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洞窟の中と下界の創造

サザンカに案内されながら洞窟内を歩く姉二人とアマノミコト。


女神であるサザンカが住居を洞窟という外見にした事に驚いた三人だったが、外見からは想像がつかない洞窟内の景色にさらに驚きを見せた。


「…洞窟内…薄暗さはあるけど、所々優しい光があるわ…。


それに、その光…動いているわね…。


サザンカ…これは…?」


「小さい生き物ね…何かしら?」


「蛍ですよ。


日の本の生き物を参考にしました!


松明(たいまつ)だと熱いし、明るすぎるので…。


これぐらいの明るさを求めていたら、蛍にたどり着きました。」


姉二人がサザンカの説明に感心していると、どうやら奥に着いたらしくサザンカの足が止まった。


三人の前を歩いていたサザンカは、三人が中の様子を見えるように少し横に移動した。


三人はまたも視界に入ってきた風景に驚いた表情を浮かべた。


「これは…また…お見事ね…サザンカちゃん…。」


「ほんと…これは…考えもつかなかったわ…。」


「うむ…見事だ…キレイだな…。」


三人の視界に入ってきた風景、それは、丸みを帯びた広い空間が広がりまるで水の中にいるかのような風景だった。


足元は水面(みなも)が揺れ、壁には水中にある色とりどりの植物が揺らめき、魚をはじめとする水中の様々な生き物が洞窟内を泳ぎ回っている。

洞窟内の壁の質感も岩壁要素はなく、冷たくてぷるぷると柔らかい水そのものだった。


「水の中にいるみたい…すごいわね…。

この壁…冷たくて柔らかいけど、手は濡れないし、貫通も出来ないし、ただ柔らかいだけなのね…不思議…。」


「えへへ~。

創造を最大に活用して造りました!!


まだ創造の途中ですが、他にも部屋が四つあって、季節が違う部屋を造ろうとしてます!!


ちなみに私の住居は、洞殿(うつろでん)です!!」


「最大に活用…って…発想がすごいわ…。

名前も…なんだか…すごい?わね…。」


「えっへへ~。


あ!!


もぅ全員の住居を見たので、そろそろ下界の創造をしませんか?!

私、そっちの創造も楽しみなんですよ!!

一番気合が入ります!!」


サザンカの次から次へと出る、自分達とは違う発想に驚きのあまり、言葉が出ずにいる三人。


そんな三人とは裏腹に、照れた表情を見せながらも感情が高まり、陽気な様子を見せるサザンカ。

感情の温度差がある中、サザンカの提案に三人はぎこちなく頷き、下界の創造をするため、洞殿(うつろでん)を後にした。


洞殿(うつろでん)を後にした四人は、創造途中の下界が見渡せる場所に来ていた。


「さて…ここならよく見えるだろう。


創造もしやすくてよいと思うが…サザンカが一部を創造するのだったな。」


「任せたわよ、サザンカちゃん!」


「お願いね。」


「はい!

お任せください!!」


意気込むサザンカは皆から少し離れた位置に移動した。


皆が見守る中サザンカは下界に両手を伸ばし、創造するものを頭に思い浮かべながら、自身のエネルギーを使い始める。


すると、サザンカの手の先が少し発光したと思ったら、ぷすっと空気の抜けた音が鳴り、光が収まった。


「…へ?」


「…なにかしら…今の音…。」


「…さぁ…私にもわからないですわ。」


「……マツリカでもわからぬのなら、誰にもわからないのでは…。」


「さすがにアマノんはわかっとくべきよ…創造神として。」


「う、ううむ…。」


サザンカに起きた不思議な現象に、当の本人や見守っていた三人が首をかしげた。


ベロニカの言葉で考えをひねり出したアマノミコトは、サザンカに近づき言葉を掛けた。


「…サザンカ…自身の洞殿(うつろでん)の創造と、月をマツリカの所に移動した事でエネルギーが尽きたのでは…。」


「……そういえば…そうでした。

創造の時、配分間違えて…自分のエネルギーなくなったの忘れてました…。」


「アマノ様が説明してくださったのに、何やっているのよ…サザンカ…。

そもそも、どうやったら配分間違えるのよ…。」


「まったくお主は…。

落ち着きが無かったり、洞窟を造ったり…エネルギー配分がヘタだったり…女神らしくないな…。


力の使い過ぎ…体調はなんともないのか?」


「「…同感。」」


「体調はなんともないです!

むしろ先ほどよりも元気いっぱいです!!

それに、これでも真面目に考えて力を使って創造したのですよ!!」



「「「………。」」」


アマノミコトの考えに思い当りがあったサザンカ。


サザンカの様子にアマノミコトを含め、三人は呆れた表情を浮かべた。


だが当の本人は、三人の様子に気にも留めず、得意げな表情を浮かべている。

そのサザンカの様子にさらに頭を抱える三人。


「と、とりあえず、私のエネルギーはなくても、周りのエネルギーを使って創造しますので!


……いきます!!」


サザンカが再度下界に向かって両手を伸ばし、先程とは違い周りにあるエネルギーを使いながら創造したいものを頭に浮かべた。


すると、サザンカが思う場所が発光し、その場所にキレイな桃色の花びらがたくさんついた大きな木が一本そびえ立った。


その大きな木から左右に広がるように同様の木が多く創造され始めた。

だが、それらは大きな木に比べると高さは足りないが、桃色の花びらは負けないほど多く、キレイに咲き誇っている。


「ふぅ~…こんなものでしょうか!

思ったよりもいっぱい創造出来てよかったです!!」


「これは…日の本で今咲いている植物ね…。」


「はい!

桜の木です!!」


「キレイね~。

やるじゃない、サザンカちゃん。」


サザンカの創造に心を躍らせ、楽しそうにはしゃぐ女神三人。


だが、アマノミコト一人だけが浮かない表情をしている。


「のぉ…サザンカよ。


キレイな木や花を創造するのはよいが…。


この星のエネルギーを全て使う事はなかったのではないか?


これでは、我々が創造出来ぬではないか…。」


「「「………。」」」


アマノミコトの言葉に、先ほどまで楽しそうにしていた女神三人はその場で凍り付き、サザンカはやってしまったとばかりに、気まずそうな表情を浮かべたのだった。

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