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不気味な音の正体

 牢屋の中の騒ぎに駆け付けた警備隊員と、サザンカ(あげは)が話をしていると、突如、地下牢中に不気味な音が響き渡った。

それは、サザンカ(あげは)が地下牢に入る前に聞いた音そのものだ。


「あの……この音……何ですか……。

さっきもすごい音が響きましたし……」


「あぁ、この音は……」


 隊員が説明しようとした矢先、再びあの音が響き渡った。

その音が鳴りやむと、サザンカ(あげは)の牢屋の前にいた隊員は、サザンカ(あげは)の牢屋の向かい側にある別の牢屋に足を向けた。


「こら、クルト! その腹の音どうにかできないのか!

さっき昼飯食べたばかりだろ!」


 隊員が牢屋の中の人物に叫びながらサザンカ(あげは)の前から離れていった。

どうやら、先ほどから地下牢中に響き渡る不気味な音の正体は、クルトという名の捕らわれ人のお腹の音のようだ。


「お腹の……音?

お昼ご飯食べたのに、お腹空いてるのかな……」


 サザンカ(あげは)が向かいの牢屋に向かって聞き耳を立てていると、隊員とクルトの話している内容が耳に入ってきた。


「隊員さん! そうは言うけど、食べても食べてもお腹が空くんです!

そういう変なスキルのせいなんです!

おかげで冒険者の仲間には迷惑が掛かるし、無銭飲食の疑いでこうして捕まるし!」


「あ~……そうだな……。

無銭飲食の容疑は晴れたが、街の飲食店の連中が抗議してお前を牢から出さないでくれと言ってきたんだったな……。

だがな……ここでの食事も限界があるし……お前の世話のおかげで他の奴の食料もだいぶ減った……これ以上は……」


「……すみません……。

わかっているんです……隊員の方々の食料も俺に回してくれたのは……。

でも……」


「……」


 クルトと隊員の話の内容を理解したサザンカ(あげは)はうつむき、少し考えた。

そして考えた結果、鉄格子に背を向け、アイテムボックスから再度鏡を取り出し、神界にある噴水広場を映し出した。


 その映し出された噴水広場には以前、アマノミコトが食料用に造った倉庫があり、その中には野菜をはじめとして様々な食材が入っている。


「……よかった……鏡で神界が見れる……。

アマノ様たちには……今はいいや……。

とりあえず、食料の確認を……」


 サザンカ(あげは)が倉庫の中の食料を確認すると、神界にいる人数では食べきれないくらいの量が備えられていた。


「あ……お野菜……フィリーたちがいっぱい作ってくれたんだ……。

前見た時よりも量や種類が増えている。

それに……ヴィリオの街からのお供え物のバターやチーズがいっぱい……きっと年月分の数だね……。

そしたら……」


 倉庫を確認したサザンカ(あげは)は、自身のアイテムボックスと倉庫に一時的な通り道を造った。


 そして、鏡をアイテムボックスに仕舞って向きを変え、隊員に大きく手を振りながら声を掛けた。


「隊員さ~ん! 私をここから出してくれませんか~。

皆でご飯にしましょう!!」


「何を言ってるんだ……嬢ちゃん……」


 隊員がサザンカ(あげは)の言葉に呆れていると、今度はクルトとは別に、隊員のお腹が鳴った。

その事に慌ててお腹を押さえる隊員。


「ほら! やっぱり隊員さんもお腹空いてるんじゃないですか!

皆でご飯にしましょう!」


「だが……食材が……」


「食材なら任せてください! 道具やお料理も任せてください!」


「……そういや……アイテムボックス持ちだったな……なら……。

あ……ヘタな事はするんじゃねぇぞ?」


 サザンカ(あげは)の言葉に少し考える素振りを見せた隊員は、一つ頷くと、サザンカ(あげは)の牢の鍵を開けるために再び近づいてきた。

そして、牢の鍵を開け、サザンカ(あげは)を牢から出したのだった。


「ん~~!! ひっさびさの外~~!!!」


「……嬢ちゃん……牢屋の中にいたの数十分ってところだろ……。

それに、快適そうに過ごしていたじゃないか……」


「あ……あはは……。

さ、そんな事よりレッツクッキング!!」


「……。

(なんなんだ、この()……。

一体、なんの容疑でここにいるんだ……)」


 サザンカ(あげは)の言葉に再び呆れる隊員。

二人のやり取りに他の隊員たちも集まり始め、全部で十五人の隊員がその場に集まった。


 その傍らでサザンカ(あげは)は、アイテムボックスに手を入れ、アイテムボックスの中で大なべや調理場、たくさんの器を造り、それらを引っ張り出した。

その様子を見ていた隊員たちはサザンカ(あげは)を手伝い、皆で廊下の真ん中にセッティングをしたのだった。


「ふぅ~……皆さん、ありがとうございます!!」


「嬢ちゃん……一人で料理するのか? 俺たちも手伝うが……」


「いえ! 大丈夫ですよ!

あ、でも、料理は大丈夫なのですが、鍋に入れる水と、薪をお願いできますか?」


「わかった! おい、行こうぜ!」


「あぁ!」


 手伝いを申し出た隊員と、声を掛けられた隊員たちは、薪や水を取りにその場を去っていき、残りの者は鍋の準備に取り掛かった。

サザンカ(あげは)が造ったレンガの土台に、薪を積み上げてその上に鍋を置いたのだ。


 サザンカ(あげは)はというとエプロンを付けて、調理場に次々とアイテムボックスから食材を取り出し包丁を使って刻んでいき、料理の下ごしらえをしていった。


 数分後、薪、水、食材がそろったところでサザンカ(あげは)は鍋に具材を入れた。


「火は自分に任せてください!」


「お願いします!

……よし! あとは煮込むだけ~。

それから~~……」


 火がついた鍋を満足そうに見たサザンカ(あげは)は、再び調理場に戻って主食の準備をした。


 再びアイテムボックスからパンやチーズ、野菜などの食材を取り出し、作っていったのはサンドイッチだ。


 もくもくと料理を始めて数十分。

鍋からいい香りが漂い、サザンカ(あげは)が鍋を確認してゆっくりかき回すと、ほどよく煮込まれた料理が仕上がっていた。

サザンカ(あげは)が作ったのは、クリームシチューだ。

その出来上がりに周りからは歓声が上がり、再びクルトのお腹の音が響き渡った。


 そうして出来上がったお料理を皆で食べる事になり、隊員たちは手分けして牢の鍵開けを行っていった。

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