プロポーズ?!
ウィスタードの街の領主様の家を訪れたサザンカたち。
そこで出会った領主、ノエルは、銀髪に銀の瞳を持つ魔族の青年であり、弟のルークもまた魔族であり、こちらは金髪に深い青色の瞳を持つ青年だ。
一行は、ノエルとその弟であるルークの二人によって屋敷の応接室に案内されたのだった。
「さ、適当な場所に座って!」
ノエルの言葉に従い、各々ソファに腰かけた。
サザンカを間に挟むようにオウカ、オミは三人掛けの同じソファに。
ヒスイとレイは二人掛けのソファに座った。
そしてサザンカ達の向かいのソファに、ノエルとルークが座ったのだった。
「とても広いお屋敷ですね! お手伝いさんもいっぱいでしたし!」
「これでも伯爵家だからね! 改めまして、僕はノエル! こっちは弟のルーク!
この間は街の人達に癒しの力を使ってくれてありがとう!」
「初めまして……僕からも、街のためにありがとうございました」
「それともう一つ! お礼を言わなきゃいけない立場なのに、こうして足を運ばせてしまった事……申し訳ない! この通り!」
ノエルは申し訳なさそうに勢いよく頭を下げた。
その行動に慌てて両手を勢いよく左右に振るサザンカ。
「いえ! お気になさらず! それに、出来る事をしただけですので!」
「ありがとう……。
そうだ! あげはちゃんの事は聞いたけど、亜人の皆さんの事はまだだったよね!
よかったら名前とか、スキルを教えてくれないかな!」
ノエルの言葉にオミ達は軽く自己紹介をして、スキル『人狼』についての説明をレイがしたのだった。
その説明にノエルは、宝物を見つけた子どものように目を輝かせて、スキルについていくつも質問を投げかけた。
「……あの……」
「なんだい? 弟よ!」
「スキルの能力に目を輝かせるのはわかるけど……その声の大きさとか張り具合……どうにかならないのかな……隣に座る僕の耳を考えて欲しい……。
それに、お客様の前でそんな大声……。
すみません、うちの兄が……」
『いえ、お気になさらず。
似たようなお方がこちらにもいますし』
「そうそう! オミなんて、こう……目を吊り上げてウガーって感じで!」
『……いや、どう聞いてもあげはの事だろ……』
「そんな?!」
「ルークひどいぞ! 兄をそんなぞんざいな扱い!」
ルークやレイの言葉に反応するノエルとサザンカ。
その反応する二人をよそに、ルークとレイは話を進めていった。
自分たちの意見が通らない事に、ノエルとサザンカはしょんぼりと肩を落としたのだった。
『それにしても、領主様にしてはお若く見えますが……』
「僕たちはこれでも、君たちよりは長く生きてるほうだよ。
眷族のおかげで魔族は歳を重ねても老けないんだ」
『そうでしたか……それは失礼いたしました』
「大丈夫、気にしてないよ。
それに、両親は少し前に不慮の事故で……今は僕たちでこの街を守ってるんだ。
主に兄さんが……だけど」
「ん? 何か僕の事を話したかい?」
「……落ち込んでたんじゃなかったの……」
「ちょっと落ち込んだらもう十分だよ!」
『……あげは様はまだ落ち込み中ですわね……』
「……私……そんなにうるさいかな……」
『すっごく』
『オミ様!! 大丈夫ですよ、あげは様。
あげは様は元気いっぱいで賑やかなくらいがちょうどいいですわ』
「……オウカ……ありがとう~……」
オウカに励まされ、少し甘えるようにオウカに抱き着くサザンカ。
その様子をノエルはジッと見つめていた。
「……あげはちゃんは……末っ子気質なのかな。
見た目もそうだけど、すごく可愛いね」
「……はい?」
『あげは様に色目を使うとは』
『……オウカ……落ち着けよ。
まだ、そうと決まった訳じゃないだろ』
「いいや……。
僕は決めた! あげはちゃんをお嫁さんにする!
あげはちゃんが欲しい! 僕と結婚してください!」
「え……」
『『『『……』』』』
ノエルは勢いよく立ち上がり、サザンカを真っすぐに見つめた。
あまりの唐突な出来事にオミ達は口を開け、唖然とした。
その中で一人、ノエルの弟であるルークはため息を吐き、首を横に振った。
「兄さん……またなの……。
唐突なプロポーズ……これで何度目?」
「何度目だろうな~……。
でも……本当に欲しくなっちゃったんだから、しょうがないだろ」
ノエルは、ルークに視線を向けたが、再度サザンカに向け、にこやかな笑顔を見せた。
唖然としていたオミ達も、我に返り、各々サザンカについて語りだした。
『はっ……いやいやいや、相手はちゃんと選んだ方がいいぞ?!
領主様がそんな勢いでプロポーズとかしちゃダメだろ!』
『オミ様の言う通りですわ! もっと慎重に発言をしてくださいまし!
あげは様はたしかに優しくてお可愛らしくてお料理も上手ですが、エネルギーコントールは致命的ですし、猪突猛進ですし、破天荒ですし!』
『……何をやらかすかわからない……』
『少し抜けてるところもありますね』
『正直に言うと、おバカさんだな』
「ちょ?! 私の事そんな風に思ってたの?!
オウカに至っては、褒めてるのか貶してるのかどっちなの?!」
オミ達の発言が思いもよらなかったサザンカは、あたふたと交互に皆の顔に視線を向けた。
それでも諦めきれていないのか、ノエルはさらに言葉を続けた。
「皆さん……あげはちゃんの事が大好きなんだね……。
それなら、皆さんもあげはちゃんのお供としてついてきて!
皆まとめて僕が面倒を見るよ!」
「……兄さん……いくらなんでも強引すぎ……」
「やっと見つけた運命の人なんだ! ここで逃すわけにはいかないよ!」
「あ……あの~……私の意思は……。
それに、今日会ったばかりですし……」
「ん? う~ん……それもそうか……。
なら……今日、夜にこのお屋敷でパーティーがあるんだ!
よかったら君たちも参加してほしいな!
そしたら僕の事をわかってもらえる時間も出来るしね!」
「そういう事でしたら……」
『おい! 参加すんのか?! そのパーティーってやつ!』
「うん……せっかくのお誘いだし……」
『このお人好し!』
ノエルの誘いを受けたサザンカに、オミ達は飽きれたように項垂れたり、大きくため息を吐いたのだった。




