また勝手に……
ギルドを出てすぐの事。
サザンカはとある亜人とぶつかった。
その亜人とは、以前、サザンカをお風呂に誘ったリアナとロゼッタの母であるアリアだ。
彼女が涙ながらに放った言葉を聞いたサザンカは、その場で立ち尽くしてしまった。
「リアナちゃんと……ロゼッタちゃんが……それは……どこでですか……どこでいなくなったんですか?!」
『あげは様、落ち着いてくださいまし』
「でも、オウカ! 二人が……二人が!」
『わかっております。
でも、慌てても致し方ありませんわ。
ちゃんと話を聞いて整理しましょう』
「……うん……そうだよね……。
取り乱してごめんなさい……」
子ども達の事で泣いているアリアを、今度はレイが落ち着くようになだめ、彼女から詳しく話を聞こうと、ギルドの近くにあるカフェへと足を運んだ。
二人掛けのテーブルにアリアと向かい合って座ったサザンカ。
狼の皆は、サザンカの後ろに並んで立った。
その際、アリアの事やお風呂の事を詳しく知らないオミやヒスイには、オウカが詳しく説明をした。
オミやヒスイは、オウカの説明を聞いて線と線があったのか、納得したような表情を浮かべ、アリアの話に耳をすませた。
「……アリアさん……わかる範囲で……詳しく聞かせてください……」
『えぇ……――』
サザンカの言葉にポツリポツリと話しだしたアリア。
リアナとロゼッタ。
二人は午前中、積極的にお手伝いを申し出たのだそうだ。
そのお手伝いとは、隣街に住む祖母の家に採れたての野菜を届ける用事だったのだが、出掛けたきり一向に帰ってこないとの事。
『あの子達の足で3時間ほどあればもう帰ってきてもおかしくないのに、倍以上の時間がかかってるの……。
寄り道してるんじゃないかって思ったんだけど、あまりにも遅すぎるのよ……』
「おばあさんの家には……」
『行ったわ……。
祖母も、もうずいぶん前に家を出たと言っていたの……。
野菜を置いてすぐに、『お母さんが心配するから』って早くに家を出たそうなの……』
『……それだと……とっくに家に着いてる事になりますね……』
『……やっぱり寄り道?』
『それにしては遅すぎるだろ……。
やっぱりあれか?』
『あれって……まさか……。
今、噂になってる行方不明の……』
『あ……やべ……』
『……いえ……私も……半信半疑なんです……。
だから……何事もなければ、それはそれで良いとして、ギルドに依頼しようと……』
「……アリアさん……私たち、その依頼、他の人の分も受けてるんです……。
リアナちゃんとロゼッタちゃん……私たちに任せて頂けませんか」
『……あげはちゃん……皆さん……お願い……します……どうか……。
……どうか』
アリアは再び涙を浮かべてうつむき、拳を強く握りしめ、体を震わせながらサザンカに懇願した。
サザンカはというと、アリアの言葉を聞き、表情を引き締めてまっすぐに決意した。
「絶対……見つける……そして助ける」
アリアから話を聞いた一行は、さっそく行動に移すため、カフェの前で彼女と別れ、再び行方不明の現場に場所を移した。
「さて……どうしようかな……。
臭いの原因はわかったけど……皆はこの臭い……追う事はできそう?」
『『『『……』』』』
サザンカが皆に問うと、狼である皆は人型を解き、本来の姿に戻った。
そして現場に残るベガチアの臭いを追えるか、嗅覚を研ぎ澄まして確認した。
『……ダメですね』
『強力な消臭効果……なるほどな。
この付近に微かな残り香があるとはいえ、追えるほどではないな』
「……そんな……」
『……私のスキル……解析・鑑定にも何も引っかからないですね……。
それほど微か……という事でしょうか……』
臭いを追う事が困難だと言う現実に、頭を抱える一行。
その中で、いつもより表情を引き締めたサザンカは、目を閉じてうつむき、少し考えたのち、パッと顔を上げた。
その際、オウカと目が合ったサザンカ。
『……あげは様? どうかされましたか?』
「……こうなったら……。
オウカに『花道しるべ』のスキルを付与!
効果はスキルを発動させるとき、オウカの吐いた息が花びらとなって、追跡したい対象の場所まで案内してくれるものとします!
さらに、その息の花びらは術者にしか見えないものとします!」
サザンカはオウカに視線を向けるや否や、手を伸ばし、オウカにスキル付与を施した。
『あ……あげは様……またスキルを勝手に?』
「うん! これで、行方不明になった人たちを探し出せるね! 初めからこうしてればよかったかも!」
『……それなら、自分に付与すりゃぁいいだろ……。
なんで周りのやつにポンポン付与するんだよ……』
「嗅覚のない私より、オウカや皆の嗅覚と合わさる方が、信憑性が上がるから!
あと、オウカと目が合ったから!」
『ぐっ……あげはのくせにまともな事を言うじゃねぇか……。
論破されるとは……』
『……最後の言葉は全然論破じゃないけど……。
……「目が合ったら」は理不尽』
『……ヒスイ……何笑ってるのよ……』
『……別に……ふふっ……』
『もぅ……』
『私の時もそうでしたが……あげは様は本当に……。
再度聞きます……取り消す事は?』
「出来るよ!!」
『そうですか……やはり出来な……え……出来る? のですか?』
サザンカの「出来る」という発言に、予想をしていなかった皆は、目を大きく見開いた。
そんな皆に、サザンカは満面の笑みでピースサインを見せた。
「出来るようになったよ!」
『いつの間にそんな事が出来るようになったんだ?』
「地下牢にいるとき!!」
『あの短時間で……恐れ入ると言いますか……やはりあげは様は規格外ですね……』
サザンカの話を聞けば聞くほど、幾度もまばたきをするレイ達。
その中で、サザンカは申し訳なさそうに眉を下げた。
「えっと……オウカ……今のスキルいらない?」
『……いいえ……。
今回の依頼を達成出来て、なおかつリアナちゃんとロゼッタちゃんを見つけられるのなら、喜んで受け取ります』
「うん! いらなくなったらいつでも言ってね!」
『わかりました。
では、さっそく……スキル『花道しるべ』! ……ふぅ~……。
場所は……ウィスタードの街を指してますわ』
サザンカの言葉に力強く頷いたオウカは、さっそく行方不明になった人たちを思いながらスキルを発動させ、軽く、だが少し長めに息を吐いた。
その息はオウカにしか見えない花びらとなり、ウィスタードの街へと舞って行ったのだった。




