戦いを終わらせるために
サザンカがアイテムボックスから引っ張り出したのは、神界にいるはずのザクロだった。
目が合い、しばらくの沈黙の後、お互いに驚愕した。
「ザクローーー!? なんでーーー!?」
『どなたでやんすかーーー!?』
「え……?」
『ん……?』
「えっと……私がわからない?」
『……どちら様…いや、待ってくだせぇ……その瞳の色……少し抜けた感じの気配……サザ……』
「シッーー!」
ザクロが危うく名前を呼びそうになり、反射的にザクロの口ばしを両手で包み、しゃべりを封じたサザンカ。
その行動に羽をばたつかせて、もがきながらも頭を上下に振るザクロ。
そんなザクロの口を覆うのをやめたサザンカは、大きく息を吐きながら安堵した。
「はぁ~……わかってもらえてよかった……」
『ところで、嬢ちゃん……これはいったいどういう状況ですかい?』
「あ~……話せば長くなるんだけど……。
ザクロはどうしてアイテムボックスにいたの?」
『こっちも話せば長いでやんす……』
「そっか……。
じゃぁ、あとで話すとして……今はこの戦いを終わらせたいの……。
皆、苦戦しているみたいだし……」
サザンカ達は小声で話しながら、戦っている皆に視線を向けた。
『なら……あっしは何をすれば……』
「う~ん……とりあえず、皆を守って! 私、オミのところに参戦してくる!
あの魔物、打撃が効くみたいだから! 私、行ってくる!
オウカ! 訳あってアイテムボックスから神獣様が現れたから、二人で皆を守って! 私は戦いに参戦する!」
『え、あ、あげは様?! というより、ザクロ様?!
こ、これはどういう……』
「よろしくね~!!」
サザンカは声を張り上げながらオウカに伝え、二人に手を振りながらオミのもとへと駆けて行った。
そんなサザンカの言葉を聞いた捕らわれていた人々は、ザクロの姿に、伝説や伝承として聞いていた神獣が目の前にいる事に驚きを隠せないでいた。
そんな事はつゆ知らず、戦いの場は激しさを増していた。
そんな中、オミと合流したサザンカは、ドレスの裾を少し上に上げて結び、動きやすいように丈を短くした。
「これで戦える!」
『おま、その格好で!
……今はとりあえず、そんな事はいいか……やれんのか?』
「うん! 任せて!」
『なら、魔法でサポートするぜ!』
サザンカは体中にエネルギーをまとわせて、ヒスイのように地面を蹴り上げてものすごい速さで敵に突っ込んでいった。
そのサザンカの後ろでは、オミが身構え、火魔法や風魔法を口から放つ。
サザンカに攻撃が集中しないように敵の気をこちらに向けるためだ。
その間、サザンカはというと、オミの攻撃のおかげで敵からの攻撃を受けずに敵の正面までたどり着いた。
そしてさらに地面や空を蹴り、敵の額の前まで来たサザンカは、オウカのように拳にエネルギーを最大に溜めて力強く敵の額に向かって突き出した。
「はぁーーーー!!! くらいなさい! 全力、パーーーンチ!!!」
サザンカの一撃をくらったファークバイソンはエネルギーの波動の余韻で気絶し、入り口の方まで飛ばされて仰向けになった。
さらにサザンカは、もう一匹を仕留めるために体を敵に向けた。
だがもう一匹は地面で構えているため、空中にいるサザンカの拳を受けるには少し時間がある。
その間にこちらに飛び掛かって来られても困る。
それを見たオミは軽めの雷魔法で一時的に敵をひるませ、時間を稼いだ。
「オミ、ありがとう! くらいなさい! ドロップド~……スタンピング~~~!!!」
『……ただのケツアタックじゃねぇか……』
サザンカは敵のひるんだ隙に空中で体を一回転させ、重力で落ちる事を利用してお尻にエネルギー溜め、そして敵の脳天に一撃を与えた。
『……すっげ……さすが山を壊しただけはあるな……二匹とも一撃だ……』
「えっへへ~、まぁね! そんな事より、レイさんやヒスイたちの方は!」
オミが相手をしていた二匹のファークバイソンを仕留め終えたサザンカは、いまだ戦っているレイやヒスイに視線を移した。
そしてオミもサザンカ同様に視線を向けた。
『……あいつら……全力出してねぇ……』
「え……なんで……」
『……敵であり、魔法やスキルを使っているとはいえ、人を相手にしているんだ……。
殺してしまわないように、加減してんだよ……』
「それじゃぁ……体力を奪われ続けて、最後には……」
『……あぁ……あいつらがやられちまうかもな』
「そんな!」
サザンカがレイやヒスイの戦いに参戦しようと動いた刹那、戦いを見守っていたザクロに呼び止められた。
『え、ザクロ様?! すげー、本物だ!』
『話は後でやす!
嬢ちゃん、一度に二つの戦いは危険すぎやす!』
「でも、二人が……。
それに、ルークさんの所も……」
『……一度に全部の戦いを止められればいいのでやすが……』
『そうですわ! こういうのはいかがでしょう……』
オウカの言葉に身を寄せ合い、ヒソヒソと小声で話す一行。
皆は話を聞き終え、賛成の意思を見せた。
「それで行こう! 頼み事は私がルークさんにする!」
『それでは、わたくし達はヒスイやレイに声掛けをしますわ!』
オウカの作戦を実行するため、各々持ち場に移動した。
ザクロは魔法を使うために戦いの場の中心に待機し、オミはレイの戦っている後ろの方へ。
そしてオウカはヒスイのもとへと行き、サザンカはルークのもとへと行った。
「ルークさん! 一度下がってください! すみませんがこのお屋敷、後で弁償します!!」
「え、君たち何を!」
「話は後です!」
『おい、レイ! いったん下がれ!』
『ヒスイもよ! 一度下がって!』
各々作戦通りに声を掛けると、ルークやレイ、ヒスイは疑問に思いながらも戦っている相手から少し距離を取った。
「何を企んでいるか知らないが、君たちにはここで生贄になってもらうよ!
ベルナール子爵! 強力魔法を!」
ノエルの言葉に杖を上に掲げる子爵。
杖が光ったのと同時にサザンカも空に手を伸ばして力を使った。
「これ以上……させません!!」
そういうと、サザンカの力のおかげで部屋中の結界が消えた。
それと同時にオウカは土魔法でいくつも壁を造り、オミとザクロはその土の壁を風魔法で天井に向けて投げ飛ばしたのだった。




