スキル消失のために
ロガーの案内で取調室から地下の牢屋に移動したサザンカ。
サザンカが牢屋に入りたがっていた理由は、人目につかずにロガーのスキル問題を解決するためだった。
考えた通りに牢屋の中で一人になったサザンカは、入り口の反対側にある壁の鉄格子から見える外をぼんやりと眺めていた。
「(……この牢屋……エネルギーは使えるんだよね……。
……当たり前だけど、今は周りを見ても私一人だし……いろいろ試してみよう!)」
そう言ったサザンカは、エネルギーを使ってアイテムボックスを出現させたり、そのアイテムボックスから鏡を取り出して下界の様子を見て見たり、創造を使ってみたり、どこまでの事が出来るのか確認した。
その結果、ロガーの言う通り、エネルギーやスキルは使えるが、魔法を使う事が出来なかった。
「(う~ん……ロガーさんに付与されたスキル……取り消す事が出来たらいいんだけど……。
上書きは出来るのに、消すことは出来ないんだよね……。
スキル生成と付与は出来るのに……はぁ……。
……牢屋も殺風景だし……。
あ! そうだ! エネルギーが使えるなら!!)」
サザンカはロガーの事を考えながら牢屋を見渡したのち、創造を使って家具を造り始めた。
「ベッドはふっかふかに造り直して~……食事用に小さめのテーブルが必要で~……備え付けのおトイレは、見えないように個室に造り直して~……全体的に可愛く白とピンク系でまとめよう!
……よし、出来た! うん、いい感じ!
もともと洞窟に住んでたから、すごい既視感! 安心する! 第二の我が家!!」
創造による家具造りを始めて数分後、必要最低限の家具をそろえたサザンカは創造に満足が行ったのか、造り直したベッドに大の字に寝転んだ。
「(……ふっかふか……。
これで当分、安心安全素敵な住まい……かな。
はっ、ロガーさんの事考えなきゃ!
……う~ん……スキルを造れて付与できるのに、消すことが出来ないのはよくない……。
消すことが出来て初めて一人前になるのでは?!
そうと決まれば、修行しよう!!)」
一人で自問自答をしたサザンカは、ベッドから起き上がり、そのままベッドの上に座った。
そして、アイテムボックスから残っていたパンを取り出し、スキルを付与して、さらにそのスキルを消せるように修行を始めたのだった。
「(パンに『硬化』のスキル付与!
効果は、カッチカチになる! そのまんま!
あとは……消すだけ……)」
サザンカが硬くなったパンを見つめる事数分、あることに気づいた。
「(……そういえば……私、どうやってスキルを造ってるの?
創造……はそうなんだけど、エネルギーを使ってスキルを創造してるから……)」
サザンカがスキルの取り消しにたどり着いた方法とは、エネルギーを使って造るスキルに、同等かそれ以上のエネルギーを当てたら消滅という形で消せるのではないかと考えた。
「(そうなると、感知とかのスキルが必要?
ううん……自分で使ってるエネルギーなんだ……それくらい、自分で……感覚でも何でもいいから、そのスキルエネルギーの量と同等かそれ以上のエネルギーを純粋に当ててスキルを取り消そう……)」
サザンカは自身の手を見つめ、今までどのようにしてスキルを造っていたか改めて考えた。
そうして無意識だったものを意識的なものに感じ取り、手にしているパンのスキル付与に、どれだけのエネルギーを使ったか感覚を呼び覚ました。
「(なんとなく……わかった……。
これが……エネルギーのコントロールに繋がるのかな……。
それなら、ヴォルフさんのリストバンドのおかげだね。)
……この感覚なら、これくらいのエネルギー量かな……」
そう言ったサザンカは、右手にエネルギーを溜めるイメージをしたのち、パンにその右手を当てた。
エネルギーは目に見えないため、パンが光る事もなく、一見何事もなかったかのように思えたが、手に持つパンは硬さがなくなり、さらに、サザンカが自身の『スキル判別』でパンを確認すると、付与したはずの『硬化』がなくなっていた。
目に見えなかっただけで、確実に物体の中ではエネルギーによるスキル消滅が起きたのだった。
「や……やったーー!!! 成功したーーー!!!
……って……ここ、牢屋の中だった……静かにしなきゃ……」
サザンカはあまりの喜びに万歳をしたのだったが、すぐに状況を思い出し、上げた手を静かに降ろした。
「(あとはこれをスキル付与みたいにスムーズに出来るようにしないとだし、ロガーさんのスキルもなんとかしなきゃ)」
考えがまとまった所で、サザンカはさっそくアイテムボックスに仕舞った鏡を取り出し、ロガーの姿を映し出した。
鏡に映ったロガーは、机に向かって大量の書類を前にため息をついていた。
そんなロガーに、スキル判別を発動させながら、エネルギーを溜めた右手をかざし、先ほどの要領で純粋なエネルギーをロガーに与えたサザンカ。
「(……ロガーさんの『魔法・スキル無効化』を消失……)」
鏡を通ってエネルギーがロガーの中へと入っていき、彼自身に変化はないように思えたが、サザンカの『スキル判別』には魔法・スキル無効化の文字はなかった。
「(……よかった……。
これでまた魔法もスキルも使えるようになるね!)」
ロガーのスキル消滅に成功した事で満足げに微笑んだサザンカは、鏡を再びアイテムボックスに仕舞った。
と、その時、巡回していた警備隊に呼び出された。
「おい、嬢ちゃん! なんだ、この部屋は!」
「あ、隊員さん、お疲れ様です!」
「あぁ、お疲れ様です!
……じゃなくて!
この家具たちはどこから持ってきたんだ?!」
「あ~……えっと~……企業秘密です!」
「……アイテムボックス持ちなんだな……。
にしても……嬢ちゃん一人でこの大きさをセッティングしたのか?」
「乙女の秘密です!」
「……そうか……」
サザンカと警備隊員が鉄格子越しに話していると、地下牢の入り口で聞いたあの不気味な音が地下牢中に響き渡ったのだった。
***
一方その頃、サザンカが去った後の街の外では、討伐した魔物を前に、オミ達が残った冒険者と話し合いをしており、その場に騒ぎを聞きつけたギルドマスターのライナーが駆け付け、話し合いを進めていたのだった。




