よっぽどやりたかった事
サザンカ達がギルドマスターのライナーに案内されて中庭に着くと、大勢の人たちが地面に頭を伏せ、土下座をしていた。
その者達は街の外に現れた魔物を討伐した冒険者であり、サザンカの強さに疑問を持った者達だった。
その光景を見たサザンカは、目を見開き、ひどく驚いた顔をしたのだった。
「あの……ライナーさん……これは……。
さっき……謝罪……と言ってましたが……」
「あぁ……。
嬢ちゃんはいたって普通……いや、普通ではないが、ただ単に強い冒険者だ。
なのに、ここにいる連中は嬢ちゃんの強さを疑い、街の危険人物になりかねないと警備隊の庁舎に連れてった……。
強いからって、なんでもかんでも疑っていい訳じゃない……。
それを強く言ったのと、嬢ちゃんの人柄を伝えたらこうなった」
『あとはアレだな。
強い奴の中には、討伐を協力するフリをして、討伐した魔物を根こそぎ奪い取って自分たちの金にしたり、手柄にする奴がいるんだと』
ライナーやオミの言葉に地下牢での事を思い出したサザンカは、あごに手を添えて少しうつむき、考える素振りを見せた。
「それ……地下牢にいた人たちに聞いた話……」
『ですが、あげは様はそんな事しないというのを説明したのと、そもそも、あげは様は報酬とかあまり興味ないですわよね』
「うん……。
街の危険になるのはイヤだから魔物を討伐しただけで、お金に興味ないよ?
お財布にはまだ余裕があるし、なくなったらギルドの依頼で稼げばいいしね」
『そうおっしゃると思いまして、我々が討伐した魔物も、ここにいる冒険者の方々に譲りました。
なので、こうして謝罪を……と思っているのでしょう』
『……よく言えば反省……悪く言えば、現金な人たちだよね……。
あげは様を疑って勝手に連れて行って、あんな所に放り込むなんて……』
オウカ達の話に耳を傾けていたサザンカだったが、珍しく怒っている様子のヒスイに少したじろいだ。
「ヒ、ヒスイ? 怒ってる?」
『わかりづらい所はありますが、ヒスイはあげは様を慕っていますし、心配していたのですよ?
もちろん、わたくし達皆、ヒスイと同じ心持ちですわ』
「皆……ありがとう……」
「さて……どうする、嬢ちゃん……この冒険者達の処分。
嬢ちゃんの連れは今はこんな調子だが、俺が駆け付けた時には、殺気にまみれてこいつらを食い殺す勢いだったんだぞ。
黒髪の兄ちゃんだけは一番冷静だったが……まぁ、冷たい視線だったのは間違いねぇわな」
「……処分……ですか……。
なら……あれ、やってもいいですか?!」
ライナーの言葉に少し考えたサザンカは、目を輝かせて少しだけ、いまだに土下座をしている冒険者の皆に近づいた。
そして腰に差していた扇子を、冒険者達の皆に突き出したのだった。
「皆の者、控えおろ~!!」
『……何してんだ……お前……もう皆控えてんだろ……』
「……そ、そっか……。
じゃ、じゃぁ! この紅の扇子が目に入らぬか~!!」
『……土下座してるから見る事は出来ないと思う……』
「……~~~~~、皆ノリが悪すぎるよ!! 少しくらい付いてきてよ!」
『……よっぽどやりたかったんだね……とある有名な将軍様……』
「出来るチャンスだったのに……」
サザンカはそのノリがよほどやりたかったのか、場に合わないとわかるとひどく肩を落とした。
そしてしょんぼりしたまま、ライナーに視線を向けた。
「ライナーさん、処分はとくにいらないです……。
疑われたのは少しだけショックでしたが……話はもぅ、まとまってるみたいですし、私やオミたちの身もなんともなかったので、私は何も求めません。
この方たちを解放してあげてください」
「……わかった。
嬢ちゃんがそういうなら、まとめた話の通り、進めよう」
「よろしくお願いします」
サザンカがライナーに頭を下げたのち、すかさずライナーは冒険者達に視線を向けた。
「と、いう訳だ。
嬢ちゃんからは特にお咎めなしだからな」
仁王立ちになりながら声を掛けるライナーに、冒険者達は頭を上げたが、サザンカの姿を視界に入れると、焦った様子で再び頭を下げたのだった。
「す、すみませんでした! 俺たち、前にも強い奴にしてやられた事があったので、つい……」
「「「すみませんでした!!」」」
「わ?! もぅ、いいんですよ、顔を上げてください!! それに土下座も、もぅいいんですよ!!」
冒険者たちの勢いのある謝罪に、慌てふためくサザンカ。
その状態で謝罪や土下座をやめるように促した。
「疑った俺たちを許してくれるのか……」
「優しい……」
「い、いえ……そんな事は……」
「それに……よく見たら可愛いな……」
「え……」
冒険者達のサザンカを見る目が次第に変わる中、中には下心の目で見る者も現れ、すかさずサザンカの前に立ちはだるオウカ。
『あげは様に色目を使うなど、このわたくしが許しませんわ……』
『……姉さんもある意味危ないと思うけど……』
『あら、わたくしは大丈夫よ。
拳でドカンと……ね』
オウカとヒスイが話している中、今まで様子を見ていたレイが一歩前に出た。
『話は以上でよろしいでしょうか。
あげは様からのお咎めはなしで、冒険者の方々への土下座もこれ以上は不要……我々はこの辺で失礼したいのですが……』
「おぉ、そうだな。
あとは任せてくれ」
『では……参りましょう……』
レイの言葉に頷いたサザンカは、ライナーに軽く会釈をして中庭を後にした。
そのサザンカの後をオミたち皆もついて行ったのだった。
サザンカ達がギルド内を歩いていると、依頼が掲げてある掲示板の前に差し掛かった。
その中に掲げてある圧倒的な数の依頼が、サザンカの視界に入ったのだった。
「……人探し? こんなにいっぱい……」
『……大人から子どもまで様々ですわね……』
『性別もバラバラだな』
サザンカ達がしばらくその掲示板の依頼に見入っていると、事が済んだのか、中庭の方角からライナーが近づいてきた。




