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街の領主様

 オウカ(桜華)のスキル、『花道しるべ』に導かれてウィスタードの街に来た一行。

ここにはちょっと前に来た事があり、あの時は亜人の青年に街の人達の傷を治して欲しいと頼まれて訪れた。


 この街はルーベルの街のように門番などいなく、身分を証明せずとも誰でも入ることができるのだ。

 今回も以前同様、何事もなく街の中に入ることが出来たのだった。


「たーのもーーー!!!」


『うわ、バカ! そんな大声出してどうする!! 注目を集めるだろ!!』


『……もう集めてる……』


 街に入るなり、威勢よく大声を出したサザンカ(あげは)

そのサザンカ(あげは)の口を、狼姿のオミ()が慌ててふさいだ。


 全長160センチほどある狼姿のオミ()が、サザンカ(あげは)の口をふさぐ光景は周囲には異様に見えたため、サザンカ(あげは)の声と相まって注目を浴びる事になった。


『あげは様ったら……威勢がいいのは良い事ですが、真正面からお声をかけるなんて……怪しまれたら調査がしづらいですわ……。

猪突猛進は時にめっ! ですよ!』


「……オ……オウカ(桜華)に……怒られた……」


『まるで親子ですね……』


 オウカ(桜華)の言葉が効いたのか、うっすらと涙を浮かべ肩を落とすサザンカ(あげは)

そんなやり取りをしているサザンカ(桜華)達のもとに、何の騒ぎかと魔族の二人の警備隊の男が駆け寄ってきた。


「いったい何の騒ぎだ?!」


「この狼たちは……魔物……ではないな……。

君の従魔か?

ちゃんと契約はしている?」


「えっと……契約はしてないですが……あ、でも、私の仲間です!

皆頭いいですし、人を襲うような事もしません!

保証しますし、誓えます!!」


「う~ん……そうだといいが……ま、手綱はちゃんと握っててくれな」


「はい! わかりました! あ、そうだ! この紹介状を預かっているのですが……」


 サザンカ(あげは)は思い出したかのように、ルーベルの街でギルドマスターのライナーから渡された紹介状を警備隊に渡した。


「これは~……なっ……領主様宛!? と、とりあえず、案内するから、ついてきなさい」


 警備隊の男は、サザンカ(あげは)から紹介状を受け取って宛名を見るなり、驚いた表情を浮かべ、動揺しながら領主の家へと案内をした。


 警備隊の男たちが案内した場所は、街の北側で少し市街地から離れた奥の場所だった。


「おっきくて白い壁のキレイなお屋敷~~!!」


「ここがこの街の領主様……ウィスタード伯爵のお屋敷だ」


「俺が門番に話をつけてこよう」


「あぁ、頼んだ」


 警備隊の一人が門番に話をつけるため、サザンカ(あげは)たちのもとから離れて行った。

しばらくして警備隊と門番の一人がサザンカ(あげは)たちのもとに戻ってきた。


「この者達だな。

領主様に会いたいというのは」


「こんにちは。

冒険者をしているあげはといいます。

この狼さんたちは私の仲間です」


「わかった。

従魔も一緒に入れるか確認しよう。

それじゃ、屋敷の前まで案内する」


 門番がサザンカ(あげは)オミ()達に目線を配ると、軽く頷き、サザンカ(あげは)たちを屋敷の前に案内をした。


「少しここで待っていてくれ。

領主様に確認を取る。

それと……屋敷に入る前に、この水晶に触れて欲しい」


 そう言って門番は、にこやかな笑顔で懐から取り出した小さい水晶をサザンカ(あげは)に差し出した。


 門番によると、水晶に触れる事によって街に対して害がある者かどうか、わかるのだそうだ。

パーソン族との戦いが終わったばかりのため、これ以上街に被害を(こうむ)らないための対策との事。


「お嬢さんだけじゃなくて、従魔の皆さんもお願いします」


 門番はにこやかな笑顔をオミ()達にも向け、水晶を差し出した。


 サザンカ(あげは)オミ()は、門番の言う通り、順番に水晶に軽く触れた。

すると、水晶は全員、同じ青い色に光った。


「はい、皆さん問題のない色ですね。

では、少々お待ちください」


 門番はそう言い残して屋敷の中に入って行った。


『『『『……』』』』


「皆……黙り込んでどうしたの?」


『あの門番の笑顔……なんか、嫌ですね』


「え……レイ()さん、どういう事?」


『少々不気味でしたわ……』


「……オウカ(桜華)まで……。

普通にいい人に見えたけど……」


『……どうだかな……』


「……オミ()も……。

もしかして……ヒスイ(翡翠)も?」


『……』


 皆の話を聞いて、ヒスイ(翡翠)も何かしらを感じているのかと視線を送ったサザンカ(あげは)

彼は無言だったが、どうやら、皆と同じく何かしら感じ取ったらしい。


 そうしてサザンカ(あげは)達が門番を待ちながら話していると、屋敷の扉が開かれ、中から三人の人物が出てきた。


「旦那様、この者達です」


「うん! ごくろうだったね!」


 中から出てきた人物。

それはこの屋敷の主人たちと門番だった。


 門番は主人に挨拶をすると、頭を軽く下げたのち、サザンカ(あげは)達に再びにこやかな笑顔を向け、その場を去っていった。


「さて皆さん、お待たせ! ようこそ、ウィスタードの街へ!!

始めまして! 僕はここの領主をしてる、ノエル! ノエル・ウィスタード!

よろしくね!」


「はじめまして! 私はあげはと言います! こちらこそよろしくお願いします!」


 領主であるノエルは、サザンカ(あげは)達に明るく威勢のいい挨拶をした。

その挨拶に負けじと挨拶を返すサザンカ(あげは)


 そんなサザンカ(あげは)を見るなり、ノエルは疑問の表情を浮かべた。


「あれ……そういえば……紹介状には、魔導士が一人と、亜人が四人ってあったけど……あげはちゃんが魔導士として、亜人の皆さんは……」


「あ~……えっと~……」


『しょうがねぇな……姿、解くか~』


 サザンカ(あげは)が気まずそうな表情を浮かべると、オミ()がため息を吐きながら先だって人型に変化した。

オミ()に続いて、レイ()達も人型になったのだった。


『俺たちが亜人だ』


『まったく……あげは様ったら……。

相手に合わせた挨拶をしなくてもいいのですよ』


『……レイ()がすごく言いたそうにソワソワしてた……』


「え……挨拶……変だった?」


『あげは様は元気が一番ですが、領主様に合わせるとなると、だいぶ賑やかでいらっしゃいますからね』


「……それは、うちの兄さんが悪いよ……。

控えめに言ってうるさいし」


「ルーク! うるさいとはなんだ! それは控えめじゃない! それに、これでもまだ大人しいほうだぞ!」


「……はいはい……。

それより、こんな所で立ち話もなんだから、中に入ってもらおうよ」


「そうだね! 皆さん、中へどうぞ!!」


 ルークと呼ばれた青年の言葉に、ノエルは両手を大きく広げ、サザンカ(あげは)達を屋敷の中に入るように促した。

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