神聖のほう~
オミ達、狼の皆が独自の戦いを終えた中、サザンカはいまだに新しい武器を手に、魔物を相手にしていた。
何体もの魔物がサザンカに襲い来る中、以前、回避の修行をした時の動きを実践した。
「これくらいの数なら、あの方法で!」
サザンカは複数体いる魔物の間を縫うように、扇子を軽く振りかざしながらかわした。
その回避の様子はまるで舞を舞っているかのような素振りだ。
「やった! うまくいった!
そんでもって、風魔法……胡蝶蘭!!」
回避したのちに、敵との間合いを取ったサザンカは、扇子を軽く振り、風魔法を繰り出した。
その攻撃は掛け声が具現化し、花の胡蝶蘭を成した風がいくつも作られ、敵に命中した。
「よし! 魔法成功! だいぶボロボロだけど、威力弱いのかな?
完全に倒れてないや……なら……」
威力の高い攻撃が命中してはいるが、まだ立ち上がる魔物を見たサザンカは、扇子を持つ手を大きく振り上げ、掛け声とともに振り下ろした。
「双竜双蛇!!!」
先ほどよりも威力の高い技が繰り出され、辺りにいた冒険者以外の魔物が皆、またしてもサザンカの放った風魔法にのまれてしまった。
攻撃が収まると、風にのまれた魔物が次々と地面に落下していった。
その魔物たちは、誰がどう見ても仕留められているとわかるくらいのありさまだ。
先ほどの一発目の大技を見ていた冒険者の皆は、目を丸くして事の成り行きを見ていたが、今回もまた同じように、その場で目を丸くして立ちすくんでいた。
「これで討伐完了だね!」
討伐した魔物を前に、満足そうに汗をぬぐっているサザンカのもとに、すでに戦いを終えていたオミ達が合流した。
『あげは様、お疲れ様でございました。
お怪我はないですか?』
「うん! 大丈夫だよ、オウカ!
オウカ達はケガはない?」
『大丈夫ですわ! 皆もケガはないですよ!』
「よかった!」
『ところで、あの回避はどこで身に着けたんだ?』
オミが風魔法で、サザンカの仕留めた魔物を自分たちが運んだ他の魔物と同じところに運び込みながら、思ってた疑問を投げかけた。
「見てたの?
あの回避の方法は、鏡で勉強していた時に地球で見た、神楽って言う踊りを一部真似てみたの!
うまくいってよかった!」
『扇子と相まってキレイな動きでしたよ』
『……うん、蝶々みたいだった……』
「ありがとう、レイさん、ヒスイ!」
サザンカ達が和やかに話していると、目を丸くしていた冒険者の皆が次々と声を発した。
「はっ……。
いやいやいや、嬢ちゃん、一体、何者だ?!
一人であんなに仕留めるなんて!」
「そうだ!
それに、最初のでっかい竜巻も異様だ!
あの竜巻のおかげとも言えるが、オーラが消えたんだ!
一体、どんな仕掛けだ!」
「仕掛けも何も……スキルを付与する女神様のおかげ……としか……。
オーラを浄化させるスキルを持っているんです。
世界各地で持ってる人を探せばいると思いますよ!」
「そんな事が信じられるか!
今までそんなすごい奴がいなかったんだぞ! なんでいまさら!」
『おい、お前ら……』
「いいよ、オミ……」
冒険者がまくし立てる中、オミが制止しようとサザンカの前に出てかばおうとしたが、それはサザンカの伸ばした腕によって止められた。
まだなお、まくし立てる冒険者の皆に耳を傾けるサザンカ。
「それに、あんなにすごい魔法……お前……ただ者じゃないな……」
「あんなの……普通の冒険者や魔導士に出せる技じゃねぇ……」
「あーーー!!
嬢ちゃん、どこかで見た顔だと思ったら、何日か前に大量のファークバイソンをギルドに持ってきた嬢ちゃんじゃねーか!!」
一人の冒険者の言葉に、辺りは騒然とし始め、再びサザンカに視線が集まった。
「てことは……ファークバイソンがいなくってこの騒動……嬢ちゃんの仕業か?
俺たちをエサに魔物をおびき出し、自分一人で仕留めて金儲けしようとする算段だろ!」
「そうだ! そうに違いない! じゃなけりゃ、タネもなしにあんなに強いはずがない!!」
「ちょっ、それはさすがに違いますよ!
たしかにファークバイソン?……は倒しましたが、今回の魔物騒動は初耳です!
それに、他の方の強さがどうかわかりませんが、あの攻撃はヴォルフさんの所の武器のおかげです!
ほら、この通り!!」
サザンカは黙って聞いていたが、冒険者のありもしない言いがかりに少し感情がこみ上げ、皆によく見えるように扇子を差し出した。
「ヴォルフって……誰だ?」
「さぁ……?」
「あ……あの今にもつぶれそうな武器屋じゃねぇのか?
あのウサギ耳のおっさんの……」
「あ~……なるほどな……」
「いや、なら、なおさら信じられん」
サザンカの突き出した扇子をまじまじと見た冒険者の皆だが、以前のヴォルフの武器屋の外見を知っているためか、いまだに信じようとしなかった。
あげくには、大勢の冒険者の中から大男が一人出てきて、サザンカを持ち上げると、そのまま荷物を運ぶかのように肩に担ぎ、街の方へと歩き出したのだった。
「え、ちょ、なんで?! まって、まって、まって~~~。
どこ連れてくの~~~」
「魔女だ……悪の魔女に違いない……」
「取り急ぎ聴取を! 街の危険人物にもなりかねん!」
「そんな~~~!!! 魔女じゃないです~~~!
もっと神聖の方~~~」
『あげは様に何をなさるのですか! その汚らわしい手を放しなさい!!』
突然の出来事に今まで事の成り行きを見守っていたオウカ達だが、サザンカが連れ去られそうになっているのを目前に黙っていられず、武器に手をかけた。
それを見たサザンカは、冒険者達の手によって再びオウカ達が悲惨な事になるのではと、そんな考えが頭をよぎった。
彼女たちは強い。
だが、数には劣るため、いくら強くてもこの先、生きて会えるかわからないと判断したサザンカは、その場の皆に聞こえるように言葉を発した。
「その子達は違うの!!
……連れていくなら、私だけにして」
サザンカはオウカ達をまっすぐに見つめ、小さく頷いた。
その頷きにオウカ達は、拳に力を入れてただジッとそこに立っている事しか出来なかった。
そしてその頷きが合図かのように、再び抱えられたまま街へと歩きだされ、オミ達や他の冒険者の皆は、去っていくサザンカ達を眺めていたのだった。




