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謎が謎を呼ぶ

 オミ()に伝道者の事を聞かれ、しどろもどろになりながら説明をしたサザンカ(あげは)


 サザンカ(あげは)の話を聞いたオミ()達は、軽くうつむき、少し考える素振りを見せた。


『伝道者……か……』


「うん……。

私……そういうのいらないんだけどな……」


『わたくしは……サザンカ様の事をよく知らないのに、勝手に名前を使われたくないですわ』


『……僕たちも知り合って間もないけど……サザンカ様に関しては、他より知ってるつもり……。

姉さんの言うように、名前とか力とか……勝手に使われたくない……』


「二人とも……ありがとう……」


『……その伝道者の力……不思議ですね……』


「不思議って……なにが?」


『スキル付与はサザンカ様しか出来ないはずなのに、どうして伝道者が出来るのでしょうか……』


「あ……そっか……。

私、人々には付与できるようなスキルは与えてない……。

自分の身を守るために……生活に役立つように……暮らしやすいようにって思って付与してたから……」


『それなのに、付与が出来てるのはたしかに不思議で謎だな……』


『今回の行方不明の件とその伝道者が本当に関係してるのか……スキル付与の関係性も直接確認しないとですわね』


『……謎が多くなったね……』


「でも……皆とこうして力を合わせるのはすごく楽しいし、頼もしいよ!」


 サザンカ(あげは)の言葉に照れているのか、頬を少し赤らめながらも微笑むオミ()達。

皆の表情を見たサザンカ(あげは)も、頬を少し赤らめて、はにかみながらも満面の笑みを見せた。


 一行は依頼や伝道者などの、多くなっていく謎について話し合いながらも食事を済ませ、その場を後にしてギルドに戻ったのだった。


***


 ギルドに着いた一行は、いつものように受付で手続きを済ませ、ギルドマスターの部屋へとライナーに案内された。


「ここに来たって事は、何かわかったのか?」


「わかったような……わからないような?

ん~……レイ()さん、パス!!」


『……パスと言われましても……。

致し方ないですね……私が説明します』


 レイ()サザンカ(あげは)の投げやりな様子に呆れつつも、ここに来るまでの調査で知り得た事をライナーに説明をした。


「……ビナチアに似た花……か……。

その花の臭いが現場に……」


『またたび効果のある花らしいんだが……何かわかるか?』


「……思い当たる花はありはするが……ちょっと待ってくれ……」


 そう言って立ち上がったライナーは、部屋の中の本棚に近づき、花に関する資料を探し出した。


「しっかし、嬢ちゃん達……よく臭いの痕跡を掴めたな。

他の亜人の冒険者やテイムした魔獣でも掴めなかったんだが……」


「皆とても鼻が利くので!」


「スキルか、なんかか……なるほどな……」


 ライナーがサザンカ(あげは)達に背を向けて探し物をしてる間、サザンカ(あげは)は小声でオウカ(桜華)に声を掛けた。


「ねぇ……魔獣って? 魔物とは違うの?」


『魔獣はわたくし達のような存在の事を指しています。

エネルギーを持ち、魔法やスキルを使い、知識を持って自分の感情を制御できるものを言います。

魔物はあげは様も見ての通り、人を襲い、感情的で攻撃的……知能も少しばかり低いですわ』


「そっか……ありがとう、オウカ(桜華)!」


『ふふっ、お安い御用ですわ!』


 サザンカ(あげは)オウカ(桜華)が小声で話していると、ライナーの探し物が終わったのか、歓喜の声を上げながら、ソファに戻ってきた。


「たしか、この辺のページに……お、あったぞ! この花だ!」


『……ベガチア?』


「たしかに、私が摘んだ花だ……。

それに、ビナチアに似てる……。


えっと……花の状態はまたたび効果があり、魔物に有効……煮詰めると強力な消臭効果のある液体が出来上がる……って書いてる……」


『なるほどな……煮詰めたとはいえ、その花の残り香が現場に残ってたんだな』


『そして行方不明になった方や、いるかもしれない犯人の臭いを消した……という事ですね』


『……また現場に行けば何かわかるかも……』


「……嬢ちゃん達……この依頼、こなせるか? 託しても……いいか?」


「大丈夫ですよ、任せてください!!」


『……何か……心配ごとがあるのですか?』


「……いなくなっている場所……バラバラとは言え、この街の周辺で……隣街の周辺だ。

街に何か裏があるんじゃないかって噂が広がり始めていてな。

……この街を治めてる伯爵様からも少しばかり圧がかかってるんだ……」


「圧……ですか……。

私に法や権限は関係ないですが……なるべく早く解決できるように頑張ります!」


「……嬢ちゃん……本当は何者なんだ?

ただの冒険者にしては強すぎるし、王国の権力者にしては優しくてお人好しすぎる……」


「私は……力の使い方がヘタクソなただの冒険者ですよ」


「……そうか」


 サザンカ(あげは)はライナーの問いに少し考え、困ったように微笑みながら答えた。

その様子に深くは聞くまいと、軽く息を吐いて少しだけ笑みをこぼしたライナー。


 サザンカ(あげは)達は情報を聞くことが出来、さらなる調査のため、ライナーと挨拶を交わし、ギルドを後にした。


 その直後だ。

ギルドから出た際、先頭を歩いていたサザンカ(あげは)は、勢いよく走ってきたとある亜人とぶつかった。


 ぶつかった際にお互い体制を崩し、地面にしりもちをついたのだが、ぶつかった亜人の顔を見たサザンカ(あげは)は、ひどく驚いた表情を浮かべたのだった。


「アリアさん?! すみません、お怪我はありませんか?!」


『あげはちゃん……大丈夫よ……』


 サザンカ(あげは)は体を急いで起こし、いまだに体制を崩しているアリアに手を差し伸ばして彼女を立たせた。


「そんなに慌ててどうかしたんですか?」


『あげはちゃん…………っ……ぅっ……』


「えっ……アリアさん?! え~っと、ハンカチ!」


 サザンカ(あげは)の顔を見るなり、アリアは突然、その場で声を押し殺すように泣き出した。

そのアリアに慌てた様子で、持っていたハンカチを差し出したサザンカ(あげは)


『……ロゼッタと……リアナが……いなくなってしまったの……』


「え……」


 ロゼッタとリアナ。

二人は以前、サザンカ(あげは)が落ち込んだ際、お風呂に誘ってくれた猫耳の亜人の子ども達だ。

その二人の母であるアリアが、消え入りそうな声でサザンカ(あげは)に言った言葉。


 その言葉を聞いたサザンカ(あげは)もまた、唖然とその場に立ち尽くしたのだった。

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