皆で捜索
パーティー会場でスキルや魔法を使った大道芸が行われる中、サザンカ達は一向に戻らないレイとヒスイについて話し合っていた。
「二人とも……連絡が繋がらないし、戻りも遅いし……探しに行く?」
『……だが……今出て行っても怪しまれたり、引き留められるだろ……』
『そうしましたら……一人が抜けて探しに行くとか……』
「……一人で動くのは危険な気がする……」
サザンカ達の話がまとまらず話し合う事数分。
大道芸のショーが終わり、会場中に歓声と拍手が響き渡った。
ショーが終わり、会場の電気がつくと、拍手や歓声が少しずつ治まり、困惑の声があちらこちらで聞こえ始めた。
その聞こえてきた声に、サザンカ達も考えるのを一度やめて辺りを見渡した。
『……皆さん……いったい何を戸惑っているのでしょう……』
『なんか……会場にいる人数……減ってねぇか?』
「ショーを見ている時に、お手洗いに行ったまま迷子になってるとか?」
『だとしても大人数はおかしいし、もし迷子になってたとしたら、屋敷の人が声を掛けて会場まで案内してくれるだろ』
「……そっか……」
『いったい……どうなっているのでしょう……』
サザンカ達も困惑する中、会場に溢れる戸惑いの声に耳を澄ますと、どうやらオミの感じた違和感が当たっているようで、我が子を探す声や知人を探す声で溢れていた。
会場中がどよめいていると、入り口の扉が開かれてノエルが入ってきた。
ノエルは会場に入るなり、異変に気付き、招待客に尋ねまわった。
そこへ数人の屋敷の使用人が、顔を真っ青にしながら慌てた様子でノエルに駆け寄った。
「ノエル様! ルーク様が……ルーク様が見当たりません!」
「なんだって! 招待客だけじゃなくて、ルークまでいなくなったのか!」
「……ルーク様まで……」
「街に広がるあの噂……それに巻き込まれたのやも……」
ノエルと使用人の会話を聞いた招待客は、さらに困惑した表情を見せた。
そんな中、サザンカ達も顔を見合わせてノエルに近づき、レイとヒスイが戻って来ないことを伝えた。
ノエルは一瞬、考える素振りを見せて、皆で屋敷内を探すことを提案した。
その提案にその場の皆は不安げに顔を見合わせたが、サザンカだけが乗り気な様子だ。
「あの! それならお力になれると思います! このオミ達が!」
『……俺らかよ……』
「だって、すっごく鼻が利くし!!」
『まぁ……そうだが……』
「ふぅむ……亜人で稀にみる特別なスキル……そして鼻が利く……ぜひお願いしたい!」
『……領主様まで……マジか……』
「事は一刻を争う! 頼んだぞ、諸君!!」
ノエルの掛け声を筆頭に、招待客の皆までオミやオウカに少し押し寄り、懇願をした。
その様子にたじろぐオミとオウカだが、招待客たちを落ち着くようになだめたのち、承諾した。
『まぁ……どこまで出来るかわからないが、やってみるかぁ』
「そうと決まれば、さっそく屋敷内を案内するよ!」
ノエルが意気揚々と声を上げ、会場の扉を勢いよく開き、先頭をきって歩いた。
その後ろをぞろぞろと使用人やサザンカ、招待客の皆はついて行き、オミとオウカは顔を見合わせて一つ息を吐いて、皆の後ろについて行った。
ノエルの案内で屋敷の中を歩くこと数分。
何か手がかりはないかと、ノエルが屋敷の使用人たちにいなくなった人物たちの事を聞きながら歩いていた最中。
屋敷の奥の方で見かけたと証言が得られた。
「屋敷の奥……図書室かな……。
よし、行ってみよう!」
『『……』』
「オミ? オウカ? どうしたの?」
『……なぁ……領主様……本当は何か知っているんじゃないのか?』
「どういう事かな?」
『臭い……だんだん感じなくなっていますの……。
この屋敷の奥に行くにつれて……』
オミやオウカの言葉に、ノエルや皆は足を止めて振り返った。二人が何を言っているのだろうと疑問の表情を浮かべる者や、信じられないと困惑する者が現れたが、問われたノエルはいたって冷静な佇まいだ。
「二人とも、臭いって……どういう事?」
『以前、このお屋敷の中の臭いが少ないってお伝えした事……覚えていますか?』
「……うん」
『その臭いが屋敷の奥に進むにつれて感じませんの』
サザンカの疑問に、オウカはさらに、感じる違和感を伝えた。
普通、目撃情報などの手がかりがある場合、その場に臭いが残るのではないかと。
その臭いをたどれば見つかるはずなのに、その臭いをどこにも感じないのだと説明をした。
「今は臭いを感じないかもしれないけど、その部屋に行けば何かわかると思う!
さ、行こう!」
オウカの説明を聞いたノエルはまったく動じず、さらに声高らかに屋敷の奥に向かって歩みを進めた。
その様子を見たオミやオウカは、顔を引き締めて警戒し始めた。
それと同時にオミがスキル『以心伝心』を使ってサザンカを呼び止めた。
呼び止められたサザンカは、人混みをかき分け、オミたちの隣まで駆け寄ってきた。
「どうしたの?」
『……あげは様……こんな事言いたくはなかったのですが……やはり、ノエル様やこのお屋敷、怪しいですわ』
『この先、何があっても俺たちがお前を守る……そばを離れるんじゃねぇぞ』
「……わかった」
オミやオウカは、サザンカを真ん中にして歩き、屋敷の奥の部屋を目指して、皆と同じように再び歩みを進めた。
皆が奥に向かってしばらく歩いていると、ノエルの足が大きな扉の前で止まった。
「ここが屋敷の奥で図書室だよ! さ、中に入ろう!」
ノエルが勢いよく扉を開けて中に入るように促すと、使用人や招待客の皆はおずおずと辺りを見渡しながら中に入った。
サザンカやオミ、オウカに至っては、警戒するように身構えながら中に入った。
皆が部屋の中に入ったのち、ノエルも部屋の中へと足を踏み入れた。
そこへ以前、サザンカ達に水晶に触れるように促した門番と、杖を持ったふくよかな男がやってきて、ノエルの両側に立ち並んだ。
「主役はそろった! さぁ、新たな宴を始めようではないか!」
ノエルが楽し気にそう言うと、杖を持った男が杖を掲げた。
すると、その杖の先が光り、それに反応するかのように部屋中の壁の至る所が光った。
その直後、サザンカたちの足元がゆっくりと動き、下に向かって降下していったのだった。




