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願ってください!

 サザンカ(あげは)は、地下牢にいる捕らわれ人や隊員たちのためにクリームシチューや、サンドイッチを大量に作り終えた。

その後に隊員たちは、捕らわれ人たちを牢から出し、廊下の真ん中に設置している大鍋を囲んで座るように促した。


 鍋が大きくても、鍋の周りに座れなかった捕らわれ人も何人かいるため、その者達は鍋から近い場所に円になって座った。

鍋の周りには十数人、近場の円には五、六人の円が五つ出来た。


「よし、皆座ったな。

この嬢ちゃんの頼みでお前たちを牢から出して食事をすることになった。

ヘタな真似はするなよ?」


「いっぱい作っていますので、おかわりもご自由にどうぞ!!」


 サザンカ(あげは)は大鍋をかき混ぜながら皆に声を掛け、器に食事を盛り、その場の皆に手渡していった。


「うまそう……」


「(ぐ~~……きゅるるるるるる……)

……。」


「またクルトの腹の音かよ……」


「しかたないだろ……。

俺だって、好きでこんなスキルを持ってるわけじゃないんだ……」


 サザンカ(あげは)が料理を手渡している傍らで、クルトを含んだ捕らわれ人の面々が話をしており、その中に隊員も加わりながら皆で料理をまわして全員に行き渡るようにサザンカ(あげは)を手伝った。


「これで最後です!

みなさん、ご協力ありがとうございます!」


「おう!

皆、飯は行き渡ったな!

それじゃ、頂くとしよう! クルトのお腹が限界も近いみたいだしな」


「すみません……。

それじゃ、いただきま~す!!」


 クルトの掛け声で皆が美味しそうに料理を頬張り、その様子を満足そうに眺めているサザンカ(あげは)

その中でクルトに視線を向けて、再度自身の持つスキル『スキル判別』を発動させた。


「(……クルトさんのスキルの中に『常時空腹』って言うのがある……。

変なスキル……。

これも、ロガーさんが言ってた伝道者の人が関係してるのかな……。

とりあえず、さっきの要領でクルトさんの中からスキルを消失させよう……)」


 サザンカ(あげは)はクルトの中にあるスキルを消失させるために、右手にエネルギーを溜め、クルトに近づいて彼の肩に右手を軽くのせて話しかけた。


「あの、お料理……どうですか? お口に合いますか?」


「あぁ! すっごく美味しいよ! ありがとう!

俺、クルト! 

そういえば、君は?」


「私はあげはと言います! よろしくお願いします!

(よし、スキル消失完了!)」


 サザンカ(あげは)はクルトに話しかけながら、右手に溜めたエネルギーでクルトの中のスキルを消失させた。


「あげはちゃんか~、よろしく。

でも……君みたいな子がなんでこんな地下牢に?」


「あ、それ俺も気になってたんだ!

君みたいに可愛い(むすめ)さんがなんでこんなところにってね」


「か、可愛い?

そんな事言われたの初めてです……。

えっと……ここにいる理由は……――」


 サザンカ(あげは)がこの地下牢にいる事が皆気になっていたのか、クルトとサザンカ(あげは)が話していると、いつのまにか視線を集めており、サザンカ(あげは)は話せる範囲でこの地下牢にいる理由を話した。


「え、じゃぁ、魔物を倒したまでは良いけど、その強さに疑問を抱いた連中にこんなところに突き出されたのか?」


「あまりにも理不尽過ぎないか……。

強いやつなら他にいくらでもいる。

賢者様とか、勇者様とか……なにも、嬢ちゃんだけじゃない……」


オウト(桜都)には魔導士で強いやつがいるって噂だしな……」


「あぁ……だが、その冒険者達の言う事に一部正解があるとしたら、何かしらその強い奴らが弱い連中を使って魔物をおびき出し、協力するふりをして自分たちで倒して、倒した魔物をそのままごっそり奪い取る……そんな連中がいるのも事実だ……」


「……そんな……。

それじゃぁ、私もその人たちみたいな事をするんだと思われたのですか……」


 隊員や捕らわれ人達の話を聞いたサザンカ(あげは)は、しょんぼりと肩を落とした。


「ま、ここにいる連中は嬢ちゃんが悪い奴じゃないって証明できるぜ!

少なくともここにいる連中は、何かしら道を外れたやつらばかりだ!

そんな俺たちにこうして平等に接してくれるし、料理を振舞ってくれたからな!」


「そうだな!

外に出たらまた一から始めよう……もうここに戻ってこないように……」


「俺は外に出たら、二度とあの伝道者とかいう奴には騙されないぞ!

サザンカ様の使いだ何とか言って……とんだインチキ野郎だ!」


「そうだな~……。

実際、どんな女神様なんだろうな……サザンカ様は。

言い伝えでは明るくて破天荒……って聞いたが……」


「俺のばぁさんは女神かどうかも怪しいって言ってたぞ。

女神っぽくないってよく言ってたな」


「え……お前のばぁさん、サザンカ様を見た事あるのか?!

俺も会ってみてぇなぁ~。

可愛いかな~」


「お前はいつもそればっかりだな!

とりあえず、女の子は可愛ければなんでもいいんだろ」


「なんでもはよくない!

俺にだって選ぶ権利はある!」


「そう言ってると、こっぴどく痛い目見るぞ~。

なんてな、あっははははは!」


「(……皆さん……好き放題言ってるけど、サザンカは私なんだけどな……)」


 目の前で皆が女神、サザンカ(あげは)の話で盛り上がる中、当の本人は呆れた笑みを見せていた。

そんな中、クルトが少し寂しげにぽつりと言葉をこぼした。


「でも……本当にサザンカ様がいるなら……優しい人だったらいいな……。

そんでもって俺の願いを聞いてくれて、この変なスキルを消してくれないかな……。

この願いは……欲を出し過ぎかな……」


「そのスキルのせいでまともに地上で生活できないんだったな……」


 クルト達の話にサザンカ(あげは)は、自信満々な笑顔を浮かべ、彼らに向けた。


「大丈夫ですよ。

サザンカ様はきっと、クルトさんのスキルをなんとかしてくれます!

だから、願ってください!」


「あげはちゃん……ありがとう」


「伝道者さん……絶対、なんとかする……」


「ん? 何か言ったかい?」


「いえ! なんでもありません!

さ、残りのお料理もいただきましょう!」


 サザンカ(あげは)はクルトに伝えたのち、うつむき加減でポツリと言葉をこぼした。

その言葉を周りは拾えなかったが、サザンカ(あげは)はすぐに顔を上げ、再び笑顔で料理を食べるように促した。


 その時、地下牢の入り口の扉が開かれて、街の外に置いてきたオミ()達がロガーとともに地下牢に入ってきたのだった。

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