お店を助けた理由
スキルと経験を駆使し、鮮やかな手つきで武器の改造に勤しむヴォルフ。
それは紛れもない職人技と言えるだろう。
そうして皆が作業を見守る事数十分。
作業をしていたヴォルフの手が止まり、改造が終わった武器を各々手渡された。
『スッゲーー!!
握り手にはめ込んでいるのに、全然邪魔になってねぇ!
むしろ、握ったときのすべり止めになってる!』
『……僕のもオミと同じ感じ……さらに握りやすくなった……。
良い感じ……』
『私の杖は、杖先の水色の石はそのままでいて、杖の先端部分に貴金属と一緒にはめ込んであります。
装飾……と言ったところですね。
前のより華やかで、それでいて気品があっていいですね』
『わたくしのナックル……両手用に二つあります……。
それに、見た目が随分と変わりました……朱色の革の手袋ですね。
指先が空いており、手の甲の部分に貴金属とともに花の形に石が縫い付けられていますわ……キレイ……』
「皆、素敵な武器に改造してもらってよかったね!」
ヴォルフから武器を受け取り、皆が気に入った様子で武器に見入っているのをサザンカもヴォルフも満足げに微笑んでいた。
「気に入ってもらえてよかった。
基本は、武器を持つ手にエネルギーを込めるだけで魔法が発動する。
あとは細かい説明だな。
まずは銀髪の兄ちゃんの武器から―」
そう言ったヴォルフはオミを始めとし、一人一人武器の説明をした。
オミの武器は、ロングソード。
その剣に炎の魔法石とただの魔法石をはめ込んであるため、剣に炎をまとわせて戦う事や、剣先から炎を放つことが出来る。
また、剣にエネルギーをまとわせて、波動として放つ事もできるとのことだ。
『それじゃ、剣を振るいながら炎系の攻撃が出来て、自分のスキルで他の属性の攻撃も出来るって事だな。
これで戦い方に幅が出るな』
ヒスイの武器は双剣。
双剣には風魔法の石と、こちらもただの魔法石をはめ込んであるため、剣に風をまとわせて戦う事や、剣を振り下ろすと風魔法を放つ事が出来る。
ヒスイの剣もまた、波動の攻撃ができるそうだ。
『……これ……軽く振り下ろして攻撃が出来るなら、隠密に向いているかも……』
レイの武器は魔導士の杖。
杖の先端に水色の魔法石がもともとついていたが、それは水魔法用の魔法石だ。
今回取り付けたのは、氷魔法の藍色の魔法石だ。
水魔法、氷魔法ともに放つ事が出来、持ち主の想像に沿って任意の場所に魔法が放てるとの事。
『想像……ですか……。
例えば、氷の柱をイメージすれば、その通りに魔法が発動し、また、場所も指定できる……という事ですね』
オウカの武器はナックルから革の手袋に変更。
本人は片手のナックルを選んだのだが、ヴォルフの計らいで両手分用意されたのだ。
その革の手袋には土魔法の石とただの魔法石がついており、こちらも任意の場所に土魔法が放てるとの事。
『さっきのナックルより手にフィットしますし、なにより、拳で戦うわたくしにピッタリです!
革の色も石のデザインもとても気に入りました!』
そして最後、サザンカの武器、扇子だ。
その扇子は、親骨とも呼ばれる扇子の骨組みに風魔法の石が小さいながらも数個はめ込まれ、軽くあおげるくらい小柄ながらも、想像次第では任意の場所に強力な風魔法が放てるとの事だ。
「想像……」
「そう……例えば、自分が思う所に竜巻を想像して放てるという事も出来る」
『あげは様、想像が難しいという場合は、攻撃の時に想像するものを叫ぶと、具現化しやすいですよ。
例えば、以前、私が使った風魔法のウィンズバーストとか!』
「なるほど……言葉にするとわかりやすい表現ってあるから……。
わかった! ありがとう、オウカ!」
皆が武器の説明を聞き終え、各々武器を仕舞ったり、装備をした。
オミは左腰に剣を収め、ヒスイは両腰に双剣を収め、レイはそのまま手に持ち、オウカは両手に装着した。
サザンカはというと、閉じた扇子を帯の左側にさす形で収め、ヴォルフから受け取ったリストバンドを左手に装着したのだった。
皆が装備を整えている様子をヴォルフは静かに見ていた。
そしてうつむき、何かを考える素振りを見せた。
そんなヴォルフに、顔を覗き込みながら声を掛けたサザンカ。
「……ヴォルフさん……何か考え事ですか?」
「……なぁ……嬢ちゃん……。
嬢ちゃんが優しいのはわかったが、どうしてこの店のためにそんなに動いてくれるんだ?
それに、ハインツの旦那たちに支払ったって言う多額の金……。
普通はこんなにも尽くす奴なんかいない……嬢ちゃんが初めてだ……。
やっぱり……同情からか?
それなら……」
『あげは様がそんな感情で動くはずないですわ!』
『そうですよ!
きっと、あげは様なりのお考えが……』
『ま、あげはが考えてするとは思えない事ばかりだけどな』
「失礼な!
私だって考えるくらいするよ!
でも、ヴォルフさんの言う同情とは違うかな。
ただ……」
「ただ?」
「「お釣りは要りませんので!」って言うセリフを言ってたくさんのお金をバァン!って渡すのをやってみたかったんです!!
あとは、ヴォルフさんの背中が寂しそうだったので、お力になりたいな~って」
サザンカのお金を払った理由に、うつむいていた顔を上げ、唖然とするヴォルフ。
その傍らでオミはやっぱりとでも言いたげに呆れつつも笑みを見せ、オウカ達は頷きながら笑みを見せた。
「そんな……理由で……」
しばらく唖然としていたヴォルフだったが、次第に笑いがこみ上げ、豪快にお腹を押さえて笑った。
「そうか、同情じゃなくて……。
盛大に笑ったが……いや、ほんとありがとうな……。
武器で何か困ったら俺の所に来な。
いつでも武器の手入れや相談に乗る!
もちろん、永久無料でだ!」
「はい! よろしくお願いします!」
サザンカ達が話し込んでいると、表の改装が終わったと大工職人のハインツが裏に顔を出した。




