魔物を倒すには
ルーベルの街の外の南側に突如現れた魔物たち。
その魔物たちの事を、オウカやオミたちから聞いたサザンカは、今まで下界で戦った魔物との明らかな違いに、顔から血の気が引いた。
「そんな……。
な、なんとか、倒す方法とか、心を失くした人たちを助けるには、どうすればいいの?」
『あげは様、落ち着いてください。
倒す方法も、心を失くした人を助ける方法もあるにはあります』
顔が真っ青になりながらうろたえるサザンカに、レイが落ち着くように促し、魔物の事を説明した。
オーラをまとっている魔物は、通常の魔物と同じ攻撃力、弱点も同じ。
だが、攻撃を深く受けると、先の説明にあったように心を失くし、個人差はあるが、数時間後には肉体が灰となってその場で消えるのだそう。
ただ、襲われて心を失くした直後に、その襲った魔物を仕留める事が出来れば、心が戻るのだそうだ。
さらにレイは、倒し方の説明も続けた。
倒し方は、弱点も同じなので、そこを狙えばいいのだが、通常の魔物と少しだけ違うのが、回復力が以上なほど高い事。
攻撃したそばから回復していくため、なかなか仕留められないそうだ。
「それじゃぁ、今までどうしていたの?」
『……何度か攻撃を繰り返していたら、向こうが引いてくれる……』
『ヒスイの言う通り、仕留めるというよりは、退却させる……という方が表現的には会う気がします』
「それは……根本的な解決になっていないような……。
あ……あれ……どうして人を襲った魔物を倒すと、失くした人の心が戻るって知ることが出来たの?」
『勇者のスキルを持った方が、たまたま魔物を倒したときに、その魔物から光の玉が出たのです。
それが心を失くした人の体に吸い込まれていって助かった……という事が言い伝わっているのです』
「そっか……。
でも……この魔物の数と、冒険者の数じゃ、被害が増えそうだけど……。
退却じゃなくて、仕留める方法は何かないのかな?
このままじゃ、ここにいる冒険者だけじゃ済まないと思う……。
ルーベルの街も危険におかされるのはイヤだよ……」
『……スキルを使って、倒し方を調べてみます』
レイの説明を聞き、何か方法はないのかと、肩を落とすサザンカ。
そんなサザンカを見たレイは、顔を引き締め、迫りくる魔物たちに視線を移し、スキルを発動させた。
『何かわかりそうか?』
『あげは様の言う通り、根本的に解決できる方法がわかればいいのですが……』
『……オーラを解析・鑑定……で、知り得た事……浄化で取り払われる……とあります』
「浄化すれば、普通の魔物みたいになるんだね……。
それなら!」
サザンカはそういうや否や、自分の腰に仕舞っている扇子を取り出し、スキル付与を施した。
「スキル『ヒールライト』を扇子に付与!
効果は、魔物をまとうオーラを浄化させるもとします!
さらに、扇子で繰り出す風が常時ヒールライトをまとっているものとして、その風を受けた者は、ヒールライトの効果でオーラから身を守れるものとします!」
『……これでまともに戦える……』
『ヒールライトを受けた者はあの黒いオーラから身を守れる……結界……という事ですね!
さすがあげは様です!』
『それ……レイにも付与はどうだ?
水魔法系で広範囲にそのスキルを使えるだろ。
この間の癒しの雨みたいに』
『……たしかに……効率はいいかもしれません……。
あげは様、お願いできますか?』
「……初めてオミから提案されて付与をお願いされた……」
『……今まで無理やり付与していたからな……。
でも、ヒスイの時は自分から欲しいって言ってただろ』
「……うん、そうなんだけど……オミからのは初めてだから、なんか……感動……。
そうだ! それなら皆にも……」
『あ、俺はいらねぇから先に行ってるな』
『……僕もいい……』
『わたくしは……戦い方的に相性がよくないスキルですので……』
サザンカが魔物を討伐しやすいようにと、オミ達に『ヒールライト』を付与しようと手を伸ばすと、オミたち三匹は言葉を残し、そそくさと他の冒険者たちのもとへと行ったのだった。
『……逃げましたね……。
さ、あげは様、気を取り直して付与をお願いします』
「うん!」
去っていったオミ達の背中を呆れた表情で見たレイは、視線をサザンカに移し、スキル付与を促した。
レイの言葉に勢い良く頷いたサザンカは、レイ自身にスキル『ヒールライト』を付与した。
「効果は一緒だよ!
ちょっと違うのは、レイさん自身に付与したから、魔導士の杖を使っても使わなくても『ヒールライト』が使えるようになっているよ。
私は自然系の魔法が使えないから、武器の扇子に付与したけど……。
それでも、基本は人々に付与しようと思っているの」
『そうですか。
それでは、私は先に行ってオミたちを手伝います。
冒険者の皆と魔物が一触即発状態ですので』
「うん! 私はスキル付与してから行くね!」
レイはサザンカと話し終えたのち、オミ達の向かった方へと駆け足しで去っていった。
サザンカは、レイの背中を見送ると、周りに誰もいないことを確認し、空に向かって手を伸ばし、『ヒールライト』を作成した。
「……作ったスキルを、下界の人にランダムで付与されるように少し多めに作って……。
あー……でも、出来れば冒険者の人とか、聖職者の人の所に行って欲しいなー……なんて……。
とりあえず、小さい光の玉となって、世界各地へ……」
サザンカが手を伸ばす先に光が集まり、その光が大きくなったのを確認したサザンカは、その光を小さい光として下界中に行き届くように飛散させた。
「これでオーラを浄化させて魔物を討伐しやすくなるといいんだけど……」
サザンカはスキルの光が散った空を眺めながらポツリと言葉をこぼし、魔物討伐へと駆け足で向かって行ったのだった。




