだ瞳で街を見る事は叶わないらしい……」


「何を言って……っ!」


 ノエルは、ルークに合わせていた視線を下に落とし、一瞬瞳を閉じ、目を開けた時には瞳に力が宿っていた。

そしてそのまま水魔法を全身から放ち、自分の上の瓦礫のみならず、ジラルドやベルナール子爵の瓦礫をも水の重さで後方へ飛ばした。


 そしてそのままベルナール子爵の魔法で、三人は天井の抜け道を通って外に出たのだった。


 ルークはノエル達の去った方を見ながら、強く拳を握りながら誰に聞こえるでもない言葉をこぼした。


「……バカ兄貴……」


 その場に残された皆は何とも言えず、そのまま動けずにいたが、ルークは顔を引き締め、サザンカ(あげは)や捕らわれた人々に視線や体を向け、深々と頭を下げた。


「皆……この度は身内がすまなかった……到底許されるものではないが……この通り……」


 ルークの言葉に皆言葉が出ず、うつむく事しか出来なかった。

その中でリアナとロゼッタがルークに近づき、ルークの手を軽く引いた。


「リアナ達……ケガしてないから、大丈夫だよ」


「……スキルはなくなっちゃったけど……大丈夫……元気出して」


「……ありがとう……」


 リアナとロゼッタの言葉に賛同するように、他の捕らわれていた人々も立ち上がり、ルークに近づいて声を掛けた。


 皆ケガもなく、無事のようでルークやサザンカ(あげは)達は安堵した。

だが、ここにいるほとんどの人がスキルを失くしている事に、サザンカ(あげは)は悲しそうな表情を浮かべた。


 しばらく考えたのち、サザンカ(あげは)は顔を上げ、ザクロ(雀鷺)に耳打ちをした。


『わかりやした、やってみやす』


 サザンカ(あげは)ザクロ(雀鷺)が頷き合うと、ザクロ(雀鷺)は咳ばらいをしながら皆の前に出た。


『ゴホン、えー……あっしからスキルについて提案なのですが……』


「おぉ……神獣様……」


「……神獣様……何か……いい案が……」


『あっしの生みの親はスキル付与の女神、サザンカ様でやんす。

そこで、あっしがサザンカ様にコンタクトを取って皆にスキルや魔法の付与をしてもらう……というのはどうでやんすか?』


「たしかに……スキルや魔法がないとこの世の中、周りから変な目で見られるからな……」


「え……そんな事で差別されるって事ですか?」


「はい……。

スキルや魔法の有無だけではなく、一部の地域では所持数でも差別があります……」


「そんな……」


「こんな理不尽な世の中だが、めげずに真っ直ぐに立って人生を歩んでいる者もいます」


「そうですか……」


「だけど……伝道者のようにそういう弱い人の心につけ込む人がいるのも事実……」


「そうだな……。

こんな世の中だから、出来る事ならスキルや魔法を取り戻したいんだ」


『それじゃぁ、その願い、あっしが叶えるでやんす。

皆、その場で両手を組んで目を閉じてくだせぇ』


 ザクロ(雀鷺)の言葉にスキルを失くした人々は両手を胸の前で組み、目を閉じた。


 それを見たザクロ(雀鷺)は、打ち合わせ通りに人々に向かって羽を伸ばした。


 サザンカ(あげは)はというと、ザクロ(雀鷺)に少しだけ重なるように立ち並び、皆に見えないように右手を浮かした。

そしてスキル判別を発動させて、スキルのない人々に復元のスキルでなくしたスキルを復活させたのだった。


 スキル付与が終わった合図をザクロ(雀鷺)にすると、ザクロ(雀鷺)は再び咳ばらいをした。


『えー……皆、もう目を開けてもいいでやんすよ。

スキル付与は無事に終わったでやんす』


「それでは皆さん……お疲れでしょうから、このお屋敷で再度お客人としてもてなしをさせてください」


 ルークの言葉に緊張の糸が切れたのか、その場に座り込む者が増えた。

その者達に肩を貸す者や、小さい子に対しては背中を貸す者もいて、皆で協力をしてこの地下室から出たのだった。


 その後、伯爵家の皆で街中どこを探しても、去っていったノエル達の姿を見つける事は出来なかった。


  今回の事件の真相をまとめるとこうだ。

ウィスタードの街の領主であるノエル・ウィスタードが主犯であり、街をパーソン族から守るための行動だという。

そのために勇者召喚の儀式を行うのだが、それには大量のエネルギーやスキルが必要なため、スキルを多く持つ者を生贄として捕らえていた。


 さらに、儀式を行う地下の部屋には、プランターで花を育てていたのだが、その花こそが臭いの痕跡を消していたベガチアの花だった。


 この事件に関して、街の者達は伯爵家を責める事はしなかった。

だが、なんとも言い難い、後味の悪い結果に、皆の気分は少しばかり落ち込んだのだった。

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