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街のために

 サザンカ(あげは)達の足元がゆっくり下に向かって降下していく中、オミ()オウカ(桜華)は冷静に身構えていたが、サザンカ(あげは)や招待客の皆は動揺を隠せずにいた。


 しばらくして足元の動きが止まり、動揺していたサザンカ(あげは)達の視界に再び大きい扉が入ってきた。


 その扉はノエルの背後にあるため、ノエルの両側に立っていた門番や杖を持った男が振り返って大きな扉を開けた。


 二人の男が扉を開け終わるのと同時に、ノエルも振り返りって扉が開ききっているのを確認し、招待客やサザンカ(あげは)達を部屋の中に促した。


「さぁ、扉が開いた! 諸君、中を確認してみたまえ! 果たして、探し人はいるだろうか!」


 ノエルの言葉に怪訝な表情を浮かべる皆だったが、招待客の一人が扉の向こうに見知った顔を見つけ、慌てた様子で部屋に入っていった。

それを見た他の客も次々と部屋の中に押し入るように入って行く。


 ノエルは始終、楽しそうな笑みを浮かべて人の波にのまれないように扉の横に身を避けた。


 サザンカ(あげは)オミ()達もノエルを横目に見ながら部屋に入り、レイ()ヒスイ(翡翠)の姿を捜した。


 部屋の中はとても広く、壁に設置されている照明で明かりが灯されており、部屋の端々には壁に沿うように多くのプランターが設置されていた。

そのプランターには多くの花が成っていた。


 それを視界に入れながらも、オミ()達はレイ()ヒスイ(翡翠)の姿を捜し、サザンカ(あげは)レイ()達はもちろん、アリアに頼まれたリアナとロゼッタを捜した。


 しばらくすると、見つかった喜びから抱き合っている招待客の奥に、横たわっているヒスイ(翡翠)の姿をオウカ(桜華)が見つけた。


『翡翠!』


 オウカ(桜華)ヒスイ(翡翠)に駆け寄り、息があるか、ケガをしていないか状態を確認をしている。


 オウカ(桜華)ヒスイ(翡翠)の状態を確認している傍ら、別の場所ではオミ()レイ()を見つけて状態を確認していた。


 二人とも眠らされていただけで、どこもケガはないようだ。

呼び声に目を覚ました二人は、のそのそと体を起こし、辺りを見渡した。


 そんな中、別の場所ではルークが招待客の何人かに介抱され、意識がはっきりとした彼は扉の前に立っている兄、ノエルに鋭い視線を向けた。


「これはどういうことなの! 兄さん!」


「……そんな……ノエルさんが?」


 部屋の中にいる皆が、扉の前に立つノエルに視線を向ける。


 それでも今尚、楽しそうな笑みを浮かべるノエルは、体を正面に向け、皆に視線を向けた。


「諸君は選ばれた! 誇りを持ち、胸を張っていい!!」


「……ノエル様……いったい……何を言っているのですか……」


「ノエル様……どういうことか説明を……」


 招待客の戸惑う声が飛び交う中、オミ()達のもとにヒスイ(翡翠)を背中におぶったオウカ(桜華)が合流した。


 そんなとき、オミ()達から少し離れた場所にいたサザンカ(あげは)の耳に、聞いた事のある声が入ってきた。


「この声……」


 サザンカ(あげは)が声のした方に視線を向けると、小さく身をかがめて震えている二人の少女が目に入った。


 その少女たちは、サザンカ(あげは)達が依頼を受けたアリアの娘のロゼッタとリアナだった。

二人に近づき、声を掛けたサザンカ(あげは)


「ロゼッタちゃん! リアナちゃん! どこか痛いところはない?! 無事でよかった!」


「おねえちゃん!」


「……ケガはないよ……でも……怖い……」


「そっか……そうだよね……。

……。

皆のもとに戻ろう! きっと、怖いのもちょっとは大丈夫になるよ!」


 サザンカ(あげは)は二人に不安が伝わらないように明るく振舞い、二人の手を引いてオミ()達のもとに戻った。


 サザンカ(あげは)達がオミ()達のもとに戻ると、いまだにノエルに向かって説明を求める声で溢れていた。


「これだけ疑問が多いなら、説明しようではないか!」


 ノエルは両手を広げて意気揚々と皆の疑問、一つ一つに応えた。


 ここに集められた者は、この街のためになる選ばれし者で、その選ぶ基準は、種族問わずに水晶に触れてもらい、水晶が青く光った者だけを集めたのだと。


「この水晶は特殊な仕様でね、青く光るという事は、魔法やスキルを三つ以上持っている事を指すんだよ」


「……どうして……それだけでこんなに大勢の人を集めるの! 兄さんは何をしようと考えているんだ!」


「それはね、ルーク……勇者を召喚するためだよ!」


 ノエルはさらに説明を続けた。

勇者召喚のために魔法陣を用いり、さらには魔法やスキルを多く持つ者を集め、その者達の保有するスキルと魔法、そしてエネルギーを使うとの事。


 エネルギーは召喚の時の動力になり、スキルや魔法はエネルギーに還元され、召喚された人物に強力な魔法やスキルとして付与されるのだそうだ。


 召喚のために利用された者達は、エネルギーは残るが、スキルや魔法は体の中から跡形もなく消えているとノエルは言った。


「スキルの有無は基本、教会に行けばわかるんだけど、この水晶が赤く光るという事は、スキル無しって意味なんだよ」


「そんな……それじゃぁ、僕たちはその召喚のための生贄って事じゃないか!」


「そうだよ。

この街をパーソン族から守るためには強い力がいる!

そのために研究の日々を重ね、賢者に会い、伝道者の知恵を借りたんだ!」


「そんな……。

強い力が欲しいのは事実だけど……こんなやり方……間違ってるよ!

関係のない人々を巻き込むなんて……小さい子だって大勢いるのに……」


「街を守るために必要な犠牲さ。

ちなみにすでに勇者召喚は成功している! 僕も協力したんだ! あの者達はすばらしいよ!

全属性魔法を保有する者や、戦闘のプロである勇者スキルを持っているんだ!


だが、どういう訳か、この屋敷からいなくなってしまってね……。

だから、第二弾として、君たちが選ばれた!」


「……第……二弾? 私が付与したスキルを……こんな使い方……」


 ノエルの説明が一通り終わると、今まで静かに聞いていたサザンカ(あげは)は視線を下に落とし、ぽつりと言葉をこぼして立ち上がった。

信じたかった気持ちや、信じたい気持ち、悲しいやら悔しいやら、複雑に感情がこみ上げ、震える拳を強く握った。

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