新しい武器とともに
大工職人のハインツの後に続き、皆が表の売り場に戻ると、サザンカ達が入ってきた時とは比べようがないほどの店構えになっていた。
ヒビがあり、灰色だった壁は、ヒビがない白い壁になっており、いくつもの武器を立てかけられるようにフックが備え付けられていた。
さらには戸棚も増え、壊れかけていた武器を飾るショーケースも見違えるほど立派なものになっていた。
照明やレジカウンターに至っては、キレイに磨かれているため、新品同様のようだ。
「これが……俺の店?」
「すごい! ちゃんと武器屋に見えます!」
「俺たちの手にかかればこんなもんだ!
外の壁も立派にしてあるぞ!
それより……ヴォルフの旦那、ちと相談なんだが……」
「なんだ?」
「ここー……武器屋なのは承知だが、俺たちの大工道具の点検をお願いしたいんだ……」
大工職人のハインツの話によると、作業中に品物を見ていたら、質の良いものばかりが揃っていたため、今後の大工道具をヴォルフに頼みたいという事だった。
「金物屋とか、他の店もありはするが……。
買っていざ使おうとすると、刃こぼれがあったり、道具の仕上がりがいま一つだったりする……。
だが、この店の物はそんな事はなさそうだからよ……。
引き受けてくれねぇか……」
「……こんな俺の店でよければ……。
こちらこそ、よろしく頼む……」
ハインツの言葉に、こみ上げる涙を拭いながら手を差し出すヴォルフ。
そのヴォルフの手を握り、ニカっと歯を見せ、満面の笑みを見せたハインツ。
二人のやり取りを見ていたハインツの大工仲間や、サザンカ達皆が笑顔になり、拍手が沸き起った。
「大口の契約……って所だね!
ハインツさん、ヴォルフさん、今後の話もあると思うので、私たちはこれで失礼しますね!」
「嬢ちゃん……本当にありがとうな……。
この恩は一生忘れねぇ……」
「俺も、何か大工に関係するもので困ったことがあるなら、いつでも言いな!
嬢ちゃんからの依頼なら、今後はタダで受ける!」
「お二人とも、ありがとうございます!
でも、また次も「お釣りは要りませんので!」をさせてください!」
サザンカの意気込みにその場の皆が目を丸くしつつも、のちに笑いに包まれた。
その後、サザンカ達はその場で別れの挨拶を軽くかわし、店の外に出たのだった。
「ヴォルフさんのお店も無事に武器屋として再開できそうだし、皆の武器も良い感じに改造してもらったし、私にも使える武器が手に入ったし、万事解決!」
『……新しい武器使うの楽しみ……』
「よーし、新しい武器で無双するぞーーー!!!」
『女神様が無双したらダメですよ。
ただでさえ、強い力をお持ちなのですから……』
『レイの言う通りだぞ。
そもそも、あげはの場合、無双というより、蹂躙だろ……。
世界を壊す気か……』
「えー……無双が出来なくて、蹂躙になるならー……世直し行路ね!!
頭が高い! 控えおろーー!! この紅の扇子が目に入らぬかーー!!
……みたいな?」
サザンカは帯にさしていた扇子を持ち、誰もいない所に突き出した。
それを見たオミは飽きれた表情をしており、ヒスイ達は目を丸くしていた。
『……なんだそれ……』
「とある有名な将軍様!」
『お前は女神様だろ……』
『……はぁ……漫才をしてないで、先を行きますよ』
目を丸くしていたレイが冷静になり、足を動かしたことによって、皆も歩き出した。
「オミさん、レイさん、ゆきますぞ!
美女さんにうっかりさんもちゃんと付いてくるのじゃぞ!」
そう言ったサザンカは、駆け足になり、先に歩き出した皆よりも少しだけ前に出て歩いたのだった。
『オミさん、レイさんって……どんなノリだよ……』
『……僕がうっかりさん……』
『ま、まぁ、あげは様の事だから深い意味はないわよ、きっと』
『適当に配役を当てたのでしょう……』
「そうだ! この後どうする?」
オミ達の会話をよそに、先に歩いていたサザンカは急に振り返り、今後の予定の事をオミ達にたずねた。
『……僕、新しい武器試してみたい……』
『だなー。
ギルドに行って何か依頼を受けねぇか?』
「さんせーい! それじゃ、ギルドにレッツゴー!!」
サザンカ達の意見がまとまり、ギルドに足を向けていると、街の中が少し慌ただしくなってきた。
街の人が血相を変えながら走り回っていたり、冒険者の格好をした人たちが何かを意気込みながら街の外に向かって行ったりしているのだ。
何事だろうと、オウカが走り回る街の人を掴まえ、事情を聞くと、街の外に魔物の大群が現れ、この街に向かっているとの事だ。
『場所は南の方角だそうです』
『……それって僕たちがこの街に来た方角?』
『……ファークバイソンがいなくなって生態系に乱れが出たのでしょうか……』
「それって、私のせい? とりあえず行ってみよう!」
サザンカの言葉に皆が頷き、急ぎ足で街の南側に向かった。
一行が街の南側の門に差し掛かると、いつもは身分確認のために配置されている門番の姿はなく、一行は疑問に思いながらもそのまま門を抜け、街の外に出た。
しばらく街の外を走っていると、多くの人だかりが見え始めた。
その人だかりの先には、街の人の情報通り、数十体の魔物の姿が確認できた。
だが、その魔物たちの様子が、これまでの下界の旅でサザンカ達が倒した魔物とは少し異なっていた。
サザンカ達が倒したファークバイソンなどの魔物の姿もあるが、その魔物たちの体は黒いオーラに包まれており、以前初めて下界に現れた魔物たちのような姿だ。
「すごい数……」
『あのオーラをまとった魔物はやべぇ……』
『この世界の魔物は二種類いるんです……。
今までわたくし達が戦った魔物は、人を襲いますが、それは彼らにとっては遊びのような感覚で、わたくし達は彼らのおもちゃ……みたいな扱いなのです。
そのような扱いをされると、力ない生き物は死に至ります。
なので討伐対象なのですが……』
『……だけど、あのオーラをまとった魔物は違う……』
「違うって……どう違うの?」
オウカやヒスイの言葉に、息をのむサザンカ。
そこへ、今度はレイが説明をした。
『……あのオーラをまとった魔物に襲われると、人は心を失くします……』
「……心を……失くす?」
『心を失くしたやつは感情が一切無くなって、何をしても無反応……その数時間後には……』
「……どうなるの?」
『……肉体が灰になってその場で消えちまう』
オミの言葉に顔から血の気が引き、愕然とするサザンカだった。




